發利大廈 香港
- GENPASS 編集 八田

- 3月12日
- 読了時間: 5分
更新日:3月12日

香港の夜って、ズルい。
ネオン。湿気。雑居ビル。古いエレベーター。人の気配。生活感。全部が近い。
距離感がバグってるよ!この街!ビルも近い。人も近い。欲望も近い。
だから、こっちまで勘違いする。
場所
香港 Tsim Sha Tsui, Carnarvon Rd, 33號寶勒巷(セブンイレブンの横)
今回は、香港の「141」。このワードを聞いただけで、男の脳内では勝手にゲームが始まる。
雑居ビルの隙間が入り口で、まるでドラクエの祠に入っていくようだ。
そこからエレベーターに乗りダンジョンが始まる。
薄暗い廊下。一室一室に秘密。香港の夜の裏側。欲望の密室。モンスターが現れるかもしれない恐怖……みたいな。
どうしてもドラクエの世界とリンクしたがっている俺がいる。
でもな。実際に發利大廈に行って最初に思ったのは、そんなロマンがあるゲームじゃない。
「香港、仕事が早いな」だった。
發利大廈の前に着く。
外観からもう最高。古い。雑多。なんか湿っている。エレベーターのボタンまで、なんかもう香港。
入り口を抜けてエレベーター前で待つ。待っている間、「来たな……」って思う。
ついに男の都市伝説、いやゼルダの伝説に触れる瞬間。
こっちは勝手に心拍数上がっている。勝手にゲームの主人公になっている。
勝手に「香港の夜に飲まれる俺」を始めている。
エレベーターで8階について、女の子がいるそれぞれの部屋がある。ドアに張り紙みたいなものが張っているが、よく読めないし、ゲームのように鍵があるわけではないので、片っ端からインターフォンを押していく。
だが。入口でそれは即終了した。早い。とにかく早い。何が早いって?
説明が早い。確認が早い。流れが早い。
こちらは、金額とか外見とか雰囲気とかスタイルとか見て考えて、「えーと……」ってなる間に、向こうの業務が全部終わっている。
目が合って気まずくなるとか、そういう間もない。色気とか駆け引きとか、そういうもんの前に、手順がある。
香港の女はクールなのか、いや、業務開始が異常に早い。導線がスムーズ過ぎて俺の中の香港ロマン、開始3分で若干しぼむ。
「なるほど……そういう感じか……」
この時点で薄々気づく。ここは“ゲームの中”じゃない。
香港の現実が、欲望の服を着て立っている場所なんだと。
で、いくつか回って「見た目が好みの子」というダンジョンに閉じ込められた姫を見つける。
ちなみに価格は、600HK$。
で、部屋に入る。ここからが本番。そしてここからが、本当に面白かった。
まず言わせてくれ。
思ってたより、狭い…
いや、狭いとかじゃない。香港が近い。
凄く物が多い子の部屋だった。
壁が近い。ベッドが近い。空気が近い。すべてが近い。
一歩動くと何かに当たる。ちょっと身体の向きを変えると壁。
荷物を置いたら、その時点で出入口が封じられ、空間設計終了。
チ―――――――――ン
「え、待って。これ俺、何をしに来たんだっけ?」ってなる。
欲望で入ったはずなのに、気づいたら香港の不動産事情を体験している。
東京のワンルームがかわいく見えるレベル。香港、すごーい。土地が高いってこういうことなんだなーと…。
おーーーーい!
目的変わってきてるぞ!!
俺はこの瞬間、身体で理解した。普通こういう場所って、男はロマンを見に来るじゃん。でも發利大廈は違うぞ。俺だけかもしれないが…。
ロマンの前に、空間効率が殴ってくる。
それでも俺は負けずに続ける。
体勢を変えた瞬間、ベッドと壁の距離が近すぎて、肘が壁に当たる、膝が棚に当たる、振り向いたら扇風機…って、おい!
いや、この空間効率に負けない、負けないと決めたんだ。
だが、ここでさらに追い打ちをかけてくる。
で、この狭い空間に、なぜか生活があるんですよ。これが一番くる。
何故かある洗濯物。ティッシュ(まぁこれは仕方ない)。ペットボトル。テレビ。生活用品。人の部屋の空気。
この「人の家」感。実際にその生活感を目の前にすると、男の脳って一回止まるんだよ。そう、そしてね。
脳が止まると、あっちも止まる ってのっ!!!
で、決め手は、家族写真。これは無理よ、マジで。
家族が笑顔で微笑んでいる姿、今この目の前で頑張っている女の子の家族。
この子に期待して、今日も仕事に送り出したのかなー、大事にされてきたのかなー、てか、家族のみんな元気かな…なんて。
「頑張れぇぇぇ!」
「萎えるな、俺!!!」
欲望で来たのに、今は「お邪魔します」の気持ちが出てくる。
もう、ここまでくると、これはこれでおもしろい。
なんか、部屋が狭いから全部が近い。近すぎる。香港、何もかも近い。色気も近い。壁も近い。現実も近い。
壁に当たる。何かにぶつかる。家族写真が目に入る。香港が近い。
近すぎるぅぅぅぅ
俺は今、目の前の女の子じゃなくて、香港という都市そのものに、いや、この家族に抱きしめられているのか、だんだんわからなくなってきた…。
たぶん、これを読んでいる人は思うだろう。
「で、どうだったんだ?」
いや、そうなんだよね。そういうことを聞きたいよね。わかる、わかる。
でもな。發利大廈で一番印象に残るの、そこじゃないんだよ。
部屋の狭さ。生活感。家族写真の満面の笑み。
この3つが強すぎるのよ
つまり、よくある夜遊び記事みたいに、「女の子がどうこう」「内容がどうこう」で片付かないんだよ。
全部が香港。全部が現実。全部が近い。だから最後に残る感想が、欲望じゃなくて
「香港ってすんげえな……」
發利大廈 香港。そこには確かに、男が求めるものがある。だから安心してほしい。
ちゃんとできるものはできる。
ただ、俺にはそれ以上にあった、香港の現実が邪魔しただけだった。
そして、俺は思った。
香港の「141」は、欲望の場所というより、香港という街が、男の幻想を超高効率で現実に処理してくる場所だった。
結局あの夜、俺が一番飲まれたのは、女の子じゃない。香港だった。

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