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Maria Massage バンコク

  • 執筆者の写真: GENPASS 編集 八田
    GENPASS 編集 八田
  • 7月14日
  • 読了時間: 5分



バンコクの夜は、人間の金銭感覚を少しだけ壊す。

昼間なら迷う金額も、ネオンと湿気とタクシーの排気ガスに包まれると

なぜか「まあ旅だし」に変換される。


そしてその“まあ旅だし”を、最も危険な形で試してくる場所がある。

ラチャダー方面にある高級MP、Maria Entertainment。

Maria Massage Bangkokとも呼ばれる

ソープ系マッサージパーラーである。


Mariaは、バンコクの高級マッサージパーラーとして昔から名前が出てくる店。

Fishbowlで女の子を選ぶ通常ルートに加えて、Sideline Loungeという上位ルートもある。


最近は価格がじわじわ上がっていて、日本人客が減り、中国人客が増えてきている。

つまり、ここはもう日本人旅行者が「ちょっと行ってみるか」で軽く入る店ではない。

各国の財布と欲望がラチャダーで殴り合う、夜の国際市場である。



場所



俺は最初、Fishbowlで済ませるつもりだった。

Fishbowl。

女の子が並び、番号で選ぶ、タイMPではおなじみのシステム。

いわば欲望のショーケースである。

いわゆる金魚鉢だね。


ここまでは、まだ分かる。

予算もなんとか理性の範囲内だ。

いや、範囲内というより、

理性がギリギリ片足で踏ん張っている状態ではあるが、まだ戻れる。


しかし、問題はSidelineだった。

「見るだけならいいか」

この考えが、まず終わっている。


夜遊びで“見るだけ”という言葉ほど信用できないものはない。

ダイエット中の「一口だけ」と同じである。

一口で終わった人類を、俺は見たことがない。


ママ的なスタッフに案内され、Sidelineの子を見せられる。

その瞬間、空気が変わる。

Fishbowlも十分かわいい。


でもSidelineは、何かが違った。

顔やスタイルだけの話ではない。

立ち方、目線、笑い方

こっちの迷いを分かったうえで逃がさない感じ。


その子は、こちらの予算が揺れていることをたぶん分かっている。

にこっと笑う。

その笑顔が「無理しなくていいよ」に見える。

同時に「でも来たいんでしょ?」にも見える。


やめろっ

やめてくれ!!


最近のタイバーツの換金レートの上がり方ハンパねーぞ。

そりゃ、タイから日本人減るわ!


その二択の間に男を置くな!

俺の財布は今、吊り橋の上にいる。

価格は安くない。

というか、普通に高い。

Sidelineの上位クラスになると、かなりいい金額になる。


日本円に換算した瞬間、

俺の中の家計簿アプリが白目をむいた。


♬でも、出会っちゃったんだよなー

~「君ばかり 乃木坂46」より~


これが高級店の怖さである。


最初から高いことではない。

“上”を見せられた後に、“下”へ戻る勇気が必要になることだ。

俺には、その勇気がなかった。



個室へ向かう。

さっきまでのロビーのざわつきが、扉の向こうでふっと消える。

Fishbowlも、Sidelineも、料金表も、ママの営業も、全部一度置いていかれる。

残ったのは、俺と彼女だけだった。


ここでようやく分かる。

高い理由は、顔やスタイルだけじゃない。

距離の詰め方。

声の落とし方。

目線を外すタイミング。

エロさを醸し出す舌の動き。


こちらが少し背伸びして来ていることを分かったうえで

笑わず、急がず、ちゃんと受け止める余裕。


その余裕に値段がついている。


最初は、いわゆるソープ系MPらしい流れだった。

シャワー。泡。距離の近さ。

ドキドキが止まらない。

文字にすると簡単だが、実際に個室で起きると

こっちの脳はそんなに冷静ではいられない。


彼女は急がない。


こちらの反応を見ながら、少しずつ距離を詰めてくる。

ここで俺はようやく理解した。


MariaのSidelineで高いのは、顔やスタイルだけではない。

もちろん、それも大事だ。

大事に決まっている。

男はそんなに高尚な生き物ではない。


でも、それだけではない。

近づき方がうまい。

触れ方がうまい。

香水じゃない心地よい香りがする。

いつの間にかにゼロ距離になっている。

こちらの緊張をほどくタイミングがうまい。


そして、何より焦らない。


こっちは高い金を払ったから、

どうしても“元を取ろう”としてしまう。

一瞬一瞬を見逃すまいとする。

変に集中する。

脳内で「この時間を無駄にするな」「ちゃんと味わえ」「価格に見合う体験を回収しろ」と、貧乏くさい取締役会が始まる。


だが彼女は、その会議室ごと、ゆっくり溶かしてくる。

焦らない。

安売りしない。

妖艶な雰囲気を出す。

触ってほしいところを心地よく触ってくる。

先っぽがその心地よさにマヒしてくるのが分かる。

こちらが勝手に高めた期待値を、さらっと受け止める。

そして、こちらの緊張がほどける速度を見ながら、少しずつペースを握ってくる。


あ、これは高い。


料金表の数字ではなく、空気の使い方が高い。

高級店で一番してはいけないのは、コスパを考えることだ。

コスパを考えた瞬間、こちらの心が安物になる。


それなのに俺は、最初ずっとコスパを考えていた。

最低である。

Mariaの個室にまで、割引クーポンみたいな精神を持ち込んでいた。


彼女はそんな俺を責めない。

ただ、うまくほどいてくる。

声が近い。

体温が近い。

密接した肌が気持ちいい。

舐め方も心地よい感じに雑に舐めてくる。

照明が余計なものを消していく。

耐え切れず、俺の邪悪なものを全部出し切ってフィニッシュ。



さっきまで「高かったな」と思っていた脳が、

だんだん「まあ、これは……」と言い訳を始める。

そして最後には、完全に負ける。


何に負けたのか分からない。

女の子か。

空気か。

Sidelineという言葉か。

それとも、“見るだけ”で済むと思っていた自分の甘さか。


たぶん全部である。



サービスが終わった後、俺は妙に静かだった。

満足感はある。

悔しさもある。

財布の中に、確実な軽量化を感じる…。


レビューで「高い」「価格に見合うかは人による」「サービスに差がある」みたいな声が出るのも分かる。

高級店は、値段が上がるほど期待値も一緒に太る。

ちょっとした粗も気になる。

ちょっとした良さも、逆に忘れられなくなる。


俺もたぶん、店を冷静に評価するつもりだった。

でも個室を出る頃には、評価する側ではなかった。

完全に、基準を壊された側だった。



Maria Massage

Fishbowlで済ませるつもりだった。

だがSidelineを見た。

そして戻れなかった。


結果、財布は痩せた。

だが、俺の夜の基準値だけはしっかり太った。


次から普通のMPに行っても、たぶん思ってしまう。


「あの時のMariaは……」と。


これは恋ではない。


生活習慣病である。



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