top of page
![心にもないこと [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_d3060c1ed1f0478088d432f383700717~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_d3060c1ed1f0478088d432f383700717~mv2.webp)
![心にもないこと [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_d3060c1ed1f0478088d432f383700717~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_d3060c1ed1f0478088d432f383700717~mv2.webp)
心にもないこと [最終話]
【最終話】 心にもないこと 最終日の朝は、雨の音で目が覚めた。 5分で止んだ。 この街の雨はいつもそうで、 降っている最中だけ世界が終わりそうな音を立てて、あとは何もなかった顔をする。 シーツはもう直してあった。 ベッドの右側だけ、少し形が残っていた。 それを見ないようにして、スーツケースを閉めた。 チェックアウトの前に、一度だけ8階へ上がった。 バーは当然閉まっている。 ガラス越しに川が見えた。 この4日間、この店では一杯も飲んでいない。 夜は毎晩、外に出ていたからだ。 100年前にこの建物を建てたのは、 この街の不動産を握っていた男だという話を、初日に佐伯から聞いた。 名前も聞いた。もう思い出せなかった。 出発は昼過ぎの便だった。 チェックアウトのあと、佐伯とリンが迎えに来て、 空港へ行く前にコーヒーを飲むことになった。 店は1区の古いビルの上階にあった。 入口は狭くて、看板もほとんど出ていない。 人ひとり分の階段を上がると、急に天井の高い部屋に出る。 窓が縦に長く、木の床がすり減っていて、壁ぎわに麻袋が積んである。 この国のコーヒーがどこか

GENPASS 編集 三好
3 日前
![心にもないこと [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_cab2352b94634087bc52fec61f61fa6d~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_cab2352b94634087bc52fec61f61fa6d~mv2.webp)
![心にもないこと [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_cab2352b94634087bc52fec61f61fa6d~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_cab2352b94634087bc52fec61f61fa6d~mv2.webp)
心にもないこと [第3話]
【第3話】 部屋を移る 3日目の商談で、大筋が見えた。 先方は2回に分けて値段を下げてきた。 2回目のほうが小さい。 これ以上は出ないという出し方だ。 東京が欲しがっている線には届かないが、届かないなりの理屈は立つ。 つまり三好の中では、結論が出つつあった。 それを口に出す場面は、この出張にもうない。 持ち帰って書く報告書の中にしかない。 夕方、佐伯がホテルまで送ってくれた。 「すみません、今日は本当に出られなくて。うちの本部、23時まで平気で押さえてくるんで」 「気にしないでください」 「店、予約しときました。リンに場所送ってあります」 エンジンをかけたまま、佐伯が笑った。 「あそこ、部屋がいっぱいあって面白いんですよ。三好さん、たぶん好きだと思います」 店はサイゴン川沿いにあった。 100年前に建った屋敷を、そのままバーにしている。 看板は小さい。 天井が高く、剥き出しの煉瓦に低い灯りが当たっている。 もとが誰かの家だから部屋がいくつもあって、奥へ行くほど狭く、暗くなる。 数年前まではネオンの派手な店だったのを全部剥がして、建物の顔に戻したの

GENPASS 編集 三好
4 日前
![心にもないこと [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_cb30ad632460416d9dca15562f402ad6~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_cb30ad632460416d9dca15562f402ad6~mv2.webp)
![心にもないこと [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_cb30ad632460416d9dca15562f402ad6~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_cb30ad632460416d9dca15562f402ad6~mv2.webp)
心にもないこと [第2話]
【第2話】 鯉のいる中庭 朝の高速は、前の日より30分よけいにかかった。 雨季の終わりの雨が夜のうちに降って、路面の水が引いていない。 原付が水を避けて車線の真ん中まで出てくる。 佐伯はクラクションを一度も鳴らさなかった。 「ここで鳴らすと、余計に寄ってくるんで」 ハンドルを持つ手の甲が焼けている。 この街で運転する人間の手だった。 会議室の空気は、前の日と同じ温度に冷やされていた。 先方も同じ4人。 三好は同じ椅子に座り、リンは同じ位置に座った。 午前の議題は納期だった。 数字が動かない。 昼前に、三好は前の日と同じことを、少し違う言い方で言った。 「この条件のままだと、来期の見積もりは他の国のものと並べます。並べたら、値段以外のところで勝ってもらうしかありません」 リンが訳した。 今度は、長かった。 三好の言葉より長いくらいだった。 削ったのではなく、足したのかもしれない。 だが少なくとも、落としてはいない。 それは相手の顔でわかった。 決裁者の男が資料を閉じた。 ページを繰る音が止まって、部屋が静かになった。 エアコンの音だけが残った。 1

GENPASS 編集 三好
5 日前
![心にもないこと [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_498b7f28ca6a494a9fe9d6df9dea4c38~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_498b7f28ca6a494a9fe9d6df9dea4c38~mv2.webp)
![心にもないこと [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_498b7f28ca6a494a9fe9d6df9dea4c38~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_498b7f28ca6a494a9fe9d6df9dea4c38~mv2.webp)
心にもないこと [第1話 / 全4話]
【第1話】 短い訳 9月のホーチミンは、空港の自動ドアが開いた瞬間に体温が変わる。 乾季にはまだ早い。 湿った空気が首の後ろに貼りつく。 排気と、どこかで揚げている油と、雨の降る前の匂い。 タンソンニャットから市内までは7キロしかないのに、夕方のこの時間は40分かかる。 「三好さん、こっちです」 到着ロビーで手を上げたのが佐伯だった。 半袖のシャツにショートカット、腕も首も日に焼けている。 東京にいたころは服にも化粧にも隙のない女だったのに、 いまは日焼け止めしか塗っていない顔をしていた。 喋る速度が2段階上がっている。 「車、路肩に停めてます。ここ、5分で警備が来るんで走ります」 佐伯はこの街で5年目になる。 三好が東京で会っていたころ、彼女は資料の余白まで揃える人間だった。 いまはタクシーの運転手と現地語で値段を詰めている。 人は置かれた場所の速度になる。 車が高速に乗ると、佐伯が窓を10センチ開けた。 「エアコン効きすぎて頭痛くなるんで」 入ってきた風が生温かった。 宿はドンコイ通りの南端にある。 1925年に建った建物で、建てたのはこの街

GENPASS 編集 三好
6 日前
![三番目の風 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_b3817bc990314b788fb17b480f903098~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_b3817bc990314b788fb17b480f903098~mv2.webp)
![三番目の風 [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_b3817bc990314b788fb17b480f903098~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_b3817bc990314b788fb17b480f903098~mv2.webp)
三番目の風 [最終話]
【最終話】 三番目の風 音がなくなって目が覚めた。 二日ぶりの静けさだった。カーテンが垂れている。 窓を開けると、空気が乾いていた。 昨日まで黄色く濁っていた空から砂が落ちて、 対岸の旧市街の輪郭が、剃刀で切ったように立っている。 海峡には白波がなかった。 石板のような青が横たわって、 その上を白いフェリーが一隻、ゆっくり進んでいた。 船が動いている。荷物も動く。 デニズは机にいた。 ベッドではなく、窓際の書き物机だ。 ホテルの便箋を何枚か広げて、ペンを持っていた。 三好が起きたことに気づいて、顔だけ上げた。 「寝てないのか」 「寝ました。少し」 便箋には、日付と数字と、短いトルコ語が並んでいた。 表のような形をしている。 「数えているのか」 「思い出しています」 彼女はペンを置いた。 「三好さん。私、たぶん全部持っています」 「全部」 「署名した書類の控えです。会社の分とは別に、自分のぶんを取ってあります。名古屋にいたとき、そうしろと教わったので」 「誰に」 「覚えていません。たぶん、工場の人です」 彼女は少し笑った。 「日本の人は、みんな控え

GENPASS 編集 三好
9月28日
![三番目の風 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_2b2ac1dc25d04472ae999a44abd6f236~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_2b2ac1dc25d04472ae999a44abd6f236~mv2.webp)
![三番目の風 [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_2b2ac1dc25d04472ae999a44abd6f236~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_2b2ac1dc25d04472ae999a44abd6f236~mv2.webp)
三番目の風 [第3話]
【第3話】 喉を焼く 彼女の言ったとおりになった。 朝、窓を開けた瞬間に音でわかった。 建物の角を削るような、低くて途切れない風の音だ。 カーテンが水平に持ち上がって、部屋の中の紙が一斉に床へ落ちた。 海峡は灰緑色で、白波が端から端まで立っている。 昨日まで数分おきに行き来していたフェリーが、一隻も見えなかった。 7時半に、桟橋まで歩いた。 柵が下りている。 渡し板に鎖が巻かれて、掲示板にトルコ語と英語で欠航が出ていた。 売店のプラスチックの椅子が倒れたまま、誰も直していない。 防水布が一定の間隔で鳴っている。 海の色より先に、空の色が異様だった。 低くて、黄色い。 砂を含んだ風がアフリカから上がってくると、この街の空はこうなるらしい。 船が止まれば、荷物も止まる。 今日は何も進まない。 今夜の約束だけが、昨日のまま残っている。 ホテルに戻ってメールを開いた。 一昨日、東京に投げた質問の返事が来ていた。 荷受人の履歴を全部出してほしい、と書いた件だ。 返信は一行だった。 触るな 三文字。 名前も、挨拶も、理由もない。 三好はその三文字をしばらく

GENPASS 編集 三好
9月27日
![三番目の風 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_317453c1edbf4164bab4cf7510bb08f1~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_317453c1edbf4164bab4cf7510bb08f1~mv2.webp)
![三番目の風 [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_317453c1edbf4164bab4cf7510bb08f1~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_317453c1edbf4164bab4cf7510bb08f1~mv2.webp)
三番目の風 [第2話]
【第2話】 七枚の表札 朝から風が変わっていた。 南西から重い空気が押してくる。 ロドス、とこの国の人間は呼ぶ風だ。 青が薄い黄色に濁って、遠くのモスクの輪郭が少しぼやけている。 桟橋では、フェリーが着岸のたびに舷側を軋ませていた。 11時に、三好はホテルを出た。 行き先は決めてあった。 昨夜、名刺の裏と船積みの写しで同じだった住所だ。 歩いて七、八分。 坂を下って、海の側へ回り込んだあたり。 19世紀の商館だった。 玄関の石がすり減って、真ん中がくぼんでいる。 エレベーターはない。 四階まで上がった。 扉は一つだった。 木の扉で、上半分が曇りガラスになっている。 その横に、真鍮の表札が縦に七枚並んでいた。 六枚は緑がかって曇っていて、文字の彫りに埃が溜まっている。 何年もそこにある表札の顔だ。 一枚だけが新しかった。 上から三番目。 角が立っていて、磨いたばかりのように光を返している。 ネジの頭にも傷がない。 三好はその一枚を読んだ。 昨夜、船積みの写しで見たのと同じ名前だった。 その二つ下、上から五番目に、デニズの会社のイスタンブール事務所の

GENPASS 編集 三好
9月26日
![三番目の風 [第1話 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_fbc0f724084a44d3824006469deac8be~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_fbc0f724084a44d3824006469deac8be~mv2.webp)
![三番目の風 [第1話 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_fbc0f724084a44d3824006469deac8be~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_fbc0f724084a44d3824006469deac8be~mv2.webp)
三番目の風 [第1話 全4話]
【第1話】 銀行通り 9月の終わりのイスタンブールは、昼はまだ25度を超えていた。 空港からの高速で、運転手が窓を10センチほど開けた。 入ってきた風が生ぬるい。 潮とディーゼルと、どこかで焼いている肉の匂いが混ざっていた。 ヨーロッパに降りたはずなのに、鼻が最初に拾ったのはアジアの匂いだった。 この街はそういう場所らしい。 三好が泊まるのは、カラキョイのバンカラル通り。 直訳すれば銀行通りだ。 19世紀の終わり、帝国の金はこの200メートルほどの坂に集まっていた。 その名残が、石の塊のまま両側に残っている。 両替屋の表示が、前に来たときより一段悪くなっていた。 この国の金は毎月少しずつ軽くなる。 ホテルは坂の下から五軒目。 1863年に建った銀行の建物で、そのまま宿になっている。 ロビーに入って、三好は少し笑った。 金庫があった。 開いたままの、扉の厚みが30センチ近い鉄の塊。 その周りをガラスが半円に囲んで、カウンターになっている。 金を仕舞うための部屋を、金を使うための部屋に変えたわけだ。 改修したのはこの国の建築家で、費用は聞いて呆れる額

GENPASS 編集 三好
9月25日
![今、話したい誰かがいる [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_e9f19f6fa12c44e6974cad045ec808eb~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_e9f19f6fa12c44e6974cad045ec808eb~mv2.webp)
![今、話したい誰かがいる [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_e9f19f6fa12c44e6974cad045ec808eb~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_e9f19f6fa12c44e6974cad045ec808eb~mv2.webp)
今、話したい誰かがいる [最終話]
【最終話】 今、話したい誰かがいる 翌朝、目が覚めるとニティヤは窓の前にいた。 カメラを持っていた。 「昨夜、撮っておきたかったので」 と彼女は言った。 朝靄の中に、インド洋が広がっていた。 光はまだ柔らかく、水面が白く光っていた。 「飛行機は何時ですか」 「午後3時です」 「なら、まだ時間がある」 三好はニティヤが撮った方向を見た。 昨夜と同じ海が、そこにあった。 今日でコロンボを出る。 この窓も、この光も、今日で終わりだった。 帰れば次の案件が待っている。 それでもコロンボのことは、しばらく頭から離れない気がした。 午前10時、Wijesekara & Sons Commoditiesへ向かった。 フォート地区のビルの4階。 エレベーターを降りると、 古い木製の受付カウンターと、壁に貼られた農園の地図が目に入った。 スリランカ南部の農園が点在した地図で、 手書きの文字がいくつも書き込まれていた。 長い取引の積み重ねが、その紙に滲んでいた。 受付に来意を告げると、しばらくして年配の男が現れた。 七十近い、薄いグレーのシャツを着た男だった。 長く

GENPASS 編集 三好
9月21日
![今、話したい誰かがいる [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_edc7782df8e141f8b2a14731aec6fa82~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_edc7782df8e141f8b2a14731aec6fa82~mv2.webp)
![今、話したい誰かがいる [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_edc7782df8e141f8b2a14731aec6fa82~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_edc7782df8e141f8b2a14731aec6fa82~mv2.webp)
今、話したい誰かがいる [第3話]
【第3話】 消えた理由 翌朝、三好はニティヤに電話をかけた。 昨夜Eskobarを出てから、ほとんど眠れなかった。 「コロンボ担当の出張記録です。2004年の分に」と言って、そこで止まった。 言えなかったのは、備考欄の続きだ。 現地にて消息不明。行方不明として処理。 「会えますか」と三好は言った。 「はい」とニティヤは答えた。 正午過ぎ、Galle Face Hotelのテラスで落ち合った。 いつもカメラバッグを持ち歩くニティヤが、今日は手ぶらだった。 インド洋が真正面にある。 波が防波堤を越えるたびに、白い飛沫が風に乗った。 「昨夜の続きです」 と三好は言った。 「記録の話」 ニティヤは黙ってうなずいた。 表情を作っていなかった。 ただ、聞く準備ができている顔だった。 「吉田健一の備考欄に書いてあったのは——現地にて消息不明。2005年5月、行方不明として処理。それ以降、会社の記録は動いていない」 ニティヤはしばらく何も言わなかった。 目が海の方へ動いた。それだけだった。 「処理、というのは」 「以降、会社は探していない。少なくとも、記録にはそ

GENPASS 編集 三好
9月20日
![今、話したい誰かがいる [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.webp)
![今、話したい誰かがいる [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.webp)
今、話したい誰かがいる [第2話]
【第2話】 名前を知っている 朝7時、Galle Face Hotelのロビーに三好はいた。 ニティヤが昨夜言った言葉が、眠れない時間中ずっと引っかかっていた。 「その会社、以前にもコロンボに来ていませんか。たとえば、20年くらい前に」。 引き継ぎ書には取引先の情報しか書いていなかったが、 社内のデータベースには担当者の記録も残っているはずだ。 ノートパソコンを開き、社内データベースにログインした。 コロンボ担当の出張記録を新しい順に遡った。 ニティヤが昨夜「20年くらい前」と言っていた。 2004年から2006年あたりを開いた。 その時期のコロンボ出張記録は、一人だけだった。 吉田健一。 2004年11月〜12月、コロンボ出張。 備考:現地にて消息不明。2005年5月、行方不明として処理。 以降、しばらく担当者の記録に空白があった。 三好は画面を閉じた。 そのままニティヤにメッセージを送った。 「もう少し話を聞かせてもらえないか」 インド洋の朝は早い。 ロビーの木製ファンが回り続けていた。 返信は昼前に届いた。 「Gallery Café、知っ

GENPASS 編集 三好
9月19日
![今、話したい誰かがいる [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.webp)
![今、話したい誰かがいる [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.webp)
今、話したい誰かがいる [第1話 / 全4話]
【第1話】 弾痕の街で コロンボに来るのは初めてだった。 成田を出て約10時間。 乗り継ぎのシンガポールで2時間待ち、バンダラナイケ国際空港に降り立ったのは現地時間の夕方だった。 蒸し暑さが体に纏わりついた。 東南アジアとは少し違う。 何か古いものが空気に混じっているような感触がした。 チェックインしたのはGalle Face Hotel。 1864年創業、コロンボ最古のホテルだ。 白いコロニアル建築がインド洋に面して立っていた。 ロビーは高い天井に木製ファンが回り、床はテラゾー張り。 スーツケースを引いて中に入ると、時代が少しだけ止まったような空気があった。 窓の外にインド洋が広がっていた。 水平線まで、何もなかった。 翌朝、商談に向かった。 取引先はフォート地区にある天然ゴム商社、Wijesekara & Sons Commodities。 創業60年の老舗で、スリランカ南部の農園から原料を集めて日本向けに輸出している。 三好の会社とは20年以上の取引がある、と引き継ぎ書にあった。 数量と価格は概ね合意に近い。 細部の詰めは次回でいい。 商談

GENPASS 編集 三好
9月18日


タイ・パッポン通り「キングスキャッスル」
※ 本記事には広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。 探検隊が徳川埋蔵金を探すテレビに 子どものころ夢中になった。 結局、何も出てこず「インチキか。」と落胆しつつ、 将来は俺がお宝を掘り出すぞ、と思ったものだった。 タイにも同じような伝説がある。 バンコクのパッポン通り。 ピンクネオンが照らす路地にバーが並び、Tバックの娘が歩く。 そこを掘り出し物の娘を求めて進む俺は、夜の探検隊長だ。 埋蔵金でよくある話と同じで、 俺はここでフェイクをつかんだ経験もある。 ある娘の胸は、寝ても形が変わらず、ごりッとした感触だった。 また、ある娘の股間には、 まだ金の延べ棒がついていてボールだけ取り外し済みだった。 その店は改造娘で有名らしい。 30人程いたので、その娘らから外したボールで ドラゴンボールの神龍を8回は呼び出せる計算だ。 ゴーゴーバーは大音量BGMのせいで、 “男の娘”の裏声に気づきにくい。 だから俺は信用が置ける老舗の「キングスキャッスル」に入

GENPASS 匿名協力記者
9月16日
![偶然を言い訳にして [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_2dfad731f3de4c2e87d76b4e9d14b1ec~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_2dfad731f3de4c2e87d76b4e9d14b1ec~mv2.webp)
![偶然を言い訳にして [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_2dfad731f3de4c2e87d76b4e9d14b1ec~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_2dfad731f3de4c2e87d76b4e9d14b1ec~mv2.webp)
偶然を言い訳にして [最終話]
【最終話】 偶然を言い訳にして 三好が先に目を覚ました。 カーテンの隙間から、白い光が入ってきた。 プノンペンの朝は早い。 陽菜はまだ眠っていた。 三好はしばらく、天井を見た。 昨夜のことを振り返るつもりはなかった。 今日やることが、ある。 シャワーを浴び、スーツを着た。 陽菜が目を覚ましたのは、 三好がコーヒーを飲み終えた頃だった。 陽菜は洗面所へ行き、少しして戻ってきた。 顔を洗っただけで、化粧道具は何もなかった。 「久しぶりに、ぐっすり眠れました」 と陽菜は言った。 「安心したからかもしれないです」 「本番はこれからだ」 「分かってます」 「行けるか?」 陽菜はうなずいた。 昨夜より顔の色が違った。 2人はホテルを出て、大通りを避けながら路地を選んで歩いた。 BKK1の朝の空気は涼しかった。 三好が前に立ち、交差点のたびに角から先を覗いてから進んだ。 追ってくる気配はなかった。 陽菜は三好の後ろを、黙ってついてきた。 昨夜と同じ人間とは思えないほど、足元が落ち着いていた。 大使館まであと数ブロック。 路地が途切れ、ノロドム通りの大通りに出る

GENPASS 編集 三好
9月14日
![偶然を言い訳にして [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_559e5a2274fa4a15942f896fba73ae3c~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_559e5a2274fa4a15942f896fba73ae3c~mv2.webp)
![偶然を言い訳にして [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_559e5a2274fa4a15942f896fba73ae3c~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_559e5a2274fa4a15942f896fba73ae3c~mv2.webp)
偶然を言い訳にして [第3話]
【第3話】 ストリート57 商談は16時過ぎに終わった。 三好はオフィスを出て、まっすぐあの路地へ向かった。 食堂の店主は、仕込み中だった。 三好はスマホの翻訳アプリを開き、文字を打った。 「明日の夜19時過ぎ、この店によく来る男2人と女の子1人の3人組が来ます。その女の子、彼らに監禁されていて見張られています。食事が終わりかけたころ、女の子がトイレのふりをして立ち上がります。そのとき、裏口から外に出してやってください」 画面を差し出すと、店主は眼鏡をかけ直して読んだ。 しばらく間があった。 三好は店主の顔を見た。 店主は三好を見た。 それから、静かにうなずいた。 「アリガトウゴザイマス」と言うと、店主が同じ言葉を返した。 それから「タスケテモラッタカラ」と続けた。 発音は、あの夜と変わらなかった。 ホテルに戻り、在カンボジア日本大使館の場所を地図で確認した。 BKK1からノロドム通りを南へ、徒歩で15分ほど。 タクシーは使わない。 路地を使って近くまで隠れながら移動する。 最後だけ、大通りに出て丸見えになる。 そこは走り抜けるしかない。 明日の

GENPASS 編集 三好
9月13日
![偶然を言い訳にして [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_f3c4058d9bc44a95824e21ecbcae77c6~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_f3c4058d9bc44a95824e21ecbcae77c6~mv2.webp)
![偶然を言い訳にして [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_f3c4058d9bc44a95824e21ecbcae77c6~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_f3c4058d9bc44a95824e21ecbcae77c6~mv2.webp)
偶然を言い訳にして [第2話]
【第2話】 渡された計画 翌朝、三好は7時に目が覚めた。 引き出しの中の紙のことを、すぐに思い出した。 シャワーを浴び、朝食をとり、午前中の商談に向かった。 アジェンダは仕様書の細部確認と、今後のスケジュール調整だった。 三好は資料に集中した。 仕事は、仕事として片付けなければならない。 商談は、午後3時に終わった。 先方との詳細条件の詰めは順調で、数量・価格ともにほぼ合意に近い状態になった。 次回は契約書の草案を持参することになるだろう。 三好はオフィスを出て、タクシーを拾った。 ホテルへ戻りながら、スマホで時計を確認した。 15時40分。あと3時間以上ある。 ホテルに戻り、シャワーを浴び、着替えた。 デスクの上に、昨夜書いたメモ用紙を折りたたんだものがあった。 ROSEWOOD PHNOM PENH と書いたものだ。 胸のポケットに入れた。 19時ちょうどに、ホテルを出た。 夕暮れのBKK1は、朝や昼と空気が違った。 バイクの数が増え、路上の屋台が灯りをつけ始め、 どこからともなく香草のにおいが漂ってきた。 三好は昨日と同じ路地に入り、...

GENPASS 編集 三好
9月12日
![偶然を言い訳にして [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_18fb8cc64b674ab2969f7ecb21b9cc9f~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_18fb8cc64b674ab2969f7ecb21b9cc9f~mv2.webp)
![偶然を言い訳にして [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_18fb8cc64b674ab2969f7ecb21b9cc9f~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_18fb8cc64b674ab2969f7ecb21b9cc9f~mv2.webp)
偶然を言い訳にして [第1話 / 全4話]
【第1話】 見知らぬ手のかたち プノンペンは2度目だった。 3年前に同じ目的で来たとき、商談がまとまらなかった。 今回は先方が供給体制を整えたと聞いており、前回よりも条件が揃っている。 空港を出ると、湿った熱気が体にまとわりついた。 雨季のカンボジアはこういうものだと分かっていても、東京のそれとは質が違う。 光がきつく、空気が重い。 タクシーを拾い、助手席に荷物を乗せた。 渋滞の中を、ドライバーが慣れた手つきでトゥクトゥクをかわしながら走った。 道路の両側には、バイクが際限なく流れていた。 何台もが同時にクラクションを鳴らし、それでも不思議と誰もぶつからなかった。 今回のプノンペン出張は、タイの工場に供給する天然ゴム原料の調達先開拓が目的だった。 カンボジア南部に農園を持つ地場農業法人との商談で、初日の打ち合わせは好感触だった。 先方の代表は流暢な英語を話し、供給量についても前向きな回答を出した。 次回以降の詳細協議に進める見通しが立った。 ホテルはBKK1に近いモニヴォン大通り沿いのRosewood Phnom Penh にとった。...

GENPASS 編集 三好
9月11日
![何度目の青空か? [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4541099675f94b9395b251b2980d8068~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_4541099675f94b9395b251b2980d8068~mv2.webp)
![何度目の青空か? [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_4541099675f94b9395b251b2980d8068~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_4541099675f94b9395b251b2980d8068~mv2.webp)
何度目の青空か? [最終話]
【最終話】 何度目の青空か? 翌朝、ホテルを出て路地を歩いていたとき、スマホの画面に目を落とした。 一歩分、歩みが遅れた。 直後、数歩前の石畳に花鉢が砕けた。 音が先だった。 陶器が石畳に叩きつけられる、鈍い音。 立ち止まって見た。 破片と土が靴先まで散っていた。 頭上を見上げた。 三階の手すりに、空の鉢台だけが残っていた。 人影はなかった。 歩みを緩めていなければ、頭上に落ちていた位置だった。 ゆっくりとしゃがんで、破片の一つを拾った。 素焼きの欠片。 風で落ちる角度ではなかった。 三好は破片を石畳に戻し、上着のホコリを払った。 命を狙われた、ということだ。 今日エドゥアルドに会いに行く理由が一つ増えた。 タクシーを拾った。 エドゥアルド・田中のオフィスは、イタイン・ビビ地区の高層ビルの上階にあった。 会議室に通され、まず条件の話を続けた。 サプライチェーンの詳細。 納期と仕様の確認。数字の精査。 エドゥアルドは終始、手慣れていた。 話が速く、論点が明確で、無駄な言葉がなかった。 ビジネスマンとして、いい相手だった。 それは最初から変わっていな

GENPASS 編集 三好
9月7日
![何度目の青空か? [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0b5894685f0d424aa6dbf862b73e5440~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_0b5894685f0d424aa6dbf862b73e5440~mv2.webp)
![何度目の青空か? [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_0b5894685f0d424aa6dbf862b73e5440~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_0b5894685f0d424aa6dbf862b73e5440~mv2.webp)
何度目の青空か? [第3話]
【第3話】 わからない 渡辺から連絡があったのは、翌朝のことだった。 窓の外には青空が広がっていた。 「続きを話す。今日また会えるか」—— 日本語のメッセージが短く届いた。 三好はルイーザに電話した。 「渡辺さんから連絡があった。今日また会えるか、と」。 脅迫状のことは、まだ言わなかった。 「行きます」と彼女はすぐに答えた。 昼過ぎに、ルイーザと合流してリベルダーデへ向かった。 地下鉄を降りて路地に入ったとき、首の後ろに何かを感じた。 視線だとすぐにわかった。 さりげなく後ろを確認すると、 赤いポロシャツを着た男が、同じ距離を保ったまま歩いていた。 「まっすぐ向いたまま聞いてください」 と三好はルイーザに小声で言った。 「今、尾行されています」 ルイーザが振り返りかけた。 「見ちゃダメです」 と三好はすぐに言った。 「え、本当ですか」 「次の角を曲がったら全速力で走ってください」 角が見えた。 二人で曲がった瞬間、三好は走り出した。 ルイーザも遅れずについてきた。 路地をもう一本曲がって、古い建物の陰に体を押し込んだ。 ルイーザが隣に滑り込んだ。

GENPASS 編集 三好
9月6日
![何度目の青空か? [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_13399515ef0a475fb32e84fbe2ae3e2e~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_13399515ef0a475fb32e84fbe2ae3e2e~mv2.webp)
![何度目の青空か? [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_13399515ef0a475fb32e84fbe2ae3e2e~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_13399515ef0a475fb32e84fbe2ae3e2e~mv2.webp)
何度目の青空か? [第2話]
【第2話】 逃げていない 翌朝、目が覚めると、窓の外には青空が広がっていた。 サンパウロの空はまた、どこまでも青かった。 「田中は嘘をついた。高橋さんは何も悪いことをしていなかった」 老人の言葉を英語に直して伝えると、ルイーザは黙った。 声が揺れなかった。 表情が、少しだけ変わった。 ほんの一瞬、何か大切なものを確かめる顔をした。 それからまた、静かな顔に戻った。 「高橋は、私の祖父の名前です」 「でも、高橋という苗字は——」 と三好は言いかけた。 「渡辺義雄という名前が、祖母の手紙にありました」 とルイーザは続けた。 「だから来た。その人に会いに来た」 立ち去るつもりはないようだった。 老人に話を聞かせてほしいと言った。三好を見た。 「通訳してもらえますか」と続けた。 通訳。三好はその言葉を一瞬考えた。 明日も商談があった。夜は早く寝るつもりだった。 今夜のことはすでに「仕事以外」の領域に入りかけていた。 それでも、断ってはいけないような空気があった。 ルイーザは答えを待っていた。 渡辺老人は最初、頑なだった。 ルイーザがポルトガル語で話しかけ

GENPASS 編集 三好
9月5日
bottom of page
