Sukhumvit Soi 20置屋 パタヤ
- GENPASS 編集 八田

- 3月23日
- 読了時間: 5分

パタヤに来たら、ウォーキングストリートだけが全てだと思っていた時期が俺にもあった。
ゴーゴーバーで踊る女の子を眺めながらビールを飲んで、適当に声をかけて、バーファインを払って連れ出す。
それはそれで悪くない夜の過ごし方だが、いかんせん「受け身」なのである。
こちらが選んでいるようで、実は向こうのペースで全部進んでいく。
そんな俺に、店で知り合ったタイ人から耳打ちがあった。
「Sukhumvit Soi 20の奥に、いい置屋があるんだよ」。
場所
ここの横道に入った通りに数店ある。夜は明かりがつくからわかる。
Soi 20をバイクタクシーで降りて少し歩くと、それっぽいエリアが見えてくる。
手前に大きめなガソリンスタンドがあるので目印にするといいかも。
薄暗い路地に、パイプ椅子が並んでいて、そこに女の子たちがぼんやり座っている。
雰囲気でいえば、日本の昭和の赤線地帯の残像を、南国の湿気の中に溶かしたような感じだ。
入口付近で俺が立ち止まった瞬間、猛スピードで飛んできたのがママだった。
50代とおぼしき、体格のいいタイ人おばちゃん。
威圧感でいえばパタヤ全土トップクラス。
英語とタイ語と謎の圧力をミックスした独自言語で、
「どの子がいい?」「あなた何人?」「予算は?」と畳み掛けてくる。
マグロ漁船の競りを一人で回しているような勢いだ。
俺は別に急いでいない。じっくり選びたい。
明確の返事をせずにじっくり選んでいた。
だが、それがいけなかった。
「なんで選ばない?」「この子どう?かわいいでしょ?」「こっちもいいよ?」
ママは止まらない。俺が少し考える素振りを見せるたびに、新しい子の肩を掴んで前に出してくる。
まるで回転寿司のレーンが、俺の意思に関係なく高速で回り続けているようだった。
5分ほど押し問答した末、ようやく俺は一人の子を指名した。
価格は、1,450バーツ。
提携のホテル代も含まれているため、店によって価格が変わってくるらしい。
名前はノイ。20代前半。
タイ人らしい細い目の可愛らしさがあって、笑うとえくぼができる。ほっそりしていて、「当たり」の予感がした。
ママから解放された安堵感もあって、俺はノイと一緒に提携ホテルへと向かった。
部屋に入って、しばらくしたところで、俺は半分冗談のつもりで聞いてみた。
「日本語わかるー?」
ノイは少し照れたように笑って、「すこし……」と答えた。
えぇぇ!!!わかるの!?
当然わからないものだと思って、店で選んでいるときや、ここまでの道中日本語でブツブツ言っていたのも理解していた?
いや、別に変なことはつぶやいてない…大丈夫。うん。
なんだ、少しくらいならかわいいもんじゃないか。言葉が通じると思えば距離も縮まる。そう思い、少し気楽な気持ちでいた。
最初は本当に普通だった。
「すき!」「きもちいい?」「うれしい」
問題ない。むしろ加点だ。日本語でそう言われると、妙に現実感があっていい。プレイがだんだん盛り上がってくる。
だが、しばらくして、ノイの語彙が急に老人ホームの方向に曲がり始めた。
「わし、あなた、好きじゃ」
……え?
思わず俺は腰の動きを止めた。聞き間違いかと思った。だが違った。
「そう、ゆっくり、ええじゃろ」
待ってくれ。腰の動きをゆっくりにしたくてしたわけじゃない。
急にババアみたいなことを言ったから、俺の腰がゆっくり、というか一瞬止まったんだ。
「わい、気持ちええわ〜」
おい!誰に習ったんだよ、これ。
明らかに、どこかの日本人客が仕込んだ語彙である。
しかも50代か60代、地方出身、悪ノリが得意なタイプ。
そいつが、面白いから教えやがったな
きっと、ニヤニヤしながら日本語方言講座を開いたに違いない。
教えた本人は今頃、日本の居酒屋で「パタヤで俺が教えてやった女の子がよ〜」と武勇伝を披露しているのだろう。
そう。ノイは何も悪くない。一生懸命に覚えた日本語を使ってくれている。
その健気さは理解できるし、おもてなしの精神も伝わってくる。
ただ…
脳が追いつかない
サービス精神からか「ほんに、気持ちええわ~」と言われながら、クライマックスを迎えようとしている。
俺の頭の中に白髪のばぁさんが住み着いてしまった。
「わし」が聞こえるたびにそのばぁさんが顔を出す。
追い払っても、ノイが口を開くたびに戻ってくる。
集中できない。リズムが掴めない。
思わずノイの口を抑えつつ、
思いついた言葉が
「さ、Silent play ,OK?」
俺の鼻の上に人差し指を立てて「シー!」と伝えながら急な英語。
ノイはクスクス笑いながら意味ありげに「OK」マークを指で出して笑顔。
絶対、そういうプレイが好きだと思われた…恥
普段なら30分もあれば十分なところを、その夜の俺は妙に長引いた。
ばぁさんの亡霊と戦いながら、なんとか終わりまで辿り着いたのは、気づけば1時間近く経った頃だった。
ホテルから出て、Soi 20に戻ってきたときには、すでに深夜だった。
薄暗い路地に、あのママがいた。
パイプ椅子に腕を組んで座っており、俺の姿を見るなり、目を細めた。
そして、一言。
「……You, first time?」
俺の足が止まった。初めて?童貞?何故?
違う。断じて違う。むしろ経験は豊富なほうだと思っている。
ただ今回は事情があって、集中力の維持に想定外に時間と労力がかかっただけだ。
そう説明したかった。
「……わしは、ちゃうんじゃ。」
ママが固まった。
俺も固まった。
俺は何も言えずに、曖昧に笑って、その場を後にした。
パタヤの夜風が、生ぬるく吹いていた。
ノイに日本語を教えたじじいと、俺は、もう同じ側にいた。
ノイの「わし」は、俺の中に完全に住み着いていた。

【パタヤ / Sukhumvit Soi 20エリア情報】
場所:Sukhumvit Soi 20付近のGS横の路地(添付地図参照)
形式:指名連れ出し型
価格:1,400~1,500バーツ。店によってはもっと吹っ掛けられた。
時間:夜8時くらいからだらだら始まり深夜まで
女性:20代前半中心。タイ人が多かった。
注意点:入口ママの圧力は本物。気持ちを決めてから入ること


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