海外クラブで“いけた”と思った夜、友人に全部持っていかれた話|マニラの現実がエグい
- GENPASS 匿名協力記者

- 5月27日
- 読了時間: 4分

あの夜、完全に“いけた”と思ってた。
——結果、俺だけ何も起きなかった。しかも理由が、エグかった。
マニラに来た理由は、ほぼない。
「なんか海外行きたいな」くらいのノリで、気づいたら航空券を取っていた。セブでもバンコクでもよかった。たまたま安かったのがマニラだっただけ。
ただ、出発前にYouTubeでこんな動画を見た。
「マニラのクラブ、日本人ってだけでバリバリモテる説」
再生回数、42万回。
——信じた。完全に信じた。
昼、カフェでだらだらしていると友人が言った。
「マニラってクラブ結構ヤバいらしいで」
ヤバいの中身はよくわからない。でも、その曖昧さがちょうどよかった。
「海外なら余裕でしょ」
日本だったら絶対言わない。でも海外マジックというのは恐ろしいもので、なぜか強くなった気がした。根拠ゼロで「今日は当たり引くぞ」と思っていた。
この時点で、完全に自分が主役のつもりだった。
場所
向かったのは、BGCにある「XYLO at The Palace」。
外まで漏れてくる低音と、人のざわめき。入口の時点で、もう空気が違う。中に入った瞬間、全部に飲み込まれた。
音がデカい。光が強い。人が多すぎる。
フロアはパンパンで、身動きを取るのも一苦労。日本とは違う熱気に、一瞬たじろいだ。
とりあえずビールを持って、フロアへ。柱の近くで飲んだ。またこれか。
そのとき、隣にいた女の子と自然と距離が縮まった。
というか、気づいたらほぼ密着状態。
(これ……いける流れじゃない?)
変な自信が湧いてくる。言葉は通じなくても、雰囲気でなんとかなるやつだと思った。音楽に合わせて体を揺らす。相手も嫌がってる様子はない。むしろ、普通に踊れてる気がする。
心臓がうるさい。でも確信していた。
いや、これ完全に成功パターンだろ。
——そう思っていた。
ふと冷静になって、周りを見た。
全員、同じくらいの距離で密着してる。
前も後ろも横も、全員ぎゅうぎゅう。誰一人、自由に動けてない。
あ。
つまりこれ——
俺が距離を詰めたわけじゃなくて、ただ押し込まれてただけだった。
相手が嫌がってなかった理由もシンプルで、嫌がるとか以前に、そもそも動けない。
「いけた」と思ってたあの数分間——
ただの満員電車を、勝手にロマンに変換してただけだった。
渋谷の朝の山手線と、やってること同じだった。
気まずくなって少し離れようとしたけど、そもそも離れるスペースもない。
結局そのまま、何も起きないまま音楽だけが終わった。
気を取り直して、フロアをうろついていると目が合った。
タイトなドレス、まっすぐ伸びたヒールのライン。目が合った瞬間だけ、柔らかくなる。
一瞬で持っていかれた。
軽く声をかけると、会話が始まった。英語は完璧じゃない。でもそんなことはどうでもよかった。音が大きいから自然と距離が近くなる。今度は、自分から縮めた距離だった。
「これ来てるだろ」
確信していた。完全に。
気づけば、3人で飲んでいた。
俺と、友人と、彼女。さっきまで他人だったのに、同じテーブルで笑っている。
彼女はよく笑った。リアクションもいい。
ただ——視線が、たまに友人に向く。
気にしないようにした。いや、気にしたくなかった。
時間の感覚がなくなってきた頃、気づけば外に出ていた。
夜風が気持ちいい。「このまま行く流れだろ」
タクシーを止める。ドアが開く。
——ここまでは、全部想定通りだった。
次の瞬間。
2人が自然に乗り込んでいた。
俺は、一歩後ろにいた。ほんの一歩。でも、その一歩がすべてだった。
「じゃあね」
軽く手を振られる。ドアが閉まる。タクシーが走り出す。
友人、一度も振り返らなかった。
薄情か。
いや待て、さっきまで俺も振り返ることしか考えてなかった。
お互い様だ。
数秒、動けなかった。
とりあえず歩いた。気づけばコンビニにいた。ビールを一本取る。
レジのおじさんが、なぜか優しい顔をしていた。
全部お見通しなんだろうな、と思った。
ホテルに戻って、ベッドに倒れ込む。
プシュ。
——苦かった。
いや、もともとビールって苦いんだけど。
今日だけは、いつもより苦かった気がした。
マニラのクラブは距離が近い。
でもそれは、チャンスじゃなくてただの物理だった。
渋谷の山手線と同じだと気づいた時点で、もう少し冷静になれた気がする。
「海外の夜は、密着より、物理を疑え。」
これが、あの夜で一番学んだことです。
——ちなみに友人は翌朝、何も言わなかった。
こっちも、何も聞かなかった。
それでよかった。
あと、YouTubeの42万回再生、全員騙されてると思う。

■ XYLO at The Palace 基本情報
• 住所:9th Avenue corner 36th Street, Uptown Bonifacio, Taguig, Metro Manila
• 営業:水〜土曜 22:00〜
• 入場料:水・木曜 1,000ペソ/金・土曜 1,500ペソ(ドリンク2杯付き)
• ドリンク:ビール約170ペソ〜、カクテル約350ペソ〜
• VIPテーブル:10,000〜20,000ペソ(6〜12名)
• ドレスコード:サンダル・短パン・帽子NG





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