KING STONE MASSAGE ホーチミン

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ベトナム最大の商業都市、ホーチミン。
昼間は無数のバイクが道路を埋め尽くし、
夜になればネオンと欲望が街を照らす。
そんなホーチミンの1区、
チャンフンダオ通りにあるのが「KING STONE MASSAGE」。
今回の目的は、女性2人によるVIPマッサージだ。
美女2人。
俺1人。
単純計算で、幸せは通常の2倍。
財布へのダメージもそれなりだが、こういうときだけ俺の金銭感覚は驚くほど寛大になる。
場所
案内された個室で待っていると、2人の女の子が入ってきた。
1人は小柄で愛嬌たっぷりのかわいい系。
もう1人は長い黒髪が似合う、落ち着いた雰囲気のお姉さん系。
タイプが違う。
これは困った。
どちらを見ればいいのか分からない。
普段、美女1人を前にするだけでも
挙動不審になる俺に、いきなり2人は荷が重い。
だが、今日はVIPだ。
男として余裕を見せなければならない。
「ハロー!」
精いっぱい爽やかに挨拶したつもりが、声だけ裏返った。
開始3秒で余裕が消えた。
まずはうつ伏せになり、
普通のオイルマッサージから始まる。
右肩をかわいい系、左肩をお姉さん系。
両側から柔らかな手が伸びてくる。
おお……。
これはいい。
いつもなら施術者の手が離れた瞬間に寂しくなるが、
今日は反対側にもう1人いる。
右を向けば美女。
左を向いても美女。
逃げ道がない。
いや、逃げるつもりもない。
しばらくすると2人の距離が近くなり、
マッサージも徐々に色っぽい雰囲気に変わってきた。
俺のテンションも当然上がる。
そんなとき、お姉さん系が耳元で尋ねた。
「ねえ、どっちが気持ちいい?」
……え?
どっち?
今、それを聞く?
「もちろん、2人とも!」
我ながら完璧な回答だ。
ところが、かわいい系が笑う。
「ダメ! どっちか選んで!」
おいおい!
俺は面接官をやりに来たんじゃない!
「じゃあ、目を閉じて。どっちがマッサージしてるか当ててみて!」
なるほど。
それでどっちが気持ちよかったかを確認するのかな。
こっちだって、これまでいろんなマッサージを受けてきた男だ。
手の感触くらいで簡単に分かる。
俺は自信満々に目を閉じた。
最初は優しいタッチ。
ふむ。
これは間違いなくかわいい系だ。
「右の子!」
「ブブー! 私でした!」
お姉さん系だった。
まあ、最初は様子見だ。
次は少し力強いマッサージ。
なるほど、こっちはお姉さん系だな。
「左の子!」
「残念! また違う!」
……おかしい。
さっきまで俺の中で確立していた女の子識別システムが、
早くも機能不全を起こしている。
さらに3回目。
今度こそ間違いない!
「右!」
「残念! 2人ともでした!」
2人!?
そんな反則ありか!
いつの間にか問題が三択になっていた。
女の子たちは大爆笑。
「全然分かってないじゃん!」
「じゃあ、どっちが気持ちいいかも分かってなかったんじゃない?」
ぐっ……。
痛いところを突かれた。
しかし、俺にも男としてのプライドがある。
「違う! 2人とも気持ちよすぎるから、区別できないんだよ!」
どうだ。
完璧な言い訳だろう。
すると2人が顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
嫌な予感がする。
「ふーん。じゃあ、次くよ」
再び目を閉じる。
さっきまでとは違う、ひんやりと柔らかな感触。
ローションの滑らかさも加わり、妙に心地いい。
おおっ!
なんだこれは!
さっきのマッサージとは明らかに違う。
「どう? 気持ちいい?」
「最高!」
「どっちだと思う?」
これは難しい。
しかし、ここで間違えるわけにはいかない。
しばらく考えた末、俺は自信満々に答えた。
「お姉さん!」
「ブブー!」
また違うのか!
「じゃあ、かわいい子!」
「それも違う!」
……ん?
待て。
女の子は2人だろ?
すると、2人が笑いながら何かを見せてきた。
タオルだった。
しかも、ローションを含ませた柔らかいタオル。
……。
俺は今、何を絶賛していたんだ?
「今の、これだよ!」
2人は腹を抱えて笑っている。
おい!!
俺は美女2人のテクニックを比較していたはずだぞ!
いつから備品が参戦してきた!
しかも、ローションのヌルヌルもあり
正直に言えばかなり気持ちよかった。
悔しい。
だが、ここで引き下がるわけにはいかない。
「いや、タオルの使い方が上手かったんだよ!」
そう言うと、お姉さん系が笑顔で返してきた。
「じゃあ、タオルが一番?」
違う!
そういう意味じゃない!
俺は一体、誰の弁護をしているんだ!
かわいい系が近づく。
「これは?」
「おおっ、いいね!」
お姉さん系が交代する。
「こっちは?」
「最高!」
2人が顔を見合わせる。
「全部最高じゃん!」
そうだよ!
最高だから
仕方ないだろ!
俺は、ちょっと大げさに反応してみた。
「うおおっ! これは素晴らしい!」
2人が一瞬黙る。
そして大爆笑。
「今の、わざとでしょ!」
バレた…。
演技力まで見抜かれている。
もう駄目だ。
女の子の違いは分からない。
タオルにも騙される。
リアクションを盛れば見破られる。
俺の男としての能力が、次々と不合格になっていく。
だが、そんなやり取りをしているうちに、
すっかり2人とも打ち解けていた。
「もう! ちゃんとしてあげる!」
ここからは、2人が息を合わせてマッサージを再開してくれた。
さっきまでの笑い声が嘘のように、
柔らかく落ち着いた雰囲気になる。
こうなると、今度は俺のほうが照れてしまう。
いや、本当にずるい。
散々からかっておいて、急に優しくするなんて反則だろ。
俺の中の息子まで、完全に調子を取り戻して一気にフィニッシュ。
そして、長かったような短かったようなVIPタイムも、ついに終了。
なんだかんだ言って、俺は大満足だった。
最後に2人が笑顔で聞いてきた。
「ねえ、結局どっちが一番気持ちよかった?」
またそれか!
でも、ここは正直に答えよう。
「2人とも最高だったよ!」
かわいい系が首をかしげる。
「本当に?」
お姉さん系も笑っている。
そして追い打ちの一言。
「じゃあ、次はどっちを指名する?」
……。
難しい。
実に難しい。
かわいい系も捨てがたい。
お姉さん系も素晴らしかった。
どちらも魅力的だ。
俺は少し考えてから、真顔で尋ねた。
「……あのタオルは指名できる?」
2人が一斉に吹き出した。
美女2人を目の前にして、何を言っているんだ俺は!
すると、お姉さん系が涙を浮かべながら笑い、最後に一言。
「じゃあ次は、タオル2枚でひたひたにしてやってあげるよ」
……。
やめろ。
控えめに言って最高じゃないか!
KING STONE MASSAGE。
ホーチミンまで来て、美女2人に囲まれたVIPマッサージ。
最高の夜だった。
ただ、帰り道に一つだけ考えてしまった。
次回、もし本当にタオルを2枚用意されたらどうする?
そして、そのとき気づいた。
俺はついに、美女の指名で悩む男から、
タオルの枚数で悩む男に成り下がっていた。


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