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![ファンじゃない男 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_be111c25099b466083dd838583206fbd~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_be111c25099b466083dd838583206fbd~mv2.webp)
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ファンじゃない男 [最終話]
【最終話】 ファンじゃない男 翌朝、ナナは7時に起きた。 シャワーを借りて、手早く身支度をして出てきた。 「今日、最終日なんです」とナナは言った。 「何時のフライト」 「夕方5時」 「昼まで時間がある」 「観光したい場所が残ってて」と彼女は言った。 少し申し訳なさそうに。 「いいですよ。楽しんできてください」 ドアのところで、ナナが振り返った。 「……ありがとうございました」 「何が」 「全部。Mido Cafeも、Mott32も、Bar Leoneも、昨夜も」 「礼はいらないですよ」 「でも言いたかったので」とナナは言った。 「また香港に来たら連絡してください」 「来ますよ、絶対に」とナナは言った。「次は三好さんを案内できるくらいに詳しくなってきます」 「それは楽しみですね」 扉が閉まった。 それから3週間が経った。 東京の日常は変わらなかった。 取引先との打ち合わせ。 部下の山田からの報告。 月末の数字。 毎朝同じルートで出社して、同じビルのエレベーターに乗る。 香港のことは引き出しの中に入れておいた。 必要なときに取り出せる場所に、ただ置い

GENPASS 編集 三好
5月4日
![ファンじゃない男 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.webp)
![ファンじゃない男 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_4cef2c7927f946e58d68dc16409cb578~mv2.webp)
ファンじゃない男 [第3話]
【第3話】Bar Leoneの後、香港の雨 Bar Leoneは、Arbuthnot Roadの路地の中にある。 看板は小さく、扉は重い。 知らなければ通り過ぎる。 入るとイタリアのバーを思わせる木のカウンターが目に入った。 照明は低く落とされて、客の声が丁度いい音量で混ざり合っている。 ここのバーテンダー、Andrea Piroloが作るネグローニは、ワールドベストバー50に選ばれた理由になる一杯だ。HK$128。 氷が一つ。グラスの中で橙色の液体がゆれている。 柑橘とビターの香りが鼻を抜けて、後味にジンの余韻が残る。 一口で、この店に来た意味が腹落ちする。 ナナはAperolベースのカクテルを頼んだ。 「バー、好きなんですか」とナナが聞いた。 「出張中は毎晩飲みます」 「一人で?」 「たいていは」 「それって寂しくないですか」 「今夜は一人じゃないですよ」と俺は言った。 ナナが俺を少し見た。返事はしなかった。 その代わりに、グラスに口をつけた。 カクテルをもう一杯頼んだ。 二杯目の途中から、会話が少し減った。 バーという場所の静けさの使い方を

GENPASS 編集 三好
5月3日
![ファンじゃない男 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.webp)
![ファンじゃない男 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_68a3be32c76540aebd83fa9d8114352a~mv2.webp)
ファンじゃない男 [第2話]
【第2話】 Mott32、地下の紅い光の中で 仕事は予定通りに片付いた。 午後は香港島に戻ってホテルで資料整理と電話対応を2件。 夕方には全部終わった。 マンダリン オリエンタルに戻ってシャワーを浴びて、スーツを着た。 このホテルは1963年開業で、英国植民地時代の格式を今も引き継いでいる。 ロビーのスタッフの所作が、他のホテルと少し違う。 積み上げてきた時間がそのまま接客に出ている。 香港に来るたびに同じホテルを指定するのは、慣れた場所の方が余計なことに気を取られなくていいからだ。 一方、ナナが泊まっているのは重慶大廈近くの1泊3500円のゲストハウスだ。 同じ香港の夜にいながら、二人の宿は全然違う。 それは別に問題ではない。 ただ、今夜彼女をどこに連れていくか、という話で考えると、少し面白い構図がある。 重慶大廈は九龍の中でもとりわけ雑多な場所で、世界中のバックパッカーが集まる。 そこからMTRで20分、中環のMott32へ。この落差が今夜の香港を作る。 19時に、ナナは来た。 着替えていた。細身のネイビーのワンピース。 ヒールはない。でも背

GENPASS 編集 三好
5月2日
![ファンじゃない男 [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.webp)
![ファンじゃない男 [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_b9d6e9f53f404ea98b1f10079bb34ec9~mv2.webp)
ファンじゃない男 [第1話/全4話]
【第1話】 Mido Cafe、テンプル・ストリートの端で 油麻地の打ち合わせが14時に終わった。 九龍側に仕事が入ることは珍しい。 今回は現地のサプライヤーが油麻地に事務所を構えていた。 一棟丸ごと古い雑居ビルで、エレベーターが2基しかなく、どちらも遅い。 打ち合わせ自体は問題なく進んで、2時間で片付いた。 外に出ると、テンプル・ストリートに人が出始めていた。 昼と夜のあいだの時間帯で、屋台はまだ準備中、ローカルの人間が歩道を行き来している。 この街の体温が、そのままアスファルトに滲み出ているような感覚がある。 香港島のビジネス街とは別の空気だ。 こちらの方が、どこか本物に近い気がするのは、年齢のせいかもしれない。 Mido Cafeに向かったのは、腹が空いていたのと、あそこの港式奶茶が飲みたかったからだ。 1950年創業の老舗茶餐廳で、テンプル・ストリートの端に何十年も変わらない顔で建っている。 タイル張りの内装、古い明朝体の看板、天井の古いファン。 時間が止まっているように見えて、その止まり方が心地よい。 香港映画のロケ地にもなった場所で、

GENPASS 編集 三好
5月1日


發利大廈 香港
香港の夜って、ズルい。 ネオン。湿気。雑居ビル。古いエレベーター。人の気配。生活感。全部が近い。 距離感がバグってるよ!この街!ビルも近い。人も近い。欲望も近い。 だから、こっちまで勘違いする。 場所 香港 Tsim Sha Tsui, Carnarvon Rd, 33號寶勒巷(セブンイレブンの横) 今回は、 香港の「141」 。このワードを聞いただけで、男の脳内では勝手に ゲーム が始まる。 雑居ビルの隙間が入り口で、まるでドラクエの祠に入っていくようだ。 そこからエレベーターに乗りダンジョンが始まる。 薄暗い廊下。一室一室に秘密。香港の夜の裏側。欲望の密室。モンスターが現れるかもしれない恐怖……みたいな。 どうしてもドラクエの世界とリンクしたがっている俺がいる。 でもな。実際に發利大廈に行って最初に思ったのは、そんなロマンがあるゲームじゃない。 「香港、仕事が早いな」 だった。 發利大廈 の前に着く。 外観からもう最高。古い。雑多。なんか湿っている。エレベーターのボタンまで、なんかもう香港。 入り口を抜けてエレベーター前で待つ。待っている間、

GENPASS 編集 八田
3月12日
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