top of page
![なんとなく、台北行きにした [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_94935add6a4b4aefaa92749a401d2489~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_94935add6a4b4aefaa92749a401d2489~mv2.webp)
![なんとなく、台北行きにした [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_94935add6a4b4aefaa92749a401d2489~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_94935add6a4b4aefaa92749a401d2489~mv2.webp)
なんとなく、台北行きにした [最終話]
【第4話】高雄の午後 商談は、うまくいった。 正確には、うまくいきすぎた。10時に始まって、11時半には合意の方向が見えた。3ヶ月越しの交渉が、この日の90分でほぼ決着した。こういうことが、たまにある。積み上げてきた時間が、ある瞬間に一気に収束する。 ホテルに戻ったのが12時10分だった。 スーツのジャケットを脱いで、ナツキにメッセージを入れた。 「終わった。どこにいますか」 「愛河のあたりをぶらぶらしてます」 「今から行く」 「え、はや」 12時半に合流した。 8月の高雄の昼は、容赦がない。日差しが刺さってくる。ナツキは白いワンピースに着替えていた。朝のTシャツとは違う、少し大人っぽい印象だった。見た目は童顔なのに、こういう選択をする。そのギャップが、31歳という年齢を時折のぞかせる。 川沿いの麺の店で昼飯を食べた。 ルーローハンを頼んだ。ナツキは牛肉麺を頼んで、「これ台湾来たら絶対食べたかったやつ」と言った。食べながら話した。仕事のこと。なぜ一人で台湾に来たのか。どこに住んでいるのか。 「彼氏は」と俺が聞いた。 「・・・いないです」 間があっ

GENPASS 編集 三好
4月6日
![なんとなく、台北行きにした [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_9160abb7e74648b9abf79c49abcc4071~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_9160abb7e74648b9abf79c49abcc4071~mv2.webp)
![なんとなく、台北行きにした [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_9160abb7e74648b9abf79c49abcc4071~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_9160abb7e74648b9abf79c49abcc4071~mv2.webp)
なんとなく、台北行きにした [第3話]
【第3話】乳酪餅の朝 翌朝6時半に目が覚めた。 商談は10時からだ。準備には2時間もあれば足りる。シャワーを浴びて、ホテルの外に出た。高雄の朝は早い。7時前でも街が動いている。屋台が開いていて、スクーターが走っていて、どこかから油の香りが漂ってくる。 早餐店を探した。 台湾の早餐文化を知らずに台湾旅行を終えるのは、もったいないと俺は思っている。ホテルのビュッフェより、街角の早餐店の方がずっといい。地元の人間が並んでいる列に黙って加わって、熱々のものを受け取る。その朝の10分が、旅の質を変える。 「乳酪餅」を頼んだ。 パイ生地の中に、パン、チーズ、卵を挟んだものだ。一口噛むと、バターの香りが鼻を抜けて、チーズがとろける。カロリーの暴力みたいな食べ物だが、これを食べると、その日一日やれる気がする。30元前後。日本円で150円ほど。この金額で、この満足感。台湾の朝食が最強と言われる理由が、一口でわかる。 観光客向けのカフェのモーニングに1500円払うより、この早餐店の乳酪餅を150円で食べる朝の方が、旅としての密度が高い。これは断言できる。 場所を知っ

GENPASS 編集 三好
4月5日
![なんとなく、台北行きにした [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_dd4e32f1933843d085fd9bbf12ee43a0~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_dd4e32f1933843d085fd9bbf12ee43a0~mv2.webp)
![なんとなく、台北行きにした [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_dd4e32f1933843d085fd9bbf12ee43a0~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_dd4e32f1933843d085fd9bbf12ee43a0~mv2.webp)
なんとなく、台北行きにした [第2話]
【第2話】ほくろの位置 声をかけたのは、食後のドリンクを取りに立ったときだった。 作戦でも何でもない。彼女の隣のドリンクバーに手を伸ばしたとき、目が合っただけだ。向こうも同じタイミングで立っていた。 「日本の方ですか」 俺が先に言った。 「・・・あ、はい」 少し驚いた顔をした。でも、嫌そうではなかった。それだけで十分だった。 「一人ですか」 「そうです。旅行で」 「高雄、何日目ですか」 「今日で3日目です。明日移動で」 テンポよく返ってくる。壁を作っている感じがない。俺は自分の席に戻りながら、「美味しいですよね、ここ」と言った。 「めちゃくちゃ美味しいです」 彼女が言った。 声に屈託がなかった。「めちゃくちゃ」という言葉が、童顔の見た目と妙に合っていた。俺は自分の席に戻って、コーヒーを一口飲んだ。 次の手を考えた。 同じ店に一人でいる、という共通点がある。これは使える。「一人飯の連帯感」みたいなものを、女は意外と持っている。特に海外での一人行動に慣れている女は、同じ状況の人間に対して開きやすい。 俺は席を立って、彼女のテーブルに近づいた。 「隣、

GENPASS 編集 三好
4月4日
![なんとなく、台北行きにした [第1話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_52e6bf98f7db45859758518a3f93980e~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_52e6bf98f7db45859758518a3f93980e~mv2.webp)
![なんとなく、台北行きにした [第1話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_52e6bf98f7db45859758518a3f93980e~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_52e6bf98f7db45859758518a3f93980e~mv2.webp)
なんとなく、台北行きにした [第1話]
【第1話】商談前夜の高雄 台湾南部に来るのは、これで4回目だった。 高雄は台北とは空気が違う。台北が東京なら、高雄は大阪に近い。人の距離が近くて、夜が長い。出張で来るたびに、この街が少し好きになっていく。 明日は午前10時から商談が入っている。相手は現地の自動車部品メーカー。3ヶ月越しの交渉がようやく佳境に入ってきた。今夜は早めに切り上げて、明日に備えるつもりだった。 つもりだった、というのが正確な表現だ。 ホテルで着替えてから、一人でディナーに出た。山田がいれば適当な店に連れていくのだが、今回は一人だ。せっかくなら、と思って調べておいた店に向かった。「小時厚牛排」。高雄・台南・屏東にしか存在しない、ローカルのステーキチェーンだ。 店に入ると、広い。思ったより広かった。 清潔感があって、エアコンが効いている。8月の高雄の夜は夜でも30度を超える。その熱気を完全に遮断した店内で、熱々の鉄板ステーキを食べる。この対比だけで、すでにこの店に来た意味がある。 チキンステーキを頼んだ。 300元。日本円で1500円ほど。この金額で、メインのステーキにライス

GENPASS 編集 三好
4月3日
bottom of page
