top of page

ラオンダオホテル路地奥置屋 ビエンチャン

  • 執筆者の写真: GENPASS 編集 八田
    GENPASS 編集 八田
  • 6月30日
  • 読了時間: 5分



ラオス・ビエンチャンには、観光地の顔と、観光地ではない顔がある。

昼間はメコン川沿いを歩き、カフェでコーヒーを飲み

「ラオスってゆっくりしてていいな」みたいな顔ができる。


だが夜になると、人間の中にいる別の自分が起きてくる。

旅情ではない。

情緒でもない。

もっとしょうもない、パスポートに押せない種類のスタンプを欲しがる自分である。



場所:ホテル横の通り奥



ラオンダオホテル1の周辺。

ホテル横の道を奥へ入ると、空気が変わる。

表の通りにあったゆるさが、数メートル進んだだけで急に消える。

明かりの色も、音の響き方も、空気も違う。

観光のビエンチャンから、急に“裏口のビエンチャン”に切り替わる。


すると、するどい目つきの少年たちが数人寄ってくる。

「レディー?」「ガール?」

腕を引く。

距離が近い。

薄笑いしているが、空気は軽くない。


ここでまず、自分の中の旅慣れた男が死ぬ。

俺は海外夜遊びに詳しい顔をしていた。

だが、少年たちに囲まれた瞬間、

ただの迷い込んだ成人男性になった。


しかも、カメラや録音をしていないかチェックされる。

スマホ。ポケット。様子。

向こうも警戒している。

これはもう、普通の置屋ではない。


ドアを開けて「いらっしゃいませ」と言われる世界ではない。

こっちは客のつもりだが、向こうからすれば、まずはリスクである。

それぞれの少年が、それぞれの部屋を仕切っているようだった。

奥には女の子たちがいる。


勇気を振り絞って誘導されるがまま

部屋ごとに案内され、ショーアップのように見せられる。

案内されるときにも後ろに少年が立っている。


そして、せっかく来たからには女の子を見る。

若く見える子も多い。

いや、若すぎる気がする…。


よく見ると、かわいらしい子もいる。

愛想よくこっちを見て笑う子もいる。

逆にスマホをいじって、こちらに興味がなさそうな子もいる。

違う方向を見て興味なさそうな子もいる。


この時点で、俺の脳は完全にバグっていた。

普通、こういう場所では男は選ぶ側の顔をしたがる。

「どの子にしようかな」みたいな、最低な余裕を出そうとする。


でもここは違う。


選ぶというより、急かされる。

眺めるというより、決めさせられる。

その場の空気が「早くしろ」と言っている。

まるでスーパーの試食コーナーに来たはずなのに、

急に競り市場に放り込まれた感じだ。

しかも競られているのは女の子ではなく、俺の判断力である。

ただその中に、一人だけスマホから目を上げない大人っぽい子だけ

妙に印象に残った。


か、かわいい。


でも、こちらに興味がない。

本当にない。

俺という存在が、彼女の人生の通知欄に一切表示されていない。

その感じが、逆に刺さった。

しかも、敢えてこっちを見ていないようにも感じた。


なんだ、この違和感…。


こういうところで、愛想のある子なら分かる。

でもその子は違う。

スマホを見ている。

たまに顔を上げる。

そしてまたスマホに戻る。


その一連の動きが、俺の薄っぺらい自尊心に効いた。

俺は客である。

金を払う側である。

選ぶ側である。

だが、彼女のスマホ画面に負けた。


俺はこの時、人生で初めて思った。

海外の置屋で、スマホに嫉妬するとは。


少年が何か言う。

早く決めろ、という圧だ。

横の部屋も見せられる。

でも、何人見ても俺の頭にはさっきのスマホの子が残っている。


なんだこの感覚は。


しかし、よく考えたら当然である。

向こうからすれば、俺は急に現れた外国人の男だ。

しかも、財布と下心だけ持って路地奥に入ってきた謎の生物である。

そりゃスマホの方が安心だ。


俺はスマホに負けていた。


完全に、スマホに負けを認めると妙に冷静になった。

ピリついた路地裏。

警戒する少年たち。

早く決めろという圧。

スマホを見ていた女の子。

こちらに向かない視線。


ん!?


一瞬こっちを見て目が合った時、

かすかに首を横に振っていたような…

よく思い出すと「ここは危険」の合図をしていた!?

その全部が重なった瞬間、俺の中のスケベが急に正座した。


「今日は、帰った方がいいかもしれない」


遅い。

気づくのが遅い。

GENTPASSPORT的に言えば、面白い。

たしかにネタになる。

でも現地で感じる空気は、単純な笑いだけでは処理できない。

大きな事故を起こしてこなかった経験が、今日はやめろと言っている。


確かに女の子が幼すぎて違和感だし

少年たちが何を背負っているのかも分からない。

この場所がどういう仕組みで動いているのかも

外から来た俺には分からない。


ただ、ひとつだけ経験から感じたことがある。

スマホを見ていた女の子は、

そのことを一番正確に見抜いていた気がする。


俺は帰ることを選択した。




路地を戻る。

すごく後ろから視線を感じるが、こういう時ほど焦らない。

走ると追いかけてくる雰囲気がある。

表の通りに出る。

空気が少し軽くなる。

メコン川沿いのゆるいビエンチャンが戻ってくる。


でも、さっきの奥の空気は身体に残っている。

ラオスの夜は、のんびりしていると思っていた。


違った。


路地の奥では人の目と圧と沈黙が、

ものすごい速度でこちらを値踏みしてくる。


そして最後に気づいた。

ビエンチャンの路地奥で一番強かったのは、

少年たちの圧でも、置屋の空気でもない。


スマホから顔を上げないまま、

一瞬だけこちらを見たあの女の子だった。


俺は相手にされなかったのではない。

もしかすると、相手にしないことで助けられたのかもしれない。


ま、俺の勝手な

妄想かもだけど

ハナクソ (σ‐¯)ホジホジ ( ‥)ノ゙⌒・ ポイッ


無事に帰国した今、何だって言える。

でも、海外で危険を感じたら

撤退一択を忘れるべからず。



コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page