STARKING Massage ホーチミン
- GENPASS 編集 八田

- 6月16日
- 読了時間: 5分

ホーチミン1区にある韓国系マッサージ店、STARKING Massage。
韓国人経営で、韓国人のお客さんが多いらしい。
メニューはハングル中心。ただし日本語メニューもある。
料金はコース別で、Aコース(30分)1,000,000VND、Bコース(60分)1,500,000VND、Cコース(90分)2,000,000VNDあたり。
女の子はベトナム人セラピストっぽい。
ここまで事前に調べた俺は思った。
勝った。
今日はもう勝っている。
なぜなら俺は、ちゃんと事前予約をしているからだ。
旅先でフラッと突撃して、受付でモタモタして、よく分からないまま高いコースを選び、あとから「あれ、今の何だった?」とホテルの天井を見つめる時代は終わった。
今日の俺は違う。
予約済み。料金も把握済み。場所も確認済み。
ホーチミンの夜を、Googleカレンダーみたいに管理する男である。
場所
こういう店は事前予約が大事。
待ち時間も少なくなるし、流れもスムーズ。現地で無駄に焦らなくていい。
つまり、スマートに遊べる。
そう。
この時点で俺は完全に調子に乗っていた。
STARKINGに着くと、たしかに空気が韓国系だった。
ハングルの気配。韓国人客っぽい人たち。受付のテンポもどこか無駄がない。
そこに日本語メニューが出てくる。
助かる。
母国語。
異国の夜に急に差し込む、日本語という名の救命ボート。
俺は落ち着いていた。
事前に調べている。予約もしている。料金も分かっている。
A、B、C。大丈夫。想定内。
今日はもう、現地で狼狽えるダサい日本人ではない。
むしろ少し余裕すらあった。
「なるほどね、こういう流れね」みたいな顔をしていた。
たぶん、顔だけならホーチミン歴8年の駐在員だった。
そして、部屋で待っていると女の子が入ってきた。
可愛らしい若い子だった。
お!ラッキー!
だが問題は、サービスが始まってからだった。
速い…。
思ったより、動きが速い!
受付が速いとか、案内が速いとか、そういうレベルではない。
サービスそのものの流れに無駄がない。
女の子の動きがテキパキしている。
しかも、うまい!
速いだけなら、まだ脳が追いつける。
だが速くてうまいはダメだ。
それはもう、情報量が多すぎる。
俺の脳はまだ、
「お、始まったな。なるほど、こういう感じね」
と余裕ぶって状況を整理していた。
でも体は違った。
体はもう、勝手に現地適応していた。
いい反応している。
こっちが理解する前に、体だけが「はい、了解しました」と返事をしている。
理性は議事録を取っている。
体はすでに決裁印を押しかけている。
おかしい…。
俺は今日、スマートに遊ぶために事前予約をしたはずだった。
ところが実際にスマートだったのは、店の方だった。
韓国式の段取り。
ベトナム人セラピストの技術。
日本語メニューの安心感。
その全部がきれいに噛み合って、俺という雑な旅行者を処理していく。
「処理」と言うと雑に聞こえるが、悪い意味ではない。
むしろ丁寧。むしろ快適。むしろ普通にクオリティが高い。
ただ、こっちの情緒が追いつかない。
頭ではまだ、
「うん、今日は落ち着いている。ちゃんと準備してきた。俺は大人だ」
と言っている。
でも体は、
「予定より気持ち良いです」
と勝手にレビューを書き始めている。
裏切りである。
一番信じていた自分の体が、一番早く店側に寝返った。
いや、手際の良さに素直に体が反応しているだけだ。
俺の脳はまだ入国審査に並んでいるのに、体だけが自動ゲートでスッと通過していた。
女の子はベトナム人。
でも店全体の流れは韓国式にきっちりしている。
そしてメニューなど日本語対応できている。
ここはホーチミンなのに、脳内で国旗が渋滞している。
韓国、ベトナム、日本。
東アジアと東南アジアの欲望が、個室の中で小さな国際会議を開いている。
そして議長は俺ではない。
完全に向こう側である。
俺は客のはずだった。
予約したのも俺。コースを選んだのも俺。金を払うのも俺。
なのに、いざ始まると主導権がない。
いや、正確には主導権を握る必要がないくらい気持ちいい。
店の流れがちゃんとしていて、女の子がうまいから、こっちは何もしなくていい。
何もしなくていいのに、体だけはちゃんと反応していて忙しい。
この矛盾で脳が焼ける。
事前予約とは、待ち時間を減らすためのものだと思っていた。
違った…。
STARKINGでは、余計な待ち時間だけでなく、俺の無駄な抵抗まで削ってくる。
スムーズすぎる。
うますぎて気持ち良すぎる。
そして、俺の体の反応が正直すぎる。
すべてが完璧なサービスで華麗なまでにフィニッシュ。
終わったあと、俺は妙に納得していた。
韓国人客が多い店というのも分かる。
時間を無駄にしない感じ。段取りの良さ。サービスの安定感。
これはたしかに、事前予約してスマートに行く意味がある。
ただし、ひとつだけ誤算があった。
スマートに遊ぶつもりだった俺が、
一番スマートに処理されていた。
韓国式の段取り。
ベトナム人セラピストの技術。
日本語対応の安心感。
その全部に挟まれた日本人の俺は、もはや客ではなかった。
東アジア欲望サプライチェーンの末端在庫である。
そして恐ろしいことに、在庫のくせに、めちゃくちゃ満足してしまった。
最後に気づいた。
俺は店を予約したつもりだった。
でも本当に時間通りに到着していたのは、
俺の煩悩の方だった。


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