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![沈む前に、飲もう [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_30ef9df89b1642b3a5ed0fa4562c9c06~mv2.webp)
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沈む前に、飲もう [最終話]
【最終話】 その夜だけの話だ 翌朝、目が覚めたとき、サキはいなかった。 時刻は7時過ぎ。シーツに彼女の熱が残っていた。 バスルームに行ったかと思って確認したが、誰もいない。 バルコニーに出た。スミニャックの朝の空気が来た。 海の方から風が吹いている。隣に人の気配はなかった。 テーブルにメモがあった。 「先に出ます」とだけ書いてあった。 丸い字だった。一文だった。それ以上でも以下でもなかった。 LINEの交換はしていなかった。 昨夜もしなかったし、今朝も求めなかった。 俺もそれでいいと思っていた。 聞かなかった、ではなく、聞く必要がなかった。 この種の夜には、続きを前提にしない方が誠実な場合がある。 サキも、それを分かっていたと思う。 彼女が「先に出ます」と書いたのは、そういうことだ。 「さようなら」ではなく「先に」と書いた。 それは事実だけを書いた一文だ。 余計なことが何も書いていない文章は、書いた人間の知性を表す。 俺はそれが好きだった。 メモをしばらく手に持っていた。 それから折り畳んで、財布に入れた。 なぜそうしたのか分からない。 捨てても

GENPASS 編集 三好
5月11日
![沈む前に、飲もう [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_08a90d5bc53040d8800b0411594b679b~mv2.webp)
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沈む前に、飲もう [第3話]
【第3話】 岩の上で、夕陽を見た 翌日の午後5時に、ホテルのロビーで落ち合った。 The Rock Barは、ジンバランのAYANAリゾートの崖の下にある。 インド洋を14メートル見下ろす玄武岩の上に作られたバーだ。 リゾートから傾斜のついたインクラインリフトで降りる。 崖を滑り降りるように動く狭い箱の中に、二人で乗り込んだ。 サキの肩が俺の腕に触れた。 彼女は少し前のめりになって、外の景色を見ていた。 下に、海が見え始めた。 「すごい」と彼女は言った。声が小さかった。 驚くのが正しい景色というものがある。 俺も初めて来たとき、そう思った。 なるほど、岩の上だ、と。 席についた。カクテルを頼んだ。 マンゴーとパッションフルーツのトロピカルカクテル。Rp185,000。 南国の甘さが口の中でほどける。氷が多く、飲み口がいい。 夕陽が沈みかける時間帯、オレンジ色の光がインド洋の水面を染めていく。 空の色が刻々と変わる。 岩の上にいると、自分が地面の続きにいる気がしない。 海の上に浮かんでいるような感覚がある。 「なんでここ知ってたんですか」とサキは言

GENPASS 編集 三好
5月10日
![沈む前に、飲もう [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.webp)
![沈む前に、飲もう [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.png/v1/fill/w_292,h_219,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_a3ea38dad6e545508a00199c3222d8c3~mv2.webp)
沈む前に、飲もう [第2話]
【第2話】 バリ料理と、素直な女 Made's Warungは、スミニャックの通りを少し入ったところにある。 1969年の創業だ。 60年近く続いているというのに、それを威張らない。 バリ彫刻の装飾と、開放的な造りと、変わらない料理で静かにやっている。 観光地にずっと立ち続けられる店が持つ空気は、何度来ても落ち着く。 外から見ると奥が深く、中に入るとそれよりさらに広い。 この店をバリで最初に訪れた外国人旅行者たちが、バリ料理を「知った」場所だ。 サキとは店の前で落ち合った。 「どこ行ってたんですか、今日。」俺が先に着いて待っていると、彼女は少し早足で来た。 「タナロット行ってきました。海の神殿。」 「観光客が多い時間じゃなかったか。」 「すごかったです。でもきれいだった。」少し笑った。「行ったことありますか。」 「ある」と俺は言った。「夕方が一番いい。」 「次来たときに。」 次来たとき、という言い方をした。 次があることを、自然に前提にしている。 この手の女は、計画より感覚で動く。バリを一度で終わらせる気がない。悪くない。 席についた。ナシチャン

GENPASS 編集 三好
5月9日
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