Apple Spa ダナン ベトナム
- GENPASS 編集 八田

- 6月24日
- 読了時間: 5分

ベトナムはダナンにある韓国系スパ、Apple Spa。
最近できた店らしく、部屋数は少なめ。
6部屋ほどという話もある。
料金は30分1,500,000VND、60分2,000,000VND、90分2,500,000VNDあたり。
韓国式のアカスリ、オイル系のヌルっとしたマッサージ、若めのベトナム人セラピスト、そしてLINEなどで事前予約できる便利さ。
ここまで聞いた俺は思った。
なるほど。これは勝てる。
いつもの悪い癖だ。
場所
ダナンで「Apple Spa」と聞くと、なんだか爽やかである。
果物。清潔。健康。
朝のホテルビュッフェで出てくるカットフルーツ。
少なくとも、俺のような成人男性の煩悩が、
夜のダナンでニヤニヤしながら向かう名前ではない。
だが現実は違う。
名前が爽やかでも、向かっている人間が爽やかとは限らない。
リンゴの箱に、たまに変な芋虫が入っていることもある。
今回の芋虫は俺である。
Apple Spaは事前予約が大事らしい。
部屋数が6部屋しかなく少ないなら、なおさらだ。
LINEで予約しておけば、現地で無駄に待たなくていい。
ダナンの夜において、待たないというのはかなり大事だ。
なぜなら待っている時間が長いほど、人間は余計なことを考えるからである。
受付で日本語メニューからプランを選ぶと
上の階のマッサージ部屋に案内される。
メニューによると「口で仕上げ」られるらしい。
そして、ここは女の子を見て選ぶタイプではなく、基本は流れに身を任せるタイプ。
つまり、こちらにできることは少ない。
予約する。
時間通りに行く。
上の階へ案内される。
あとは祈る。
もはやスパではない。
ダナン式の神事である。
上へあがると、部屋はきれいだった。
清潔感がある。新しさもある。
韓国系らしく、なんとなく段取りもちゃんとしている。
俺は「なるほど、いいじゃないか」と余裕の顔をした。
問題はここからだ。
俺、案内された部屋で女の子を待つ。
女の子が来るまでの、あの数分。
これが妙に長い。
実際には数分なのだろう。
でも体感は、映画一本分ある。
いや、三部作の二作目くらいある。
どんな子が来るのだろう。
優しい子だろうか。
愛想はいいだろうか。
俺は変な客だと思われないだろうか。
そもそも、今どんな顔で待てばいいのだろうか。
余裕のある大人みたいに座るべきか。
旅慣れた男の顔でスマホを見るべきか。
それとも変にカッコつけず、自然体でいるべきか。
だが自然体とは何だ。
ダナンの韓国系スパの個室で、まだ見ぬ女の子を待っている成人男性の自然体なんて、この世に存在するのか。
むむぅ…。
俺は座り直した。
背筋を伸ばす。
いや、伸ばしすぎると面接みたいだ。
少し崩す。
いや、崩しすぎると慣れてる感じが出る。
スマホを見る。
でも見すぎると興味ないフリをしている中学生みたいだ。
何をしているんだ俺は!
まだ女の子は来ていない。
なのに俺だけが、すでに一次審査を受けている。
ドアが開いた。
若めのベトナム人の女の子が入ってくる。
にこっと笑う。
その瞬間、俺の中の見栄が全部、正座した。
そしてサービスが始まる。
ここからがすごかった。
おもてなしの教育がちゃんとしている。
流れが丁寧。
シャワーも、アカスリも、オイルも、無駄がない。
こっちが「おお、そう来るのね」と理解する前に、体の方が勝手に納得している。
俺はこの時、ようやく理解した。
ここはApple Spa。
つまり俺は客ではない。
リンゴである。
まずシャワーで水洗いされる。
韓国式アカスリで表面を整えられる。
オイルで艶を出される。
女の子の手によって、だんだん人間というより、
店頭に並ぶ前の果物みたいになっていく。
やっぱりリンゴ。
なんだこれは。
人間として来たはずなのに、工程表だけ見たら完全に青果である。
しかも困ったことに、悪くない。
いや、かなりいい。
サービスの最後のメニューにあった「口で仕上げ」
そのままパクリとしてきてリンゴの毒を口で抜ききってフィニッシュ。
はい!
きれいなリンゴの出来上がり!
って、おいっ!!
終わるころには俺の中にあった余計な見栄、緊張、
旅先でカッコつけたい薄っぺらい自意識が、かなりきれいに抜けていた。
あれは雑味抜きだった。
ダナンまで来て、俺という成人男性のエグみが取られている。
リンゴでいうなら、もうかなり店頭に出せる状態である。
問題は、そのリンゴの中身が相変わらずしょうもない男だということくらいだ。
Apple Spa。
名前だけ聞けば、爽やかな果物みたいな店である。
だが実際は、ダナンの上の階で、俺という成人男性が、
韓国式アカスリと女の子の技術によって、
洗われ、整えられ、艶を出され、最後に雑味まで抜かれていく場所だった。
女の子は若くてかわいい。
サービスはいい。
部屋はきれい。
予約して行けば待ち時間も少ない。
終わったあと、ふと思った。
出荷されて店頭に並んでいるリンゴは、こんな気持ちなのだろうか。
自分では何もしていない。
ただ洗われ、磨かれ、整えられ、
気づいたら「どうぞ」と差し出せる形にされている。
そして最後に気づいた。
俺はApple Spaに行ったのではない。
LINE予約で、自ら箱詰めされに行ったのだ。


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