Hangout Complex – Chiang Mai –
- GENPASS 編集 八田

- 3月11日
- 読了時間: 5分
更新日:3月11日

チェンマイの夜は静かだ。少なくとも、バンコクのようにネオンがギラギラしているわけでもないし、パタヤみたいに通り全体が欲望で出来ているわけでもない。
どちらかと言えば、落ち着いた街だ。だから俺は思っていた。
「チェンマイは夜遊びする街じゃない」のかなーと。
だがそれは、Hangout Complexを知らなかっただけだった。
場所
18 Sodsueksa Rd, Tambon Chang Phueak, Mueang Chiang Mai District, Chiang Mai 50300 タイ
Grabの運転手が言った。「ここ、有名な店だよ。」車が止まった先にあったのは、少し派手なネオンの建物。Hangout Complex。
外から見ると、LIVEの歌も聞こえるので完全にクラブかゴーゴーバーの雰囲気だ。俺は思った。
「なるほど、こういうタイプの店か。」
チェンマイにもあるんだな。そう思いながら中に入った。
だが、入ってすぐ違和感に気づく。あれ?ゴーゴーじゃない。クラブでもない。中はカラオケバーのような作りで、ソファ席が並び、テーブルには酒。
歌を歌っているのは、隣の部屋みたいなスペースだった。そっちでもいいのかなと思っていたが、スタッフに促されるように席に座る。
飲み物や食べ物がバンコクなどに比べると安い。Theローカルといったような感じで、働いている女の子も若く、英語も片言のような子が多い。
胸には番号のようなものも付いている。そして。女の子が横に座る。なるほど。そういうタイプの店なのか?
女の子はタイ人。モデル系というより、北タイらしい可愛い顔立ち。そして、子どもかなと思うくらい若い。ニコニコしていて、感じもいい。酒も進む。
そして当然、その流れだと自然に会話が始まるよね。

女の子に「Where are you from?」と聞かれたので答える。
俺「Japan」
お互い、おぼつかない英語での会話が始まる。
女の子「Oh!Japan!」ここまではいい。問題はここからだった。
女の子「What do you do?」
仕事のことを聞かれたのか?俺は少し考えて答える。
「I work.」
女の子「……」
一瞬、静寂が訪れた。あれ?何か間違えた?と思ったが、まあいい。「飲み英語」なんてそんなものだろ。
女の子「You handsome.」
俺「No no no no.」
女の子「Why?」
俺「I am normal Japanese.(普通の日本人です。)」
再び静寂。ん、何か間違えたか!?と少し緊張が走る。
だが。次の瞬間。女の子がクスクス笑い始めた。あれ?なんだろうこの感じ。悪くないんじゃないの。
むしろ、いい。笑顔がさらにかわいい。俺は思った。これは、いける流れなんじゃないか?
女の子「You like Chiang Mai?」
俺「Yes. Very hot.」
女の子「Yeah…」
女の子、またクスクス笑う。お!ウケてね?
ここで、さっき注文したフライドポテトがテーブルに届く。
そして、女の子も楽しむように会話が続く。
女の子「Your fly is down, because it’s very hot?(とても暑いからズボンのチャックを下ろしているの?)」
俺「Fly…yes! Fly is very hot! But delicious!(フライ…うん!社会の窓ってとても熱いよね!でも美味しいよね!)」
女の子「Oh…」
俺「I like fly.(私は社会の窓が好き)」
女の子「You are crazy!」
そしてまた、笑う。
俺、この辺から思い始めた。あれ?なんか、やたらウケてるな。
酒も進む。会話をするたび、女の子は笑っている。しかも少し遠慮がちに下を向いてクスクスと。
そのうつむきがちな笑顔で、くすくすっと笑う感じの謙虚さがいい。
そして、距離も近い。余裕が出てきた俺は、あることに気づく。
横のボックス席の欧米人。普通に女の子とイチャイチャしている。話も盛り上がっている。
そして、なんと、そのまま二人で店を出て行った。なーるほど、なるほど。そういう店か、とニヤリ。
俺は女の子を見る。女の子はまだ遠慮がちにクスクス笑っている。
これはもう、間違いない。俺が日本人だからと思って、意識して大和撫子のように謙虚に笑って俺にアピールしている。そうに違いない、うん。
完全に雰囲気は出来ている。俺は思った。「今日は勝ったな」。
だが。酒も進んだので、一度トイレに行った。気持ちの良い夜で、酒も進んだこともあり、尿意も増す。
そして、小便器に立った瞬間……
俺は 全てを 理解したんだ…。
チャックが全開だった…
が――――――ん!!!
なるほど…。そういうことか…。女の子が笑っていた理由。
俺の会話じゃなかった。今思えば視線は俺の下を見ていた気がする、いや絶対そうだ。
ん!? あれ、よくよく考えてみたら、あの女の子、「Fly」「Fly」って言っていたな。
そういえば「Fly」って、確かズボンのチャック、つまり社会の窓のこと。
俺、完全にさっき出てきたフライドポテトのことだと思っていた…。
チ―――――ン。
はい、終了で―――す。
女の子が、ズボンのチャックが開いていることを、「Fly」の言葉を使って、遠回しに教えてくれていたことに、俺、今気づくの巻。
最悪だぁぁぁ!
どんな顔して席に
戻ればいいんだぁぁぁぁぁ!!!
「笑・わ・せ・て」いたんじゃなくて
「笑・わ・れ・て」いたんだ!!!
Hangout Complex。女の子がめちゃ可愛いし、横に座るし、酒も進む。そして、ちゃんと笑ってくれる。ただし。理由はちゃんと確認しろ。
Hangout Complexは、男を試す店だった。そして俺は、そんな試験会場に大事なところからパンツ丸出しで来てしまっていた。
しかも、遠回しで教えようとしてくれたのに、勘違いして恥の上塗り…。
チェンマイの夜は俺に優しい。
誰もミスを指摘しないでくれる。
ただただ、静かに笑うだけだ。
それが俺にとってのHangout Complex。





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