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Venus Men's Spa & Wellness バリ
バリの夜は、昼より少しだけ正直になる。 夕方までビーチで健康的な顔をしていた男たちも、 日が落ちればスミニャックのネオンへ吸い込まれていく。 今回向かったのは、Batu Beligにある男性向けスパ、 「Venus Men's Spa & Wellness」 今、バリで気になっていた一軒だ。 場所 受付へ入ると、まず女性を選ぶ。 iPadでも選べるし、専用のViewing Roomで 直接見て決めることもできるという。 画面を何度も往復した末、 長い黒髪に褐色の肌、笑うと目尻が少し下がる女性を選んだ。 実際に現れた彼女は、写真より少し小柄だった。 細い腰に、丸みのある尻。 こちらを見る目だけが妙にいたずらっぽい。 これは当たりだ。 まだ何も始まっていないのに、 俺の中ではすでに星5レビューが完成しかけていた。 今夜のコースは「Venus Desire」。 女性1人、90分、175万ルピア。 さらにNuru Gelを35万ルピアで追加して、合計210万ルピア。 バスタブ付き。 そして最後はハンドリリースまで。 本番とオーラルはなし。 余計な夢は見な

GENPASS 編集 八田
5 日前


River View Spa & Lounge バリ島
バリの夜は、だいたい二種類に分かれる。 ビーチクラブで夕日を眺めながら、 人生が充実しているふりをする夜。 そして、美女が十数人並ぶ部屋で、 今夜の人生を二人選ぶ夜だ。 俺が向かったのは、レギャンにある男性向けスパ、 「River View Spa & Lounge」 場所 早速、受付に入ると選んだのは、女性二人が付くVIPコース。 120分、250万ルピア。 プールとジャグジーが付いた個室で 二人の女性によるオイルマッサージ、密着サービス その先まで楽しめる豪華仕様だ。 普段なら女性一人でも十分である。 だが、せっかくのバリ。 たまには身体にも、ダブルブッキングさせてみたい。 受付を済ませると、同じようなワンピース姿の女性が十数人ほど並んだ。 一列に並んだ美女たちが、こちらを見ながら微笑んでいる。 人生でこれほど真剣に顔と身体を見比べる時間はない。 一人目はすぐに決まった。 長い黒髪。細身だが腰の丸みはしっかりしている。 少し強そうな目をしているのに、俺と目が合うと口元だけで笑った。 好みだ!! 問題は二人目である。 3Pでは、女性同士の相性が

GENPASS 編集 八田
8月27日


Starlight Tradisional Massage ジャカルタ
インドネシア・ジャカルタの渋滞は、男の欲望に厳しい。 Googleマップでは、あと15分。 10分後に確認すると、なぜかあと18分。 店へ向かっているはずなのに、到着予定時刻だけが未来へ逃げていく。 今夜の目的地は、南ジャカルタの「Starlight Tradisional Massage」 以前は「Villa Spa」の名で知られていた店らしい。 通常のオイルマッサージに加え、女性によっては少し大人向けのサービスまで期待できるという。 場所 Jl. Asem Baris Raya No.17F, RT.1/RW.5, Kb. Baru, Kec. Tebet, Kota Jakarta Selatan, DKI Jakarta 12830 今回の価格は、全部込みで40万ルピア。 受付で女性を指名し、個室へ入る。 ベッドと小さな棚。 そして、壁が薄い。 右隣から女の笑い声。 左隣から男の低い声。 耳を澄ませば、隣室の試合展開まで何となく分かる。 ま、あるあるか ベッドへ腰かけ、担当の女性を待っていると、扉が勢いよく開いた。 「ご指名ありがとうござ

GENPASS 編集 八田
8月11日


ジャカルタの夜に迷い込んだ俺は、姫に翻弄されて帰ってきた。
出張3度目にして、俺はようやくジャカルタの「夜の本気」を知った。 場所はメンテン地区。店の名前は「Lara Djonggrang」。 名前だけ聞いても何も分からない。 ただ、前夜のホテルのバーで一緒になった50代の日本人ビジネスマンが言っていたんだよ。 「Lara Djonggrangだけは行っとけ」 理由は教えてくれなかった。 「料理がうまいんですか?」って聞いたら、男は笑って首を振った。 「それだけじゃない」 それ以上は何も言わず、グラスを空けた。 ……この言い方、好きじゃないですよ、正直。 「それだけじゃない」って何!? 「それだけじゃない」ってどういう意味!? 教えてくれないなら言うな。 言わないなら意味深にするな。 でも結局、俺、タクシー呼んでいた。速攻で。 場所 そして、タクシーを降りると、空気が変わった。 重厚な石造りの門。燭台の光。フランジパニの甘い匂い。 オランダ統治時代の面影が残る建物。 「場所を間違えたか」と思って地図を確認したら合っていた。 9世紀のジャワ王朝に迷い込んだみたいな浮遊感。 回廊を歩くたびに時代と国籍が変わる

GENPASS 匿名協力記者
6月23日
![雨の前に、もう一杯だけ [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0b7a433b68ca4ab59234ec9aa05b48ee~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_0b7a433b68ca4ab59234ec9aa05b48ee~mv2.webp)
![雨の前に、もう一杯だけ [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0b7a433b68ca4ab59234ec9aa05b48ee~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_0b7a433b68ca4ab59234ec9aa05b48ee~mv2.webp)
雨の前に、もう一杯だけ [最終話]
【最終話】 雨の前に、もう一杯だけ 帰国して、3週間後に次のジャカルタ出張が入った。 スケジュールを見たとき、ナディアに連絡するかどうか考えた。 5秒考えて、連絡した。返事はその夜来た。 「また来るんですね。嬉しいです。夜は空けておきます。」 日本語は相変わらず正確だった。 正確すぎて、どこまでが本音か分からないときがある。 最後の一文だけが、分かりやすかった。 2回目のジャカルタでも、3回目でも、会った。 いつも同じホテルを取った。 いつも夜、どこかで食事をした。 彼女が案内することも多かった。 ロードサイドの食堂で、プラスチックの椅子に座ってサテ・アヤムを食べた夜があった。 「こっちが本当のジャカルタです」とナディアは言って笑った。 串に刺さった鶏の炭火の香りが夜の路地に漂っていた。 俺が東京で想像していたジャカルタとは違う顔だった。 上からしか見たことのない街を、横から歩いている感じがした。 LINEは毎日ではなかったが、続いた。 出張の回数が増えるにつれて、Karimun Batteryとの合意は固まっていった。 契約書が完成したのは、5

GENPASS 編集 三好
6月8日
![雨の前に、もう一杯だけ [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.webp)
![雨の前に、もう一杯だけ [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.webp)
雨の前に、もう一杯だけ [第3話]
【第3話】 雨は、まだ降っていた The St. Regisのバーに入ったのは、23時を過ぎた頃だった。 深夜のバーは、昼間のホテルとは別の顔をしていた。 大理石のカウンターに、アンバーの照明が落ちていた。 バックバーには厳選されたボトルが整然と並び、バーテンダーが一人だけいた。 シグネチャーカクテルを頼んだ。165,000ルピア。 インドネシア産クラフトジンを使ったベースに、カラマンシーとレモングラスを合わせたものだ。 一口飲むと、ジュニパーの香りが先に来て、後から東南アジア特有の柑橘の鋭さが追いかける。 この国の原料でしか作れない、この場所にしかない一杯だった。 雨の夜に、これほど合うものを俺は知らない。 このグレードのホテルのバーが深夜に静かである理由は、ここに来る人間がそれを望んでいるからだ。 「最後に一杯だけ」と俺は言った。 ナディアは黙って席に着いた。 ホテルに戻るまでの間、二人ともほとんど話さなかった。 雨の中のタクシーで、窓の外を見ていた。 沈黙が重くなかった。重くない沈黙が成立するには条件がある。 お互いが相手のそばにいることに

GENPASS 編集 三好
6月7日
![雨の前に、もう一杯だけ [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.webp)
![雨の前に、もう一杯だけ [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.webp)
雨の前に、もう一杯だけ [第2話]
【第2話】 植民地の邸宅で、素顔を見た Lara Djonggrangはジャカルタのムンテン地区、チキニ通りにある。 1920年代に建てられたオランダ植民地時代の邸宅をそのまま使った、インドネシア料理の名店だ。 外から見ると古い住宅の面構えのままで、中に入ると庭にジャワ・ヒンドゥー様式の石像がランタンに照らされて並んでいる。 フランジパニの甘い香りが庭に漂っていた。 テーブルは庭の中に置かれていて、頭上に南国の夜空が広がっていた。 観光客が来る場所ではない。 ジャカルタで何かを知っている人間だけが予約を入れる店だ。 ナディアが来たとき、少し驚いた顔をした。 「本当に来たんですね」と彼女は言った。 「どういう意味ですか」と俺は言った。 「昨日の電話が本物かどうか、半分疑っていました。」 黒のドレスに着替えていた。仕事のときとは別人だった。 ラウォンを頼んだ。185,000ルピア。 インドネシア東ジャワの伝統的な黒いスープで、クルウェックというナッツが色と深みを作る。 見た目の黒さに比べて、味は深く、柔らかい。 牛肉の繊維がスープに溶け込んでいて、発

GENPASS 編集 三好
6月6日
![雨の前に、もう一杯だけ [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.webp)
![雨の前に、もう一杯だけ [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.webp)
雨の前に、もう一杯だけ [第1話/全4話]
【第1話】エグゼクティブラウンジの、隣の席 ジャカルタに来て5日目になる。 EVバッテリーの調達スキームをめぐる交渉が続いていた。 日系自動車メーカーがアジアでの現地生産比率を引き上げるにあたって、インドネシアのサプライヤーとの連携は外せない。 俺の仕事は、どのメーカーと、どの条件で組むか、その橋渡しを作ることだった。 期限は今週中だった。 4日目の午後、交渉が止まった。 相手はKarimun Batteryの調達部長、ハルトノ・サントソ。 50代のインドネシア人で、通訳を介した3時間の会議の末、「検討します」とだけ言った。 アジアで仕事をしてきた人間なら分かる。その言葉の意味は、NOだ。 翌朝、俺は議題を変えた。 契約の話をやめた。代わりに、インドネシアのEV市場が5年後にどうなるかを話した。 政府補助金の方向性、二輪から四輪への需要移行、中国系メーカーの攻勢と日系の対抗策。 最後に「貴社が5年後にどの位置にいたいか」と聞いた。 ハルトノが、通訳を介さずに少し長く答えた。本音が混じっていた。 午後3時、フレームワーク合意の骨格ができた。...

GENPASS 編集 三好
6月5日


Grand MTR ジャカルタ
ジャカルタの夜は、たまに男の判断力を“店に入る前”から壊しにくる。 この日の俺がまさにそうだった。 すでに別の場所で軽く飲んでいた。 いや、軽くという言い方は少し嘘だ。 「今日はまだ全然いける」と自分に言い聞かせている時点で、だいたい人はもう少し先に進んでいる。 その状態のまま、コタインダーの中にある Grand MTR に流れ着いた。 名前からして強い。 “Grand”である。 ただのマッサージ店ではなく、箱のデカさと夜のノリで押してくるタイプの名前だ。 しかもここ、普通の店じゃない。 バー、クラブ、マッサージ、置屋。 その全部が中途半端じゃなく、雑に一体化している。 ジャカルタの夜が「もう分けるの面倒だから一回まとめよう」と決断した結果みたいな店である。 場所 早速、店の中に入る。 暗い。 うるさい。 照明が忙しい。 セクシーダンスショーの余熱。 ビールの匂い。 そして、フロアにいる女の子たち。 この時点で、男の脳は終わる。 普通の店ならまだいい。 明るい部屋で見て、座って、選ぶ。 でもGrand MTRは違う。 最初から全部が“夜のノリ”の

GENPASS 編集 八田
6月4日


Queen Spa ブカシ
ジャカルタの少し外側、ブカシには、名前だけ聞くと完全に“整い”を約束してきそうな店がある。 Queen Spa。 Queen。 女王である。 Spa。 言わずもがな、癒やしと湯気と、なんならサウナくらいありそうな響きである。 だが、東南アジアで店名をそのまま信じる男は甘い。 俺はもう何度も学んでいる。 “Hotel”と書いてあってもホテルとは限らない。 “Massage”と書いてあってもマッサージが主役とは限らない。 そして“Spa”と書いてあっても、別に湯気が出るとは限らない。 分かっている。 分かっているのに、やっぱり少しは期待する。 もしかしたらサウナっぽいものがあるかもしれない。 もしかしたら風呂的な癒し設備があるかもしれない。 ブカシまで来たんだし、ちょっとくらい“スパ感”を味わいたい。 場所 結果から言う。 スパは、なかった。 いや、正確には“なんとなくスパっぽい名前をしているマッサージ店”だった。 大浴場もない。 サウナも見当たらない。 湯気も整い椅子もない。 あるのは個室と、ローカル感と、 そして“Queen”の名にふさわしい圧の

GENPASS 編集 八田
6月3日


Malioboro Hotel & Spa ジャカルタ
ジャカルタの夜には、「ただのマッサージ屋」では説明がつかない箱がある。 そのひとつが、Malioboro Hotel & Spaだ。 名前だけ聞くと、なんだか上品だ。 ホテル、スパ、ラウンジ。 文字だけ並べると、出張のついでにちょっと身体をほぐして帰る場所みたいに見える。 だが、夜のジャカルタでそういう名前に安心した男から順番に、軽く迷子になる。 場所 ジャカルタ中心部、Gajah Mada通り沿い。 中に入るとバー、クラブ、ラウンジに分かれていて 女の子たちもそれぞれ配置されている。 バーに行くか。 クラブにするか。 いや、こういう時はだいたい一番人数が多いところが正義だ。 そう思って、俺はラウンジに入った。 この時の俺はまだ知らなかった。 今夜いちばん必要になるのは金でも勇気でもなく、 “君が一番だ”を自然に言い切るプレゼン能力だということを… ラウンジに行くと、やっぱり一番女の子が多かった。 ここが正解だったと思う。 男の勘というのは、たまにしょうもない方向で外すが、 「数が多いところに行け」という一点に関しては驚くほどブレない。 ママが女

GENPASS 編集 八田
5月28日


Aquarius Massage ジャカルタ
ジャカルタには、男の期待値をじわじわ肥大化させて、最後にそのまま現実へ叩き落としてくる店がある。 その名も、Aquarius Massage。 名前がいい。Aquarius。 なんか水っぽい。癒やしっぽい。清潔感すらある。 でもこういう店名に安心した男から順番に、 あとで自分の浅はかさと対面することになる。 俺はもう、その列のかなり前の方に並んでいた。 場所 Jl. Melawai 9 No.10, RT.3/RW.1, Melawai, Kec. Kby. Baru, Kota Jakarta Selatan, Daerah Khusus Ibukota Jakarta 12160 インドネシア 店に入ると、まずソファーに座らされる。 ここまでは普通。 むしろ落ち着いている。 スタッフが静かに写真を見せてくれる。 写真で選ぶシステムだ。 落ち着いて選べる。 そう思っていた最初の3秒は。 写真を見た。 全員、肌が白すぎる。 全員、目が大きすぎる。 全員、小顔すぎる。 全員、鼻が高すぎる。 全員、笑顔が完璧すぎる。 お―――い!!! 加工しすぎだろ

GENPASS 編集 八田
5月20日
![沈む前に、飲もう [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [最終話]
【最終話】 その夜だけの話だ 翌朝、目が覚めたとき、サキはいなかった。 時刻は7時過ぎ。シーツに彼女の熱が残っていた。 バスルームに行ったかと思って確認したが、誰もいない。 バルコニーに出た。スミニャックの朝の空気が来た。 海の方から風が吹いている。隣に人の気配はなかった。 テーブルにメモがあった。 「先に出ます」とだけ書いてあった。 丸い字だった。一文だった。それ以上でも以下でもなかった。 LINEの交換はしていなかった。 昨夜もしなかったし、今朝も求めなかった。 俺もそれでいいと思っていた。 聞かなかった、ではなく、聞く必要がなかった。 この種の夜には、続きを前提にしない方が誠実な場合がある。 サキも、それを分かっていたと思う。 彼女が「先に出ます」と書いたのは、そういうことだ。 「さようなら」ではなく「先に」と書いた。 それは事実だけを書いた一文だ。 余計なことが何も書いていない文章は、書いた人間の知性を表す。 俺はそれが好きだった。 メモをしばらく手に持っていた。 それから折り畳んで、財布に入れた。 なぜそうしたのか分からない。 捨てても

GENPASS 編集 三好
5月11日
![沈む前に、飲もう [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [第3話]
【第3話】 岩の上で、夕陽を見た 翌日の午後5時に、ホテルのロビーで落ち合った。 The Rock Barは、ジンバランのAYANAリゾートの崖の下にある。 インド洋を14メートル見下ろす玄武岩の上に作られたバーだ。 リゾートから傾斜のついたインクラインリフトで降りる。 崖を滑り降りるように動く狭い箱の中に、二人で乗り込んだ。 サキの肩が俺の腕に触れた。 彼女は少し前のめりになって、外の景色を見ていた。 下に、海が見え始めた。 「すごい」と彼女は言った。声が小さかった。 驚くのが正しい景色というものがある。 俺も初めて来たとき、そう思った。 なるほど、岩の上だ、と。 席についた。カクテルを頼んだ。 マンゴーとパッションフルーツのトロピカルカクテル。Rp185,000。 南国の甘さが口の中でほどける。氷が多く、飲み口がいい。 夕陽が沈みかける時間帯、オレンジ色の光がインド洋の水面を染めていく。 空の色が刻々と変わる。 岩の上にいると、自分が地面の続きにいる気がしない。 海の上に浮かんでいるような感覚がある。 「なんでここ知ってたんですか」とサキは言

GENPASS 編集 三好
5月10日
![沈む前に、飲もう [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [第2話]
【第2話】 バリ料理と、素直な女 Made's Warungは、スミニャックの通りを少し入ったところにある。 1969年の創業だ。 60年近く続いているというのに、それを威張らない。 バリ彫刻の装飾と、開放的な造りと、変わらない料理で静かにやっている。 観光地にずっと立ち続けられる店が持つ空気は、何度来ても落ち着く。 外から見ると奥が深く、中に入るとそれよりさらに広い。 この店をバリで最初に訪れた外国人旅行者たちが、バリ料理を「知った」場所だ。 サキとは店の前で落ち合った。 「どこ行ってたんですか、今日。」俺が先に着いて待っていると、彼女は少し早足で来た。 「タナロット行ってきました。海の神殿。」 「観光客が多い時間じゃなかったか。」 「すごかったです。でもきれいだった。」少し笑った。「行ったことありますか。」 「ある」と俺は言った。「夕方が一番いい。」 「次来たときに。」 次来たとき、という言い方をした。 次があることを、自然に前提にしている。 この手の女は、計画より感覚で動く。バリを一度で終わらせる気がない。悪くない。 席についた。ナシチャン

GENPASS 編集 三好
5月9日
![沈む前に、飲もう [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_71083362cd20477583ec92fdb15e18bb~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [第1話/全4話]
【第1話】 スミニャックの朝、俺の隣に バリに来て3日目になる。 商談は昨日で終わった。 電動モビリティの事業化スキームを組むプロジェクトだ。 インドネシア政府が打ち出した再生可能エネルギー政策に乗る形で、 観光地への電動車両の導入とEV充電インフラの整備を束ねる ——そういう案件で、現地の政府系ファンドと3日間かけて協議していた。 バリが環境配慮型の観光地に転換しようとしていることは、数字に出始めている。 電動バイクの普及率、リゾートへの太陽光導入率、観光客一人当たりのCO2排出量の目標値。 こういう話をするのに、東京の会議室より現地の方がずっと速い。 バリに商社の出張拠点が増えているのは、理由がある。 残り2日は、報告書の整理と次の商談に向けた情報収集に使う予定だった。 朝、「ザ・レギャン」を出た。 スミニャックのビーチ沿いにある、白い外壁のブティックホテルだ。 プールを見下ろせるスイートに3泊している。 部屋で仕事もできるが、外の方が捗る。 ラップトップをバッグに入れて、ペティテンゲ通りを歩いた。 Sisterfieldsに入った。...

GENPASS 編集 三好
5月8日


The Best ジャカルタ
ジャカルタで夜遊びするとき、人はたいてい夜の街に繰り出す。 俺は違った。 デパートのエスカレーターを乗り継いで、6階を目指した。 Plaza Blok M。 南ジャカルタの巨大ショッピングモール。 1階には日用品。2階にはファッション。3階にはフードコート。 隣の家族連れが談笑して、スマホを見ながら歩くティーンエイジャーがいて、どこかからチキンライスの匂いが漂ってくる。 俺は6階を目指していた。 その6階に、The Best。 名前を見た瞬間、脳内に上田教授が降臨した。 TRICKというドラマがある。 阿部寛と仲間由紀恵が主演の怪奇事件もの。 その中で阿部寛演じる上田次郎教授が出版した著書のタイトルが 「なぜベストを尽くさないのか」 The Best。 上田教授、今夜俺はベストを尽くしに参りました。 場所 Plaza Blok Mの6階 6階に上がり店に入ると、女の子が数人ほど待ち構えていた。総勢20人ほどだろうか。 KTV形式。女の子を選ぶスタイル。 料金は150,000ルピア/1時間、2時間ミニマム。 別途個室での本番は別途1,000,000

GENPASS 編集 八田
5月5日


Fashion Hotel ジャカルタ
ジャカルタって街は、昼間はただの大都会なのに、夜になると急に 「お前も少しは都会の男っぽい顔をしてみろよ」 みたいな圧をかけてくる。 「お前は今日、何者になるつもりだ?」と問いかけてくる。 もちろん俺の答えは決まっている。 今夜だけは、余裕ある男。 そう思って向かったのが、 Fashion Hotel 。 こっちは別に普段からそんな洒落た男じゃないのに、 ホテル名にFashionとついているだけで、勝手に背筋が伸びる。 人間は本当に単純だ。 場所 Jl. Gn. Sahari 12 No.2A, RT.16/RW.3, Gn. Sahari Utara, Kecamatan Sawah Besar, Kota Jakarta Pusat, Daerah Khusus Ibukota Jakarta 10720 インドネシア 目当ては6階のスパ。 聞けば半屋外みたいな作りで、空間もかなりいいらしい。 実際に上がってみると、これがまた腹立つほど雰囲気がいい。 ジャカルタの空を切り取ったみたいな開けた感じ。 水気を含んだ夜風。街の灯り。妙に整った空間。

GENPASS 編集 八田
4月2日


My Place ジャカルタ
ジャカルタの夜って、「大人の余裕」みたいな顔をしたくなる。 いや、ただただ昨日は飲みすぎて本番プレイをする体力がないだけだ…。 渋く行こう。落ち着いて遊ぼう。今日は騒がず、派手に転ばず、 スマートに毒素を抜いて帰ろう。 そういうことを考えている時点で、だいたい転ぶ。 この日もそうだった。 向かったのは My Place 。 名前だけ聞くと、「君の場所だよ」みたいな響きで優しい。 だが、そういう名前の店ほど信用してはいけない。 本当に俺の場所なら、 こんなにドキがムネムネしない。寒。 場所 Grand Wijaya Center Blok H No. 1-4, Jalan Wijaya II, Kebayoran Baru, RT.5/RW.1, Pulo, Kec. Kby. Baru, Kota Jakarta Selatan, Daerah Khusus Ibukota Jakarta 12210 インドネシア この店、韓国系チェーンのスパで、プールがあって、サウナがあって、垢すりまである。 ここだけ聞くと、完全に健全な話だ。...

GENPASS 編集 八田
3月26日


男の迷宮「テンダビル」 漫画Ver.
テンダビル 、ジャカルタ中心部から結構距離がある。ジャカルタで遊んでいる俺にとっては、かなりの遠征。 とりあえず、 ジャカルタから「Cibitung駅」まで1時間以上 かけて到着。ここから歩いて向う。 1 2 3 4 5 6 7 [関連記事] この漫画の記事は昨日公開した記事が原作となっています。 ⇒ 「 男の迷宮「テンダビル」 インドネシア 」

GENPASS 編集部 漫画担当
3月3日
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