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フードコート置屋 クアラルンプール

  • 執筆者の写真: GENPASS 編集 八田
    GENPASS 編集 八田
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分



クアラルンプールで、とあるフードコートでメシ以外に「春」を売っているといううわさを聞き場所を探していた。

大通りを外れ、暑さで思考が止まりかけた頃

民家のようなところで急に、ちょうどいい感じのローカルフードコートを見つけた。

木のテーブルに、白いプラスチックの椅子。

天井はトタン屋根で、大きなファンがゆっくり回っている。


どこにでもある、あの感じ。

とりあえず中に入って座って、飲み物でも飲みながらスマホで捜索しようと考えていた。



場所

このあたりだったかと思う



椅子に座って、一息ついていたら数人の女の子がこっちを見ている。

フードコート内は何やら地元のカラオケ大会みたいなのが始まっている。

そして、注文でも取りに来るかのように女の子が近づいてくる。

近い。距離が近い。


東南アジア特有の、あの“パーソナルスペースを無視してくる距離”。

ベトナム語っぽい言葉と、インドネシア語っぽい言葉で話しかけてくる。

英語も混ざるけど、正直ほぼ分からない。

よくわからないので、女の子の顔を見ていると

向こうもこっちを見ている。いや、見すぎだろ。

何やら「珍しいもの見つけた」みたいな目で見ている。



そのうち、その子が指を一本立てて言った。

「100」

なんの数字だよ、と思いながらも

俺、周りの空気でなんとなく察する。

ああ、これそういうやつだ。

ここ、ただのカラオケ大会をしているフードコートじゃない。探していたところかも。



さっきの「100」は100リンギット。

置屋として成り立っているのか、フリーランスの人が来ているだけなのかわからなかったが、

どこの骨かもわからない日本人に話しかけてきた勇気と、見た目がかわいらしかったので「OK」とうなずいてみた。

女の子に手を引かれながらついていくと、気づいたら、出店みたいな奥の方に連れていかれていた。


さっきまでの“昼メシ空間”の裏側は、完全に別の世界だった。

民家みたいな構造。雑に区切られた部屋。生活感と非日常がごちゃ混ぜになった空間。

さっきまで飲み物でも飲んで、一息つくつもりだったのに、

なぜか今、人生の分岐点みたいな場所に立っている。



で、ここからが地獄だった。

いや、人によってはこういう状況が好きなのかもしれない。


集中できない。


いや、物理的に無理なんだよ。

さっきまでフードコートにいただろう女の子たちが、なぜか全員ついてきている。

いや、見ている。

ドアの隙間から覗いているやつ。

普通に入ってくるやつ。

なぜか笑っているやつ。

お前ら何しに来ているんだ。

完全に“見世物”。

日本人が珍しいのか、外国人が珍しいのか

やたら絡んで来ようとしてくる。


パンツ下ろしたら察していなくなるかなと思って

思い切っておろして丸出しになってみた。

いなくなるどころか、しっかり俺の下半身を見てきた。


無理無理無理!!!


向こうは昼の暇つぶしみたいなテンションでこっちを見てくる。

なんだか「こんな小さいの?」みたいな目線がたまらない。


いや、集中できるか!!


まるで、そのあとどうするの?みたいな感じで

俺の次の行動を待っているかのようだった。

そうしていると俺が決めた女の子が、「はよーはよー」と言わんばかりに横になって待っている。

もうこうなったら俺も男だ!


やったろーやないかい!!


なんだかAV男優の気持ちが分かった気がした。

マジックミラー号ってこんな感じなの?

そして、俺はリアルミラー号に乗って、何か大事なものを失った気がした…

結局、何が起きたのかよく分からないまま終わった。


達成感もなければ、敗北感もない。

体はたぶん出すものを出したのですっきりしているはずだが

ただ、妙な疲労感だけが残る。

で、部屋の外に出た。

まだ昼だった。

もう何もかもがおかしい。



帰ろうと思った、そのときだった。

呼び止められた。

さっきの女の子と、そのゆかいな仲間たちに。

フードコートからは、カラオケ大会の歌が響いている。

みんな昼から酒を飲み宴会みたいに楽しんでいる。

で、女の子たちが何か言っている。

冷静にスマホの翻訳機能で会話する。


歌っていきなよ


さっきまで必死にプレイしていた場所だぞ。

しかもこんなアウエイの場所でか。

すると、ステージの上には、見覚えのあるあの女の子たち。


嫌な予感しかない…


いやいや、言葉も文字もわからないから無理だよ。

そして、誘導されるがままに、ステージ横に立たされる俺。

いや、なんでだよ。

女の子たちが、何やらデンモクをいじっている。

どうせ、音楽な鳴り響く中、無言の俺という結果は見えている。


そして、舞台中央へいき、画面に表示された曲名を見て、さらに意味が分からなくなった。


「残酷な天使のテーゼ」


なんであるんだよっ。

周りはなぜか盛り上がっている。

アニメは全世界共通なのか。

知っているのか知らないのか分からないテンションで、手拍子が始まる。

逃げ場はない。

こうなったらやるしかない。マイクが渡される。


ざーんーこーくの

てんしのよーに…


歌った。

が、音、外した。リズムもズレた。

誰も止めてくれなかった。

まるで歌を歌いなれたベテランが、わざと外して歌っているかのように…

そして、なぜか最後まで歌い切った。



フードコート置屋を探して、一息つきに来ただけだった。

それなのに、気づけば、知らない国の、知らない民家みたいな場所で、

知らない人たちに囲まれて、


エヴァを歌っている


この日、俺が100リンギットで買ったのは、置屋で1プレイをする体験だけではなかった。


ただの、混沌だった



クアラルンプールの謎のフードコート置屋。

俺はこの日、たぶん世界で一番孤独な“残酷な天使のテーゼ”を歌った。


しょーおーねーんよ

神話になれ!!(泣)



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