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Massage Quang Thư ホーチミン

執筆者の写真: GENPASS 編集 八田
GENPASS 編集 八田
9月2日
読了時間: 4分



ホーチミンは暑い。

昼間はもちろん暑い。

夜になっても暑い。

バイクの排気と湿気が混ざった空気の中を歩いていると、

身体のどこかが常にベタついている。


こんな街では、冷たいビールを飲むか、マッサージへ逃げ込むしかない。

俺が向かったのは、10区エリアのLý Thường Kiệtにある、

「Massage Quang Thư」

現在も男性向けマッサージ店として営業している店で、今回はキャンペーンチケットを手に入れたこともあり行ってみた。



場所



今回選んだのはKing Full、100分。

訪問時の参考価格は、キャンペーンのチケット50万ドン+女性へのTIP130万ドン。

合計180万ドン。


問題はサービス表に並ぶ文字だった。

BJ。

HJ。

69。

WC。

King Full。

分かるものもある。

分からないものもある。


特にWC。


俺の知っているWCは、世界共通でトイレである。

だが180万ドン払って、

100分間トイレを見学するコースではないことだけは分かる。


受付ではiPadを見ながら女性を選んだ。

選んだのは、長い黒髪に丸い目をした小柄な女性。

写真では大人しそうだったが、実物は表情がよく変わる。

写真あるあるだ。


俺を見るなりニコッと笑った。

可愛い。

というか、

「写真より可愛いな。反則だろっ」


日本語で独り言を言った。

当然、通じていないと思っていた。

彼女が首を傾げる。

「Hansoku?」

「え?」

「Hansoku?」


なぜそこだけ拾った。


「反則。Bad……いや、違うな。Too good?」

説明すると、彼女は何となく理解したらしく笑った。

そして自分を指さす。

「Hansoku?」

「そう。反則」

嬉しそうだった。


嫌な予感がした…。


部屋では最初に身体を洗ってもらい、

そのあとベッドで普通のマッサージが始まった。

これが意外なほどちゃんとしている。

肩、背中、腰。

ツボへ入るたびに、思わず声が漏れる。


「うまっ」

反応なし。

「マッサージ上手いね」

「……?」

分からない。

試しに聞く。

「日本語分かる?」

「……?」

やっぱり分からない。


安心した。


ところが少しして、彼女の身体が近づき、

普通のマッサージから空気が変わる。

オイルに濡れた肌が背中へ触れる。

黒髪が肩へ落ちる。

距離が一気にゼロになる。

「いや、これ反則だわ」

その瞬間。


「Hansoku!」


反応した。

そこは分かるのか。

彼女は完全に「反則」という言葉を気に入っていた。


身体を寄せる。

「Hansoku?」

「反則」

少しやり方を変える。

「Hansoku?」

「それも反則」

嬉しそうに笑う。


完全に新しい日本語を覚えた子供である。


ただし教材が悪すぎる。

さらにサービスは濃くなっていく。

俺が思わず、

「ヤバい」

と言う。

彼女がこちらを見る。


「Yabai?」


また覚えた。

「それは覚えなくていい」

「……?」

そこは分からない。


「ヤバい」は覚える。

「覚えなくていい」は分からない。


彼女の日本語学習は、

俺にとって都合の悪い単語だけ吸収速度が異常だった。

そうやってみんな日本人は

現地の子にわけのわからない日本語を教えていくのだと思った。


途中、喉が渇いた。

「水ほしい」

「……?」

「水」

「……?」

「Water」

「Ah!Water!」


なんで「反則」が分かって「水」が分からないんだ!

みんな、こういう大事な言葉、教えていこうぜ!


水を飲んで戻ると、彼女が笑いながら聞いてきた。

「BJ?」

「うん」

「Japanese?」

「いや、それ英語」

「HJ?」

「それも英語」

彼女は納得していない。


さらに自信満々で、

「WC。Japanese?」


違う。

絶対に違う。


日本代表として訂正しなければならない。

だが俺は全裸だった。

外交交渉を行うには、威厳が足りなすぎる。


そして、ついに例のWCが来た。

この界隈でいうWCはトイレではなく、

肛門へのオーラルサービスを指す俗語だ。

知識としては理解していた。

知識としては…。


実際に始まると話は別だった。

予想していなかった刺激に身体が跳ねる。


「うおっ!!」


彼女が一度顔を上げた。

そしてニヤッと笑った。


「これも反則?」


日本語だった。

しかも文章になっていた。



「そこまで日本語できるの!?」

「……?」

できない。

長い日本語になると、またポカーンとしている。


おそらく俺が何度も言った、

「これ反則」

「それも反則」

を、その場で組み合わせただけだ。


100分のKing Fullで、彼女の日本語だけが

ピンポイントで進化している。


その後も、

俺が反応する。

「Hansoku?」

「反則」


また反応する。

「Yabai?」

「ヤバい」


さらに反応する。

「Hansoku!」


とうとう質問ではなくなっていた。


自己採点である。


本人が自信満々に反則判定を出し始めた。

最初に「反則」と言ったのは俺だった。

それなのに終盤には、俺が声を出すたび、

「Hansoku!」

と彼女が笑う。


もう審判まで彼女だった。


すべて終わり、ベッドで放心していると、

彼女が俺の顔を覗き込んだ。

「King Full、good?」

「Good。Very good」

俺がそう答えると、彼女は首を振った。

「No」

そして、満面の笑み。


「Hansoku?」


俺は少し考えてから答えた。


「……反則です」


満足そうに笑った。



店を出る。

結局、俺が覚えたベトナム夜遊び用語は、BJ、HJ、WC。

彼女が覚えた日本語は、


「ヤバい」と「反則」


100分間、国境を越えて互いの言葉を教え合った結果、

まともな語彙は一つも増えなかった。


Massage Quang Thư。


語学学校としては最低だった。


だが夜の実技授業としては

完全に反則だった。



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