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![帰り道は遠回りしたくなる [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_3ac212f4c24c4f3dbb7b18382e64a747~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_3ac212f4c24c4f3dbb7b18382e64a747~mv2.webp)
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帰り道は遠回りしたくなる [最終話]
【最終話】 帰り道は遠回りしたくなる 最終日の商談は、午後から動いた。 タタのCPOが修正した条件を持ってきた。 前回より数字は動いていたが、まだ強気だった。 俺は資料を一枚出した。 「この水準だと、御社内の承認が通らない可能性がある」と言った。 理由を3つ述べた。先方が少し黙った。 CPOが隣のCFOに小声でヒンディー語で何か言った。 CFOが頷いた。 「修正しましょう」 契約書の草案を交わしたのは夕方6時だった。 握手をして、ロビーを出た。 空港に向かうタクシーに乗った。 Chhatrapati Shivaji Maharaj International Airportまでは、道が混めば1時間を超える。 夕暮れ時のムンバイは、渋滞と夕日と潮の匂いが混ざる。 街が色を変えていく時間帯だ。 スマホを開いた。 Priyaの連絡先があった。 昨夜、ドアの前で交換した。 メッセージを書き始めた。 「ムンバイを離れる前に。」 そこで止まった。 続きを書こうとした。 何度か書いては消した。 「また来ます」は嘘かもしれない。 「良かった」は軽すぎる。 「また

GENPASS 編集 三好
6月22日
![帰り道は遠回りしたくなる [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_af28e7289b1e45d79471fcd9b98ce87e~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_af28e7289b1e45d79471fcd9b98ce87e~mv2.webp)
![帰り道は遠回りしたくなる [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_af28e7289b1e45d79471fcd9b98ce87e~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_af28e7289b1e45d79471fcd9b98ce87e~mv2.webp)
帰り道は遠回りしたくなる [第3話]
【第3話】 アラビア海の側で MasqueはローワーパレルのRaghuvanshi Mills Compoundにある。 かつて綿花工場だった建物の中に、店がある。 高い天井、むき出しの梁、赤レンガの壁。 装飾ではなく、時間が作ったものだ。 シェフのPrateek Sadhuはヒマラヤの山岳地帯出身で、 インド亜大陸の先住民的な食材と現代の技法を組み合わせたコース料理を出す。 アジアのベストレストラン50に選ばれている。 テイスティングコースは一人5500ルピー。日本円で1万円ほど。 「ここも最初ですか」とPriyaが聞いた。 「はい」 「毎回来たことない店に連れて行くんですか」 「いい店なら調べればわかる」 Priyaが口元に少し笑みを作った。 最初の一皿は、黒いセラミックの皿に盛られた小さな料理だった。 発酵させたジャックフルーツと、野生のベリー、地元のスパイスを使ったエスプーマ。 口の中でほどけた瞬間に、甘みと酸みと土の香りが一度にくる。 これがインドなのか、と思った。 知っていたインドとは別の場所から来たものだった。 5皿目に、アラビア海

GENPASS 編集 三好
6月21日
![帰り道は遠回りしたくなる [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_d02e5cb4241d4c9696f2be1f0ee1c496~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_d02e5cb4241d4c9696f2be1f0ee1c496~mv2.webp)
![帰り道は遠回りしたくなる [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_d02e5cb4241d4c9696f2be1f0ee1c496~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_d02e5cb4241d4c9696f2be1f0ee1c496~mv2.webp)
帰り道は遠回りしたくなる [第2話]
【第2話】 クラブと、窓の外 翌夜7時ちょうどに、彼女は来た。 白いブレザーではなく、深いグリーンのワンピースだった。 俺の顔を見てから時計を見て、「ちょうど7時ですね」と英語で言った。 その一言だった。 この女は時間を守る側の人間だ。 そして、守ったことを主張しない。確認するだけだ。 カラ・ゴーダのRope Walk Laneにあるのに、Trishnaには看板らしい看板がない。 1981年の創業以来、変わらない。 Ajit Kapurが立ち上げたこの店を、いまは息子が厨房で守っている。 外観からは想像できない。 観光ガイドには載っているが、それを知って来る客と、知らずに来る客とでは、店との関係が少し違う。 「有名なんですか、ここ」とPriyaが聞いた。 「ムンバイで魚介を食べるなら、ここ以外考えなくていい」 「来たことはありますか」 「今日が最初です」 Priyaが少し口角を上げた。 それが笑いなのかどうか、判別が難しかった。 バター・ペッパー・ガーリック・クラブを頼んだ。 マッドクラブを使ったTrishnaの看板料理だ。 価格は時価で、この日

GENPASS 編集 三好
6月20日
![帰り道は遠回りしたくなる [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_9c98212112a544b4acd87dd2500ec49d~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_9c98212112a544b4acd87dd2500ec49d~mv2.webp)
![帰り道は遠回りしたくなる [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_9c98212112a544b4acd87dd2500ec49d~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_9c98212112a544b4acd87dd2500ec49d~mv2.webp)
帰り道は遠回りしたくなる [第1話/全4話]
【第1話】 チャイと名刺 この街は、音が多い。 ムンバイに来るたびにそう思う。 クラクション、売り声、寺院の鐘、工事の音——それが重なって、塊になっている。 騒音ではなくて、街の体温に近い。 タタ・モーターズのムンバイ本社で商談が終わったのは、午後3時を少し過ぎたころだった。 打ち合わせは2時間かかった。 テーマはEVシフトに伴うサプライヤーの再編だ。 先方のCPOが最初に言ったのは「日本のサプライヤーはEV移行が遅い。 正直、今のパートナーシップを見直す時期に来ている」という一言だった。 俺は資料を一枚めくった。 「おっしゃる通りです」 同意から入った。否定より速い。 「ただ、移行が遅いということは、まだ決まっていないということでもある。今この段階で入ることが、5年後に意味を持つ」 次のページに数字を並べた。 EV部品の調達コスト削減率、日本の主要サプライヤーとの既存ネットワーク、納期の達成率。 隣に座るCFOが眼鏡を少し持ち上げた。CPOが10秒ほど黙った。 「もう一度話しましょう」 それで十分だった。今日の仕事は終わった。 BKCから配車を

GENPASS 編集 三好
6月19日
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