top of page
![山田には、言えない [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.webp)
![山田には、言えない [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.webp)
山田には、言えない [第1話/全4話]
【第1話】 ラウンジで、山田が動いた夜 シンガポールに来て3日目になる。 今回は山田を連れてきていた。入社6年目、28歳。 仕事は丁寧で、上を立てることを知っている。 ただ、女の前では少し力んでしまう。 それ以外は悪くない部下だ。 EV充電インフラのアジア展開で、シンガポールは東南アジアの拠点候補として動いている。 政府の補助金制度が整っていて、複数の政府系企業と日系企業を3日で回った。手応えはあった。 夜、仕事を終えてThe Fullertonのラウンジに座っていた。 シンガポール川に面した旧郵便局の建物を改装したホテルで、 白い石柱が並ぶファサードは英国植民地時代の威厳を保っている。 「The Courtyard」はそのアトリウム吹き抜けの中心にある。 薄暗い照明に、白いドレスコードが揃った客が並んでいた。 出張でここを選ぶのはビジネス層が多い。 ラウンジにいる人間の顔つきが、それを教えてくれる。 山田がシングルモルトを飲みながら話していた。 今日の商談のことを。 明日の予定のことを。 よく喋る夜だった。 俺はグラスを持って、聞いていた。..

GENPASS 編集 三好
5月22日


Aquarius Massage ジャカルタ
ジャカルタには、男の期待値をじわじわ肥大化させて、最後にそのまま現実へ叩き落としてくる店がある。 その名も、Aquarius Massage。 名前がいい。Aquarius。 なんか水っぽい。癒やしっぽい。清潔感すらある。 でもこういう店名に安心した男から順番に、 あとで自分の浅はかさと対面することになる。 俺はもう、その列のかなり前の方に並んでいた。 場所 Jl. Melawai 9 No.10, RT.3/RW.1, Melawai, Kec. Kby. Baru, Kota Jakarta Selatan, Daerah Khusus Ibukota Jakarta 12160 インドネシア 店に入ると、まずソファーに座らされる。 ここまでは普通。 むしろ落ち着いている。 スタッフが静かに写真を見せてくれる。 写真で選ぶシステムだ。 落ち着いて選べる。 そう思っていた最初の3秒は。 写真を見た。 全員、肌が白すぎる。 全員、目が大きすぎる。 全員、小顔すぎる。 全員、鼻が高すぎる。 全員、笑顔が完璧すぎる。 お―――い!!! 加工しすぎだろ

GENPASS 編集 八田
5月20日
![空港まで、三十分 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.webp)
![空港まで、三十分 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.webp)
空港まで、三十分 [最終話]
【第4話】 空港まで、三十分 朝、目が覚めたとき、リカはすでに起きていた。 キッチンでコーヒーを淹れていた。 「おはよう」と言って、俺にもカップを渡した。 バルコニーに出て、二人で飲んだ。 ドバイの朝は静かだ。 砂漠の空気が冷たく、街がまだ動き出していない。 高層ビルの窓に朝日が当たって、街が光っている。 夜とは全く違う顔だ。 こういう朝を、リカは2年間ここで迎えてきた。毎日一人で。 「昨日、楽しかった」とリカが言った。 「俺も。」 「・・・珍しいんです、こういう夜。」 何に対して珍しいのかは、聞かなかった。聞く必要がなかった。 「フライト、何時?」と彼女が聞いた。 「午前11時。」 「送ります」と彼女は言った。 「いい。タクシーで行く。」 「送ります」ともう一度言った。 断る言葉を探したが、出てこなかった。 リカが送ると言うとき、それは好意でも義務でもなく、自分でそう決めたということだ。 2年間、自分のことを自分で決めてきた女の言い方だ。 俺にはそれを断る理由がなかった。 リカの車は白いSUVだった。 ドバイでは日本より運転しやすいと彼女は言っ

GENPASS 編集 三好
5月18日
![空港まで、三十分 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.webp)
![空港まで、三十分 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.webp)
空港まで、三十分 [第3話]
【第3話】 52階と、彼女の部屋 Ce La ViはAddress Sky Viewの52階にある。 ドバイには高いところにバーがある、と知っていても、ここは別格だ。 エレベーターを降りた瞬間、ブルジュ・ハリファが正面にある。 夜に光る世界一の高さのビルが、目の前に立っている。 観光地という言い方は正確じゃない。 ここは、ドバイの夜を正面から受け取る場所だ。 カクテルを頼んだ。 ローズウォーターとサフランを使ったシグネチャーカクテル。AED88。 一口飲むと、花の香りが鼻を抜けて、後からほのかな苦みが来る。 中東の香辛料と西洋のカクテル技術が混ざった味は、ここでしか作れない。 ドバイという都市そのものが、この一杯に入っている気がした。 しばらく二人で、ブルジュ・ハリファを見ていた。 「きれいですね」とリカが言った。 「毎日見てる?」 「毎日じゃないけど、飽きない。」 「東京に戻りたいと思う?」 「・・・たまに。」 「どんなとき。」 「誰かと話したいのに、話せない日。」 そう言ってから、「なんか変なこと言いましたね」とリカが笑った。 笑い方がおかし

GENPASS 編集 三好
5月17日
![空港まで、三十分 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_8a8862692de04270a6b200fcf8a8868b~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_8a8862692de04270a6b200fcf8a8868b~mv2.webp)
![空港まで、三十分 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_8a8862692de04270a6b200fcf8a8868b~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_8a8862692de04270a6b200fcf8a8868b~mv2.webp)
空港まで、三十分 [第2話]
【第2話】 彼女のドバイを、もらった朝 Comptoir 102はジュメイラのビーチ通り沿いにある。 2012年から続くフレンチオーガニックカフェで、ドバイに長く根付いている部類に入る。 木製の家具と、古びた棚と、オーガニック食材が並んだ内装。 外に面したテラスから、朝の光が入る。 レセプションでもZumaでもない、ドバイの別の顔がここにある。 「ここに来ると、ドバイにいることを少し忘れられるんです」とリカは言った。 アサイーボウルを頼んだ。AED68。 フルーツとグラノーラが重なり、底のアサイーはなめらかで、甘みより先に酸みが来る。 グラノーラが崩れていく感触と、コーヒーの苦みが交互になる。 観光客が来る店ではなく、ドバイで暮らしている人間が週に一度寄る店だ。 古いレコードが壁に飾られていて、窓から朝の光が入ってくる。 砂漠の国にいながら、どこかフランスの田舎のカフェのような空気がある。 ジュメイラのビーチを知っている人間が来る場所だ、ということが、入った瞬間に分かる。 リカが「おはようございます」と言うと、店のスタッフが名前で返した。...

GENPASS 編集 三好
5月16日
![空港まで、三十分 [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_abe118d3c6b24518a334af3ea01db594~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_abe118d3c6b24518a334af3ea01db594~mv2.webp)
![空港まで、三十分 [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_abe118d3c6b24518a334af3ea01db594~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_abe118d3c6b24518a334af3ea01db594~mv2.webp)
空港まで、三十分 [第1話/全4話]
【第1話】 DIFCの夜、仕事の話から始まった ドバイに来て4日目になる。 UAEが国家レベルで進める電動交通インフラの整備 ——政府系投資機関と、複数の日系企業が絡む案件だ。 EV充電ネットワークの整備から公共交通の電動化まで、いくつかの商談が重なっていた。 砂漠の国がEVに舵を切る理由は単純だ。 石油に頼らない未来を、誰より早く準備しておく必要がある。 そういう国だから、話が動く速度も速い。 東京の会議室で同じ話をするより、ここで3日過ごした方が、ずっと早い。 夜はDIFC内のホテルで業界レセプションがあった。 UAE政府系ファンド主催で、日系と欧州系の企業が集まっていた。 スーツの男たちが英語と日本語を交ぜながら、グラスを持って立ち話をしている。 こういう場は得意ではないが、嫌いでもない。 顔を覚えるより、覚えられる方が重要だということを、出張を繰り返す中で学んだ。 彼女を見つけたのは、会場の端のテーブルだった。 165センチ。黒のドレス。細い。立ち方に力みがない。 周りと話しながら、でもどこか外を向いているような目をしていた。 輪の中にい

GENPASS 編集 三好
5月15日


鳥の足を食わされ、シーツにリップの跡が残った夜 バンコク
卒業旅行で、タイに来ている。 2人で来た。男2人で。特に深い理由はない。 「タイ行こうぜ」「行こう」、それだけだ。 3泊4日、王道のタイ旅行。 世界遺産、寺院、屋台飯。昼間は普通の観光客として生きていた俺たちが、 2日目の夜から完全に別の旅になる話をしよう。 バンコク、タラート・ロットファイ・ラチャーダのナイトマーケット。 MRTタイランド・カルチャル・センター駅の3番出口から徒歩2分。 夜中まで飲食店、雑貨屋がびっしり並んでいて、 マーケット隣のビルから見るテントのライトアップが絶景だ。 場所 Train Night Market Ratchada 腹が減っていた。まずタイ料理の屋台へ入った。 メニューはタイ語だった。読めない。 指差しで「これとこれ」と頼んだ。 鶏肉らしきもの、60バーツ。ビール1杯、50バーツ。 運ばれてきたのは、枝のような物体だった。 2人して皿を覗き込んだ。目を合わせた。 口に入れると、"ガリッ"と嫌な音がした。 うぅぇぇぇー!!!泣 吐き出したら、鳥の足の形をしていた。 「モミジ」という鳥の足を甘辛ダレで炒めたもの。.

GENPASS 匿名協力記者
5月13日


69 Massage & Spa バンコク
バンコクには、もう閉店してしまった店の名前が、 俺の脳内で永久保存される現象がある。 その1つが、俺にとっての「69Club」だった。 あれは良かった。 本当に良かった。 強制69最高! 細かいことはもう記憶が都合よく補正しているかもしれないが 少なくとも俺の中では、あの店はすでに“青春の一部”みたいな扱いになっている。 だから閉店したと聞いた時、少し寂しかった。 いや、かなり寂しかった。 男はこういう時、元カノのことは忘れても、昔ハマった店のことは忘れない。脳の保存先がおかしい。 そんなある日、見つけてしまった。 「69 Massage & Spa」 おいおいおいおい。 待て待て待て待て。 その数字、使うか普通。 場所 3/15 Sukhumvit 71 Rd, Phra Khanong Nuea, Watthana, Bangkok 10110 69。 この数字を見て平常心でいられるほど、俺の下心は大人じゃない。 もちろん分かっている。 同じ“69”が付いているからといって、同じ店なわけがない。 そんなことは常識で考えれば分かる。小学生でも分

GENPASS 編集 八田
5月12日
![沈む前に、飲もう [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [最終話]
【最終話】 その夜だけの話だ 翌朝、目が覚めたとき、サキはいなかった。 時刻は7時過ぎ。シーツに彼女の熱が残っていた。 バスルームに行ったかと思って確認したが、誰もいない。 バルコニーに出た。スミニャックの朝の空気が来た。 海の方から風が吹いている。隣に人の気配はなかった。 テーブルにメモがあった。 「先に出ます」とだけ書いてあった。 丸い字だった。一文だった。それ以上でも以下でもなかった。 LINEの交換はしていなかった。 昨夜もしなかったし、今朝も求めなかった。 俺もそれでいいと思っていた。 聞かなかった、ではなく、聞く必要がなかった。 この種の夜には、続きを前提にしない方が誠実な場合がある。 サキも、それを分かっていたと思う。 彼女が「先に出ます」と書いたのは、そういうことだ。 「さようなら」ではなく「先に」と書いた。 それは事実だけを書いた一文だ。 余計なことが何も書いていない文章は、書いた人間の知性を表す。 俺はそれが好きだった。 メモをしばらく手に持っていた。 それから折り畳んで、財布に入れた。 なぜそうしたのか分からない。 捨てても

GENPASS 編集 三好
5月11日
![沈む前に、飲もう [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [第3話]
【第3話】 岩の上で、夕陽を見た 翌日の午後5時に、ホテルのロビーで落ち合った。 The Rock Barは、ジンバランのAYANAリゾートの崖の下にある。 インド洋を14メートル見下ろす玄武岩の上に作られたバーだ。 リゾートから傾斜のついたインクラインリフトで降りる。 崖を滑り降りるように動く狭い箱の中に、二人で乗り込んだ。 サキの肩が俺の腕に触れた。 彼女は少し前のめりになって、外の景色を見ていた。 下に、海が見え始めた。 「すごい」と彼女は言った。声が小さかった。 驚くのが正しい景色というものがある。 俺も初めて来たとき、そう思った。 なるほど、岩の上だ、と。 席についた。カクテルを頼んだ。 マンゴーとパッションフルーツのトロピカルカクテル。Rp185,000。 南国の甘さが口の中でほどける。氷が多く、飲み口がいい。 夕陽が沈みかける時間帯、オレンジ色の光がインド洋の水面を染めていく。 空の色が刻々と変わる。 岩の上にいると、自分が地面の続きにいる気がしない。 海の上に浮かんでいるような感覚がある。 「なんでここ知ってたんですか」とサキは言

GENPASS 編集 三好
5月10日
![沈む前に、飲もう [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [第2話]
【第2話】 バリ料理と、素直な女 Made's Warungは、スミニャックの通りを少し入ったところにある。 1969年の創業だ。 60年近く続いているというのに、それを威張らない。 バリ彫刻の装飾と、開放的な造りと、変わらない料理で静かにやっている。 観光地にずっと立ち続けられる店が持つ空気は、何度来ても落ち着く。 外から見ると奥が深く、中に入るとそれよりさらに広い。 この店をバリで最初に訪れた外国人旅行者たちが、バリ料理を「知った」場所だ。 サキとは店の前で落ち合った。 「どこ行ってたんですか、今日。」俺が先に着いて待っていると、彼女は少し早足で来た。 「タナロット行ってきました。海の神殿。」 「観光客が多い時間じゃなかったか。」 「すごかったです。でもきれいだった。」少し笑った。「行ったことありますか。」 「ある」と俺は言った。「夕方が一番いい。」 「次来たときに。」 次来たとき、という言い方をした。 次があることを、自然に前提にしている。 この手の女は、計画より感覚で動く。バリを一度で終わらせる気がない。悪くない。 席についた。ナシチャン

GENPASS 編集 三好
5月9日
![沈む前に、飲もう [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [第1話/全4話]
【第1話】 スミニャックの朝、俺の隣に バリに来て3日目になる。 商談は昨日で終わった。 電動モビリティの事業化スキームを組むプロジェクトだ。 インドネシア政府が打ち出した再生可能エネルギー政策に乗る形で、 観光地への電動車両の導入とEV充電インフラの整備を束ねる ——そういう案件で、現地の政府系ファンドと3日間かけて協議していた。 バリが環境配慮型の観光地に転換しようとしていることは、数字に出始めている。 電動バイクの普及率、リゾートへの太陽光導入率、観光客一人当たりのCO2排出量の目標値。 こういう話をするのに、東京の会議室より現地の方がずっと速い。 バリに商社の出張拠点が増えているのは、理由がある。 残り2日は、報告書の整理と次の商談に向けた情報収集に使う予定だった。 朝、「ザ・レギャン」を出た。 スミニャックのビーチ沿いにある、白い外壁のブティックホテルだ。 プールを見下ろせるスイートに3泊している。 部屋で仕事もできるが、外の方が捗る。 ラップトップをバッグに入れて、ペティテンゲ通りを歩いた。 Sisterfieldsに入った。...

GENPASS 編集 三好
5月8日


東ヨーロッパのトビリシの夜は濃い授業だった
ジョージアに来たなら、夜も遊ばないと損だ。 ナイトマーケットもあるくらい夜の街の夏はにぎやかだ。 トビリシはノマドワーカーや外国人が多く、外から来る人間に慣れた街だ。 アジア人だからといって浮くわけでもなく、むしろ「どこから来たの?」と話しかけられる側になれる。 顔パスなのかと思うくらい、店の入りやすさもあったが俺はチキンだ。焼き鳥にされるのだろうか。 そんな話を出発前から聞いていた。 「ジョージアの美女は本物だ」とか「ノマドが集まる夜の街」とか。 正直、それだけでワクワクしている俺がいる。 30代を過ぎると、旅のモチベーションはちょっと「そっち方面」も混じってくるものだ。 それが何が悪いんだ? そんな「本番」を前に、俺は自分自身に火をつける儀式を済ませていた。 ジョージア名物、「シュクメルリ」の摂取だ。 鶏肉をこれでもかという量のニンニクで煮込んだ、まさに「食べる精力剤」。 本場のそれは殺意を感じるほどニンニクが濃いし、チキンが一本と丸ごとだった。 そして、 ひと口ごとに体内の「元気の蛇口」が全開になり、血流が一気に上がる。...

GENPASS 匿名協力記者
5月7日
![ファンじゃない男 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_be111c25099b466083dd838583206fbd~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_be111c25099b466083dd838583206fbd~mv2.webp)
![ファンじゃない男 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_be111c25099b466083dd838583206fbd~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_be111c25099b466083dd838583206fbd~mv2.webp)
ファンじゃない男 [最終話]
【最終話】 ファンじゃない男 翌朝、ナナは7時に起きた。 シャワーを借りて、手早く身支度をして出てきた。 「今日、最終日なんです」とナナは言った。 「何時のフライト」 「夕方5時」 「昼まで時間がある」 「観光したい場所が残ってて」と彼女は言った。 少し申し訳なさそうに。 「いいですよ。楽しんできてください」 ドアのところで、ナナが振り返った。 「……ありがとうございました」 「何が」 「全部。Mido Cafeも、Mott32も、Bar Leoneも、昨夜も」 「礼はいらないですよ」 「でも言いたかったので」とナナは言った。 「また香港に来たら連絡してください」 「来ますよ、絶対に」とナナは言った。「次は三好さんを案内できるくらいに詳しくなってきます」 「それは楽しみですね」 扉が閉まった。 それから3週間が経った。 東京の日常は変わらなかった。 取引先との打ち合わせ。 部下の山田からの報告。 月末の数字。 毎朝同じルートで出社して、同じビルのエレベーターに乗る。 香港のことは引き出しの中に入れておいた。 必要なときに取り出せる場所に、ただ置い

GENPASS 編集 三好
5月4日
![ファンじゃない男 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.webp)
![ファンじゃない男 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.webp)
ファンじゃない男 [第3話]
【第3話】Bar Leoneの後、香港の雨 Bar Leoneは、Arbuthnot Roadの路地の中にある。 看板は小さく、扉は重い。 知らなければ通り過ぎる。 入るとイタリアのバーを思わせる木のカウンターが目に入った。 照明は低く落とされて、客の声が丁度いい音量で混ざり合っている。 ここのバーテンダー、Andrea Piroloが作るネグローニは、ワールドベストバー50に選ばれた理由になる一杯だ。HK$128。 氷が一つ。グラスの中で橙色の液体がゆれている。 柑橘とビターの香りが鼻を抜けて、後味にジンの余韻が残る。 一口で、この店に来た意味が腹落ちする。 ナナはAperolベースのカクテルを頼んだ。 「バー、好きなんですか」とナナが聞いた。 「出張中は毎晩飲みます」 「一人で?」 「たいていは」 「それって寂しくないですか」 「今夜は一人じゃないですよ」と俺は言った。 ナナが俺を少し見た。返事はしなかった。 その代わりに、グラスに口をつけた。 カクテルをもう一杯頼んだ。 二杯目の途中から、会話が少し減った。 バーという場所の静けさの使い方を

GENPASS 編集 三好
5月3日
![ファンじゃない男 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.webp)
![ファンじゃない男 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.webp)
ファンじゃない男 [第2話]
【第2話】 Mott32、地下の紅い光の中で 仕事は予定通りに片付いた。 午後は香港島に戻ってホテルで資料整理と電話対応を2件。 夕方には全部終わった。 マンダリン オリエンタルに戻ってシャワーを浴びて、スーツを着た。 このホテルは1963年開業で、英国植民地時代の格式を今も引き継いでいる。 ロビーのスタッフの所作が、他のホテルと少し違う。 積み上げてきた時間がそのまま接客に出ている。 香港に来るたびに同じホテルを指定するのは、慣れた場所の方が余計なことに気を取られなくていいからだ。 一方、ナナが泊まっているのは重慶大廈近くの1泊3500円のゲストハウスだ。 同じ香港の夜にいながら、二人の宿は全然違う。 それは別に問題ではない。 ただ、今夜彼女をどこに連れていくか、という話で考えると、少し面白い構図がある。 重慶大廈は九龍の中でもとりわけ雑多な場所で、世界中のバックパッカーが集まる。 そこからMTRで20分、中環のMott32へ。この落差が今夜の香港を作る。 19時に、ナナは来た。 着替えていた。細身のネイビーのワンピース。 ヒールはない。でも背

GENPASS 編集 三好
5月2日
![ファンじゃない男 [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.webp)
![ファンじゃない男 [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.webp)
ファンじゃない男 [第1話/全4話]
【第1話】 Mido Cafe、テンプル・ストリートの端で 油麻地の打ち合わせが14時に終わった。 九龍側に仕事が入ることは珍しい。 今回は現地のサプライヤーが油麻地に事務所を構えていた。 一棟丸ごと古い雑居ビルで、エレベーターが2基しかなく、どちらも遅い。 打ち合わせ自体は問題なく進んで、2時間で片付いた。 外に出ると、テンプル・ストリートに人が出始めていた。 昼と夜のあいだの時間帯で、屋台はまだ準備中、ローカルの人間が歩道を行き来している。 この街の体温が、そのままアスファルトに滲み出ているような感覚がある。 香港島のビジネス街とは別の空気だ。 こちらの方が、どこか本物に近い気がするのは、年齢のせいかもしれない。 Mido Cafeに向かったのは、腹が空いていたのと、あそこの港式奶茶が飲みたかったからだ。 1950年創業の老舗茶餐廳で、テンプル・ストリートの端に何十年も変わらない顔で建っている。 タイル張りの内装、古い明朝体の看板、天井の古いファン。 時間が止まっているように見えて、その止まり方が心地よい。 香港映画のロケ地にもなった場所で、

GENPASS 編集 三好
5月1日


2人仲良くHong Kong Gentlemen’s Clubの熱い体験 メキシコ
今回は、思い切ってメキシコまでムラカミ君を連れて旅だった。 コヤツは、風俗経験が乏しい。ヌメヌメ輝く男にするため、オレが無理やり引っ張ってきてやった。 そうではなく、おマヌケ童貞君みたいな顔しているが、ヤツはお金持ち。ノせれば何かと役に立つ。 さすがに「オレの分の旅費出せ」と言ってすんなり頷くはずはないが、借金という形でヤツは承諾した。 アホだぜ、コイツ。オレが返すはずないじゃん。 今宵、Hong Kong Gentlemen‘s Club 今宵は、Hong Kong Gentlemen‘s Clubのドアをノックする。 Hong Kong Gentlemen‘s Clubは、メキシコティファナにある。 場所 メキシコ・ティファナといえば、やることは一つ、ザ・風俗と思っている人間は多い。 だから、うかつに、「オレはティファナに行ってきた」なんて自慢しない方がいいかもしれない。 おおかた、ティファナ=ゴーゴーバー=Hong Kong Gentlemen‘s Club=S〇Xとつながるようだ。 ヤツは、Hong Kong Gentlemen‘

GENPASS 匿名協力記者
4月30日


HOT TOC HOANG DUC 床屋置屋 ホーチミン
ホーチミンのNguyễn Phi Khanh通りを歩いていると、数件普通の床屋がある。 本当に普通の床屋だ。 看板が出ていて、ガラス越しに椅子が見えて、鏡があって、ハサミが置いてある。 近所のおじさんが入っていきそうな、どこからどう見ても普通の床屋だ。 でも扉を開けると、女の子が5〜6人いる。 床屋置屋というやつだ。 表は床屋。中身は全然別のもの。 でも偽造のためにハサミがある。鏡がある。整髪料がある。 でも女の子もいる。 ホーチミンには、こういう店がある。 場所 ちょうどY字路のあたり 入ってすぐ、女の子が数人自由な感じにいた。 その中でも1人だけ様子のおかしい子がいた。 謎の被り物をしていた。 頭に何かつけて、もう一人の女の子になにやらちょっかいを出しながら、ニコニコと遊んでいた。 他の子たちが俺を見ている中、その子だけ完全に自分の世界にいた。 で、もう1人の女の子に裏がされるようにして、ようやく俺の存在に気づいた。 目が合った。 「あっ」という顔をして、慌てて外した。 慌てて、ショーアップの列に並んだ。 照れていた。 全力で照れていた。 一

GENPASS 編集 八田
4月28日


レッドライト地区のガラス越しに目が合って、気づいたら15分で満足した話
オランダ・アムステルダム。 観光地として有名なこの街には、もう一つの顔がある。 夜になるとネオンが灯り、ガラス越しに女性たちが並ぶエリア。 いわゆるレッドライト地区。 実際に歩いてまず思う。 思っていたより、普通に観光地の中にある。 もっと特別な場所かと思っていたけど、観光客が普通に歩いているすぐ横にある。 人も多い。カップルもいるし、女の子同士のグループもいる。 この時点で、だいぶ想像と違う。 歩いていると、なんとなくルールが分かってくる。 目が合う。軽く手招きされる。スルーするか、止まるか。 しつこい客引きはほぼない。 ただ、視線と仕草だけで完結するこの感じ、逆にちょっと逃げ場がない。 気づいたらGoogleマップを開いていた。 目的地はない。ルートも出してない。 現在地もほぼ動いてない。ただ開いているだけ。 「自分はただ通り過ぎようとしている一般市民です」 という顔をするための、完全に無意味な儀式だ。 画面を見ながら横目で見る。 現在地は変わらない。目的地もない。 なのに、なんか自分だけ怪しい動きしている。 前から来たアジア人と目が合った。

GENPASS 匿名協力記者
4月23日
bottom of page
