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![雨の前に、もう一杯だけ [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.webp)
![雨の前に、もう一杯だけ [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_8e3a592d87274f5a83c5d402bb6a0d42~mv2.webp)
雨の前に、もう一杯だけ [第3話]
【第3話】 雨は、まだ降っていた The St. Regisのバーに入ったのは、23時を過ぎた頃だった。 深夜のバーは、昼間のホテルとは別の顔をしていた。 大理石のカウンターに、アンバーの照明が落ちていた。 バックバーには厳選されたボトルが整然と並び、バーテンダーが一人だけいた。 シグネチャーカクテルを頼んだ。165,000ルピア。 インドネシア産クラフトジンを使ったベースに、カラマンシーとレモングラスを合わせたものだ。 一口飲むと、ジュニパーの香りが先に来て、後から東南アジア特有の柑橘の鋭さが追いかける。 この国の原料でしか作れない、この場所にしかない一杯だった。 雨の夜に、これほど合うものを俺は知らない。 このグレードのホテルのバーが深夜に静かである理由は、ここに来る人間がそれを望んでいるからだ。 「最後に一杯だけ」と俺は言った。 ナディアは黙って席に着いた。 ホテルに戻るまでの間、二人ともほとんど話さなかった。 雨の中のタクシーで、窓の外を見ていた。 沈黙が重くなかった。重くない沈黙が成立するには条件がある。 お互いが相手のそばにいることに

GENPASS 編集 三好
12 時間前
![雨の前に、もう一杯だけ [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.webp)
![雨の前に、もう一杯だけ [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_1a7b10744e0c407583b4a1a003e49c0f~mv2.webp)
雨の前に、もう一杯だけ [第2話]
【第2話】 植民地の邸宅で、素顔を見た Lara Djonggrangはジャカルタのムンテン地区、チキニ通りにある。 1920年代に建てられたオランダ植民地時代の邸宅をそのまま使った、インドネシア料理の名店だ。 外から見ると古い住宅の面構えのままで、中に入ると庭にジャワ・ヒンドゥー様式の石像がランタンに照らされて並んでいる。 フランジパニの甘い香りが庭に漂っていた。 テーブルは庭の中に置かれていて、頭上に南国の夜空が広がっていた。 観光客が来る場所ではない。 ジャカルタで何かを知っている人間だけが予約を入れる店だ。 ナディアが来たとき、少し驚いた顔をした。 「本当に来たんですね」と彼女は言った。 「どういう意味ですか」と俺は言った。 「昨日の電話が本物かどうか、半分疑っていました。」 黒のドレスに着替えていた。仕事のときとは別人だった。 ラウォンを頼んだ。185,000ルピア。 インドネシア東ジャワの伝統的な黒いスープで、クルウェックというナッツが色と深みを作る。 見た目の黒さに比べて、味は深く、柔らかい。 牛肉の繊維がスープに溶け込んでいて、発

GENPASS 編集 三好
1 日前
![雨の前に、もう一杯だけ [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.webp)
![雨の前に、もう一杯だけ [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_0549725bf68645c0ae4aea3c9e5be054~mv2.webp)
雨の前に、もう一杯だけ [第1話/全4話]
【第1話】エグゼクティブラウンジの、隣の席 ジャカルタに来て5日目になる。 EVバッテリーの調達スキームをめぐる交渉が続いていた。 日系自動車メーカーがアジアでの現地生産比率を引き上げるにあたって、インドネシアのサプライヤーとの連携は外せない。 俺の仕事は、どのメーカーと、どの条件で組むか、その橋渡しを作ることだった。 期限は今週中だった。 4日目の午後、交渉が止まった。 相手はKarimun Batteryの調達部長、ハルトノ・サントソ。 50代のインドネシア人で、通訳を介した3時間の会議の末、「検討します」とだけ言った。 アジアで仕事をしてきた人間なら分かる。その言葉の意味は、NOだ。 翌朝、俺は議題を変えた。 契約の話をやめた。代わりに、インドネシアのEV市場が5年後にどうなるかを話した。 政府補助金の方向性、二輪から四輪への需要移行、中国系メーカーの攻勢と日系の対抗策。 最後に「貴社が5年後にどの位置にいたいか」と聞いた。 ハルトノが、通訳を介さずに少し長く答えた。本音が混じっていた。 午後3時、フレームワーク合意の骨格ができた。...

GENPASS 編集 三好
2 日前


Grand MTR ジャカルタ
ジャカルタの夜は、たまに男の判断力を“店に入る前”から壊しにくる。 この日の俺がまさにそうだった。 すでに別の場所で軽く飲んでいた。 いや、軽くという言い方は少し嘘だ。 「今日はまだ全然いける」と自分に言い聞かせている時点で、だいたい人はもう少し先に進んでいる。 その状態のまま、コタインダーの中にある Grand MTR に流れ着いた。 名前からして強い。 “Grand”である。 ただのマッサージ店ではなく、箱のデカさと夜のノリで押してくるタイプの名前だ。 しかもここ、普通の店じゃない。 バー、クラブ、マッサージ、置屋。 その全部が中途半端じゃなく、雑に一体化している。 ジャカルタの夜が「もう分けるの面倒だから一回まとめよう」と決断した結果みたいな店である。 場所 早速、店の中に入る。 暗い。 うるさい。 照明が忙しい。 セクシーダンスショーの余熱。 ビールの匂い。 そして、フロアにいる女の子たち。 この時点で、男の脳は終わる。 普通の店ならまだいい。 明るい部屋で見て、座って、選ぶ。 でもGrand MTRは違う。 最初から全部が“夜のノリ”の

GENPASS 編集 八田
3 日前


Queen Spa ブカシ
ジャカルタの少し外側、ブカシには、名前だけ聞くと完全に“整い”を約束してきそうな店がある。 Queen Spa。 Queen。 女王である。 Spa。 言わずもがな、癒やしと湯気と、なんならサウナくらいありそうな響きである。 だが、東南アジアで店名をそのまま信じる男は甘い。 俺はもう何度も学んでいる。 “Hotel”と書いてあってもホテルとは限らない。 “Massage”と書いてあってもマッサージが主役とは限らない。 そして“Spa”と書いてあっても、別に湯気が出るとは限らない。 分かっている。 分かっているのに、やっぱり少しは期待する。 もしかしたらサウナっぽいものがあるかもしれない。 もしかしたら風呂的な癒し設備があるかもしれない。 ブカシまで来たんだし、ちょっとくらい“スパ感”を味わいたい。 場所 結果から言う。 スパは、なかった。 いや、正確には“なんとなくスパっぽい名前をしているマッサージ店”だった。 大浴場もない。 サウナも見当たらない。 湯気も整い椅子もない。 あるのは個室と、ローカル感と、 そして“Queen”の名にふさわしい圧の

GENPASS 編集 八田
4 日前


コロンビア club Medellinのオー! マイワイフとの素敵な体験
オレは、今回、はるばるコロンビアまでやった。 風俗の体験で、コロンビアまでわざわざ来るヤツなんて、まず、いないでしょ。 かつ、チャンスあらば、コロンビアにはるばる結婚の相手を見つけにきた。 見たか。この大プロジェクトを。 「結婚しようぜ!オレと」 オレがコロンビアを選んだ理由は、最強の美女たちがIndustry club Medellinに戯れているからだ。 Parque Lleras地区をぶらぶら歩く。 まわりを見まわし、女の子のレベルは、誰もがみな美人という感じ。これは、かなり期待できると確信した。 Industry club Medellinに到達する前に、超好みの立ちんぼを発見。 これだったら、ひょっとしたらIndustry club Medellinまで行く必要なしか? 「結婚しようぜ!オレと」 ここでいきなり相手見つけてどうするの? 足をヒールでふんずけられ、行かれてしまった。 彼女は立ちんぼでもなんでもなかった。ただ、そこに立っていただけ。 そこに、突然のスコールが!!! オレも、女も濡れる街角。 そもそも、そんな

GENPASS 匿名協力記者
5 日前
![大嫌いなはずだったのに [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4543ab7fe80e44d392db0fdbe49a95c5~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_4543ab7fe80e44d392db0fdbe49a95c5~mv2.webp)
![大嫌いなはずだったのに [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4543ab7fe80e44d392db0fdbe49a95c5~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_4543ab7fe80e44d392db0fdbe49a95c5~mv2.webp)
大嫌いなはずだったのに [最終話]
【最終話】 大嫌いなはずだったのに 帰国してから、3週間後に次の上海出張が入った。 NIOとの交渉は継続中で、修正した提案書を持っての再訪だった。 他にも2社、別の案件でアポが入っていた。 出張の理由は十分にあった。 スケジュールを確認したとき、リンに連絡するかどうかを考えた。 10秒考えて、連絡した。返事はすぐ来た。 「知ってました。また来ると思っていました」とリンは書いた。 俺は「なぜ」と返した。 「三好さんは、やり残したことを放置しない人だから」と来た。 仕事の話なのか、それ以外の話なのか、聞かなかった。 上海に向かう飛行機の中で、その言葉を反芻した。 やり残したこと。仕事ならそうかもしれない。 ただ、今回の出張の準備を始めたとき、最初に頭に浮かんだのは次の商談ではなかった。 2回目の上海は、最初とは違う空気だった。 商談でリンと向かい合っても、同じ人間だとは思えなかった。 交渉のテーブルでは鋭く、容赦がない。 俺の提案を数字で切る。 そのやり方は変わらなかった。 ただ、会議が終わった後の顔を、俺は知っていた。 その顔を知っていることが、商

GENPASS 編集 三好
6 日前
![大嫌いなはずだったのに [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_d65ea4ee805940f7b9357a9becfa5942~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_d65ea4ee805940f7b9357a9becfa5942~mv2.webp)
![大嫌いなはずだったのに [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_d65ea4ee805940f7b9357a9becfa5942~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_d65ea4ee805940f7b9357a9becfa5942~mv2.webp)
大嫌いなはずだったのに [第3話]
【第3話】 ペニンシュラの、夜が長かった The Peninsulaのバーは静かだった。 1929年建設のホテルは、上海でも数少ない「歴史を持つ建物」だ。 植民地時代の名残がある外灘に建ち、高い天井と大理石の柱が当時のままだ。 バーのカウンターに座って飲んでいると、今が何年かが分からなくなる。 俺はウイスキーを頼んだ。リンはジンを頼んだ。 バーテンダーは何も聞かなかった。 グラスを二つ出して、氷を入れた。 この店では客が喋る必要がない。 席に座ること自体が、言葉の代わりになる。 そういうバーだった。 しばらく、何も話さなかった。 沈黙が重くなかった。 重くない沈黙が成立するには、条件がある。 お互いが相手のそばにいることに慣れていること。 48時間前に初めて会った相手とこの空気になるのは、珍しいことだ。 ただ、商談からここまでを振り返ると、時間の密度が普通ではなかった。 Fu 1088の2時間。Speak Lowの深夜。 Mr & Mrs Bundの夜景。 そのどこかで、距離が縮まっていた。気づかないうちに、縮まっていた。 「今日の商談は、どうで

GENPASS 編集 三好
5月31日
![大嫌いなはずだったのに [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_dba4d68207c74e8495afb12c30627a9d~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_dba4d68207c74e8495afb12c30627a9d~mv2.webp)
![大嫌いなはずだったのに [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_dba4d68207c74e8495afb12c30627a9d~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_dba4d68207c74e8495afb12c30627a9d~mv2.webp)
大嫌いなはずだったのに [第2話]
【第2話】 隠れ家で、別の顔を見た Speak Lowは復興中路の路地にある。 復興中路は夜でも人通りがあった。 プラタナスの並木が上から覆いかぶさって、その間から街灯が落ちている。 リンは迷わなかった。 この街の地図が、彼女の中に入っていた。 表向きは本の並んだポップアップショップだ。 入り口には「Bar」の表示がない。 知らなければ通り過ぎる。 扉を開けて中に入ると、カウンターと棚いっぱいのボトルがある。 日本人バーテンダーの後神慎悟が手がけた店で、ミシュランに名前が載っている。 上海に来る度に立ち寄る人間と、一生知らない人間がいる。 それだけの差がある店だ。 カウンターに並んだ。 「ここ、よく来るんですか」と俺は聞いた。 「月に2、3回。」 「一人で?」 「大体は一人です。」彼女はそう言って、カクテルメニューを見た。 「仕事のあと、静かにしたい夜があって。」 頼んだカクテルは、ジャスミンティーとライムを使ったシグネチャーだった。180元。 一口飲むと、花の香りが先に来て、後からライムの酸みが伸びてくる。甘さが残らない。 上海の夜に、これほど

GENPASS 編集 三好
5月30日
![大嫌いなはずだったのに [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_5e431479487f49baa8edd1fae6def28d~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_5e431479487f49baa8edd1fae6def28d~mv2.webp)
![大嫌いなはずだったのに [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_5e431479487f49baa8edd1fae6def28d~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_5e431479487f49baa8edd1fae6def28d~mv2.webp)
大嫌いなはずだったのに [第1話/全4話]
【第1話】 提案を、一刀両断された 上海に来て2日目になる。 EVインフラの整備計画をめぐり、中国側パートナーとの交渉が続いていた。 政府系の補助金スキームと、民間資本の組み合わせ方を詰める作業だ。 日本の商社として何を持ち込めるか、相手に何を期待するか。 その落とし所を探る3日間で、2社目がNIOだった。 会議室に入ったとき、リンはいなかった。 5分待った。10分待った。 スタッフが「少々お待ちください」と言うだけで、それ以上の説明がなかった。 俺は黙って待った。 窓の外に上海の高層ビルが並んでいた。 この国の商談は、待たされる方が弱い。 それを知っている側が、いつも遅れてくる。 15分後、彼女が入ってきた。 謝らなかった。「凌(リン)です」とだけ言って、名刺を出した。 名刺を一瞥して、すぐ机に置いた。そのまま資料を開いた。 日本側が持参した提案書を読み始め、2分ほどして「この数字の根拠は何ですか」と聞いた。 日本語だった。正確な、一切の揺れがない日本語だった。 こちらが説明している途中で、「それはNIOには合わない」と言った。 「理由を聞いて

GENPASS 編集 三好
5月29日


Malioboro Hotel & Spa ジャカルタ
ジャカルタの夜には、「ただのマッサージ屋」では説明がつかない箱がある。 そのひとつが、Malioboro Hotel & Spaだ。 名前だけ聞くと、なんだか上品だ。 ホテル、スパ、ラウンジ。 文字だけ並べると、出張のついでにちょっと身体をほぐして帰る場所みたいに見える。 だが、夜のジャカルタでそういう名前に安心した男から順番に、軽く迷子になる。 場所 ジャカルタ中心部、Gajah Mada通り沿い。 中に入るとバー、クラブ、ラウンジに分かれていて 女の子たちもそれぞれ配置されている。 バーに行くか。 クラブにするか。 いや、こういう時はだいたい一番人数が多いところが正義だ。 そう思って、俺はラウンジに入った。 この時の俺はまだ知らなかった。 今夜いちばん必要になるのは金でも勇気でもなく、 “君が一番だ”を自然に言い切るプレゼン能力だということを… ラウンジに行くと、やっぱり一番女の子が多かった。 ここが正解だったと思う。 男の勘というのは、たまにしょうもない方向で外すが、 「数が多いところに行け」という一点に関しては驚くほどブレない。 ママが女

GENPASS 編集 八田
5月28日


海外クラブで“いけた”と思った夜、友人に全部持っていかれた話|マニラの現実がエグい
あの夜、完全に“いけた”と思ってた。 ——結果、俺だけ何も起きなかった。しかも理由が、エグかった。 マニラに来た理由は、ほぼない。 「なんか海外行きたいな」くらいのノリで、気づいたら航空券を取っていた。セブでもバンコクでもよかった。たまたま安かったのがマニラだっただけ。 ただ、出発前にYouTubeでこんな動画を見た。 「マニラのクラブ、日本人ってだけでバリバリモテる説」 再生回数、42万回。 ——信じた。完全に信じた。 昼、カフェでだらだらしていると友人が言った。 「マニラってクラブ結構ヤバいらしいで」 ヤバいの中身はよくわからない。でも、その曖昧さがちょうどよかった。 「海外なら余裕でしょ」 日本だったら絶対言わない。でも海外マジックというのは恐ろしいもので、なぜか強くなった気がした。根拠ゼロで「今日は当たり引くぞ」と思っていた。 この時点で、完全に自分が主役のつもりだった。 場所 向かったのは、BGCにある「XYLO at The Palace」。 外まで漏れてくる低音と、人のざわめき。入口の時点で、もう空気が違う。中に入った瞬間、全部に飲

GENPASS 匿名協力記者
5月27日


A5マッサージ バンコク
バンコクには、男の欲望を満たす前に、 まず男の生活感を丸裸にしてくる店がある。 その名も、A5マッサージ。 A5。 名前がもう強い。 焼肉屋なら一番うまいやつである。 この名前を見た瞬間、男の脳は勝手にこう解釈する。 「なるほど、最高級ってことね」 いや、まだ入ってもいないのに何を納得しているんだ。 でも仕方ない。 A5なんて付いていたら、こっちは勝手に期待する。 どうせなら一番いいものを選びたい。 どうせならハズレなしであってほしい。 どうせなら俺も、その空間に見合う男でありたい。 この最後の一文が、今回のテンパり地獄の入口だった。 場所 店に入る。 若い。とにかく若い。 見た感じ25歳前後。 しかもただ若いだけじゃない。 きれい系が多い。 ここで言う“きれい系”とは、 派手に露出して「どうだ!」と殴ってくるタイプではないよ。 むしろ逆。整っている。清潔感がある。 顔も服も雰囲気も、全部が「ちゃんとしている」。 この瞬間、俺の中で何かが始まる。 欲望ではない。 身だしなみ監査である。 案内された部屋を見て、さらに追い打ち。 各部屋にシャワーが付

GENPASS 編集 八田
5月26日
![山田には、言えない [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_90f30a82166e4cc482b8e8ab654d2aab~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_90f30a82166e4cc482b8e8ab654d2aab~mv2.webp)
![山田には、言えない [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_90f30a82166e4cc482b8e8ab654d2aab~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_90f30a82166e4cc482b8e8ab654d2aab~mv2.webp)
山田には、言えない [最終話]
【第4話】 3人で飲んだ、あの春 翌朝、朝食の時間に山田と顔を合わせた。 The Fullertonのダイニングには、山田がすでに座っていた。 「おはようございます」と言った。 昨夜のことを引きずっていない顔だった。 若さとはこういうことだ。 傷が深くても、朝になると回復している。 俺はコーヒーを頼んだ。 エッグベネディクトが来た。 食べながら山田と話した。 今日の商談のこと。 帰りの飛行機のこと。 普通の話だった。普通にできた。 コーヒーが2杯目になった頃、ユイが現れた。 「あ、偶然」と山田が言った。 本当に偶然だと思っている顔だった。 ユイが「おはようございます」と言って席についた。 3人で食べた。会話が弾んだ。 ユイは昨夜とは違う顔をしていた。 旅の終わりの、澄んだ顔。 俺と目が合った。一秒だった。 何も言わなかった。それでよかった。 「東京でも飲みましょう」と山田が言った。 「ぜひ」とユイは言った。俺を見た。 俺は「そうしよう」と言った。 山田は何も知らなかった。 知らないまま笑っていた。 その笑顔が、一番重かった。 俺が山田だったら、誰

GENPASS 編集 三好
5月25日
![山田には、言えない [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_6292305bccde43e5b83648bb890f4219~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_6292305bccde43e5b83648bb890f4219~mv2.webp)
![山田には、言えない [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_6292305bccde43e5b83648bb890f4219~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_6292305bccde43e5b83648bb890f4219~mv2.webp)
山田には、言えない [第3話]
【第3話】 Atlas Barの後で Atlas BarはParkview Squareの1階にある。 1920年代のアール・デコ様式の吹き抜けが広がり、天井まで続くジンのタワーが壁を埋めている。 1000種以上のジン。 それだけで、ここがどういう場所かが分かる。 真夜中に来ても満席に近い。 世界中から来た人間が、この空間で飲んでいる。 3人でカウンターに並んだ。 山田が今夜決める気でいることは、俺には分かった。 こういうとき、男の気配は変わる。 少し緊張した動き方になる。 グラスを持つ手の置き方が、昨夜と少し違う。 ユイへの話しかけ方が真剣だった。 俺は少し引いた位置でジンを飲んでいた。 アール・デコの天井が高く、1920年代の金色が光の中で揺れていた。 いい店だ、と思った。 こういう店に連れてきた山田の選択は悪くなかった。 ただ、店が良くても、男が良くなるわけではない。 ジントニックを2杯飲んだ頃、山田が動いた。 「ユイさん、連絡先、教えてもらえますか。」 間があった。 「ごめんなさい。」 山田の顔が固まった。 「いや、そういうつもりじゃなく

GENPASS 編集 三好
5月24日
![山田には、言えない [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_6f160538d75849f6b980cf9fc7786c8f~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_6f160538d75849f6b980cf9fc7786c8f~mv2.webp)
![山田には、言えない [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_6f160538d75849f6b980cf9fc7786c8f~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_6f160538d75849f6b980cf9fc7786c8f~mv2.webp)
山田には、言えない [第2話]
【第2話】 チキンライスと、視線の話 Maxwell Food CentreはチャイナタウンのNeil Road沿いにある。 屋根付きのホーカーセンターで、昼前から人が溢れる。 観光客と地元民が同じ列に並ぶ。 「天天海南鶏飯」の行列が一番長い。 茹でたチキンをご飯と一緒に食べる、シンガポールの国民食だ。プレートで10ドル。 チキンは滑らかで、噛むと出汁が溢れてくる。 ジンジャーソースとチリソースを混ぜると、それだけで一食になる。 高級料理には出せない、正直な旨さがある。 ビジネスで来ると、こういう場所まで足を運べないことが多い。 山田は初めてだった。 ユイも初めてだった。 3人で並んで食べた。 山田がユイに話しかけ続けた。 デザイナーの仕事のこと、好きなカフェのこと、旅の目的のこと。 よく聞く。熱心だ。悪い男ではない。 ただ、少し前のめりすぎる。 ユイは答えながら、時々俺を見た。 確認するような視線だった。 「この人はどう思っているのかな」という目。 俺は食べていた。 聞いていた。 何も言わなかった。 「三好さんはシンガポール何回目ですか」とユイ

GENPASS 編集 三好
5月23日
![山田には、言えない [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.webp)
![山田には、言えない [第1話/全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_bff0dc0dbca4456f9273a8dbbe2d2c14~mv2.webp)
山田には、言えない [第1話/全4話]
【第1話】 ラウンジで、山田が動いた夜 シンガポールに来て3日目になる。 今回は山田を連れてきていた。入社6年目、28歳。 仕事は丁寧で、上を立てることを知っている。 ただ、女の前では少し力んでしまう。 それ以外は悪くない部下だ。 EV充電インフラのアジア展開で、シンガポールは東南アジアの拠点候補として動いている。 政府の補助金制度が整っていて、複数の政府系企業と日系企業を3日で回った。手応えはあった。 夜、仕事を終えてThe Fullertonのラウンジに座っていた。 シンガポール川に面した旧郵便局の建物を改装したホテルで、 白い石柱が並ぶファサードは英国植民地時代の威厳を保っている。 「The Courtyard」はそのアトリウム吹き抜けの中心にある。 薄暗い照明に、白いドレスコードが揃った客が並んでいた。 出張でここを選ぶのはビジネス層が多い。 ラウンジにいる人間の顔つきが、それを教えてくれる。 山田がシングルモルトを飲みながら話していた。 今日の商談のことを。 明日の予定のことを。 よく喋る夜だった。 俺はグラスを持って、聞いていた。..

GENPASS 編集 三好
5月22日


Aquarius Massage ジャカルタ
ジャカルタには、男の期待値をじわじわ肥大化させて、最後にそのまま現実へ叩き落としてくる店がある。 その名も、Aquarius Massage。 名前がいい。Aquarius。 なんか水っぽい。癒やしっぽい。清潔感すらある。 でもこういう店名に安心した男から順番に、 あとで自分の浅はかさと対面することになる。 俺はもう、その列のかなり前の方に並んでいた。 場所 Jl. Melawai 9 No.10, RT.3/RW.1, Melawai, Kec. Kby. Baru, Kota Jakarta Selatan, Daerah Khusus Ibukota Jakarta 12160 インドネシア 店に入ると、まずソファーに座らされる。 ここまでは普通。 むしろ落ち着いている。 スタッフが静かに写真を見せてくれる。 写真で選ぶシステムだ。 落ち着いて選べる。 そう思っていた最初の3秒は。 写真を見た。 全員、肌が白すぎる。 全員、目が大きすぎる。 全員、小顔すぎる。 全員、鼻が高すぎる。 全員、笑顔が完璧すぎる。 お―――い!!! 加工しすぎだろ

GENPASS 編集 八田
5月20日
![空港まで、三十分 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.webp)
![空港まで、三十分 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_42d98b4d66c14eda8710d88acccbc358~mv2.webp)
空港まで、三十分 [最終話]
【第4話】 空港まで、三十分 朝、目が覚めたとき、リカはすでに起きていた。 キッチンでコーヒーを淹れていた。 「おはよう」と言って、俺にもカップを渡した。 バルコニーに出て、二人で飲んだ。 ドバイの朝は静かだ。 砂漠の空気が冷たく、街がまだ動き出していない。 高層ビルの窓に朝日が当たって、街が光っている。 夜とは全く違う顔だ。 こういう朝を、リカは2年間ここで迎えてきた。毎日一人で。 「昨日、楽しかった」とリカが言った。 「俺も。」 「・・・珍しいんです、こういう夜。」 何に対して珍しいのかは、聞かなかった。聞く必要がなかった。 「フライト、何時?」と彼女が聞いた。 「午前11時。」 「送ります」と彼女は言った。 「いい。タクシーで行く。」 「送ります」ともう一度言った。 断る言葉を探したが、出てこなかった。 リカが送ると言うとき、それは好意でも義務でもなく、自分でそう決めたということだ。 2年間、自分のことを自分で決めてきた女の言い方だ。 俺にはそれを断る理由がなかった。 リカの車は白いSUVだった。 ドバイでは日本より運転しやすいと彼女は言っ

GENPASS 編集 三好
5月18日
![空港まで、三十分 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.webp)
![空港まで、三十分 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_58486d084a8945289818369842632961~mv2.webp)
空港まで、三十分 [第3話]
【第3話】 52階と、彼女の部屋 Ce La ViはAddress Sky Viewの52階にある。 ドバイには高いところにバーがある、と知っていても、ここは別格だ。 エレベーターを降りた瞬間、ブルジュ・ハリファが正面にある。 夜に光る世界一の高さのビルが、目の前に立っている。 観光地という言い方は正確じゃない。 ここは、ドバイの夜を正面から受け取る場所だ。 カクテルを頼んだ。 ローズウォーターとサフランを使ったシグネチャーカクテル。AED88。 一口飲むと、花の香りが鼻を抜けて、後からほのかな苦みが来る。 中東の香辛料と西洋のカクテル技術が混ざった味は、ここでしか作れない。 ドバイという都市そのものが、この一杯に入っている気がした。 しばらく二人で、ブルジュ・ハリファを見ていた。 「きれいですね」とリカが言った。 「毎日見てる?」 「毎日じゃないけど、飽きない。」 「東京に戻りたいと思う?」 「・・・たまに。」 「どんなとき。」 「誰かと話したいのに、話せない日。」 そう言ってから、「なんか変なこと言いましたね」とリカが笑った。 笑い方がおかし

GENPASS 編集 三好
5月17日
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