Spa Linh Cherry ホーチミン
- GENPASS 編集 八田

- 3月18日
- 読了時間: 5分
更新日:3月25日

ホーチミンには、ちゃんとして見える場所ほど静かに危ない、という法則がある。
Spa Linh Cherry。
名前だけ聞いたら完全に普通のスパだ。でも「Cherry」とか「Linh」とか、そういう名前のスパに限って、男の想定外を静かに連れてくる。
場所
4D2 Thái Văn Lung, Bến Nghé, Quận 1, Thành phố Hồ Chí Minh, ベトナム
Grabで「Spa Linh Cherry」と入れれば一発で着く。
運転手がちょっとニヤッとした気がしたが、気のせいだろう。たぶん。
受付は清潔。スタッフは静かで落ち着いている。
価格は2,000,000VND。
ベトナムにしては高い方だと思う。その分期待値が上がる。
数人の女の子が出てくる。
最初の子。うーん。
次の子。うーん。
その次の子。うーーーん。
だが。最後の子。
キターーー!!!!
はい。来ました。小柄。黒髪。目がクリッとした笑うと目が消えるタイプ。
ベトナム人独特の、素朴さと色気が同居している顔立ち。
間違いない。俺、この子に決めた。即決。迷いゼロ。
ただ、この時点ではまだ知らなかった。
この子が、やたら声が小さいということを…。
部屋に案内され入る。薄暗い部屋。二人になる。
女の子が何か言った。
……あれ?
「………………………」
俺「え、ごめん、なんて?」
女の子「…………………………」
何か言っていることはわかるが、聞こえない。全然聞こえない。
声のボリュームが存在してない
耳を澄ます。最大限に澄ます。でも届かない。音波として、俺の鼓膜に到達していない。
でも、何かしゃべっているのはわかるから、声が出ない病気ということはない。
これはもはや「声が小さい」じゃない。
念話だ。
この子、口は動いているのに、音が出ていない。いや、出ているのかもしれない。
でも俺には届かない。俺の耳が悪いのか?何度も聞き直すのも悪い気がする。
ホーチミンの夜の空気が全部吸収している。
そして、地獄の会話が始まった
女の子が何か聞いてくる。
「………………………?」
俺、聞こえないので、空気で判断する。
たぶん「初めてですか?」的なやつだろう。
俺「あ、うん、初めてです」
女の子「…………………………」
何か言っている。笑顔で言っている。たぶんウェルカム的なやつだろう。
俺「ありがとうございます、よろしくお願いします」
女の子「……………?」
また聞いてくる。 たぶん「日本から来たんですか?」だろう。
俺「そうです、日本から来ました。東京です」
女の子「…………………………」
また何か言っている。たぶん「東京ですか、いいですね」的なやつだろう。
俺「ははは、まあ、そうですね」
おいおい!!
俺は完全に一人芝居をしている!
相手の台詞を全部、自分で作っている。
俺の中のシナリオライターが、フル稼働している。
でも会話は、なぜか成立しているように見える。 お互い笑顔で、うなずき合っている。 傍から見たら普通の会話だ。
そして、決定的な事件が起きた
マッサージが始まって少し経ったころ。
女の子がまた何か言った。
「……………………………?」
今度は少し真剣な顔で聞いてくる。 なんかちゃんと答えないといけない空気。
俺、必死に唇の動きを読む。
……「す」?「ず」?「ス」?
「……ス……トレス……?」
あ、「ストレス溜まっていますか?」系の質問だ。
そういう質問、マッサージあるあるじゃん。
俺、この流れで素直に答える。
俺「そろそろ本番行きますか?」
女の子、うなずきながら、また何か言う。
女の子「……………………?」
また聞いてくる。今度は、なんか少し首を傾けながら。
今度は大事なことな気がするから、俺、また唇を読む。
「……す……き……すきなも……?」
「好きなものは何ですか?」系だ。
なんか急に距離縮めてくる系の質問じゃん。恋人プレイなんて申し込んだっけ?
でも、俺、ちょっと嬉しくなる。
俺「えっと……そうですね、お酒とか、あと旅行とか……」
女の子、また笑顔で何か言う。
俺「ははは、そうですね、ベトナム料理も美味しいですよね」
で。
なんとか、最後までプレイが全部終わった後。
女の子がスマホを取り出して、翻訳アプリを開いた。
そして俺に見せた。
画面には、こう書いてあった。
「さっきからずっと聞いていたんですけど、
マッサージの強さはどのくらいがいいですか?」
俺「え」
女の子「……………………(スマホを指さす)」
俺「え、ずっとそれ聞いていたの?」
女の子、うなずく。笑顔で。でも目が少し「そうだよ」と言っている。
強さ。
ずっと「強さはどのくらいがいいですか?」を聞いていた。
俺が「本番行きますか?」とか「旅行と酒が好き」とか答えていた間、ずっと。
女の子は「強さどのくらいがいいですか」と聞き続けていた。
俺の自作シナリオ、全部ハズレ。
きっと、一問も正解していない。 完璧なる0点。
プレイ後のピロートークが終わって、服を着る。
女の子が何か言った。
「……………………………………」
俺、また聞こえない。
でも、ここまで一緒にいたら慣れてくる。
なんとなく「こっちへどうぞ」的な感じで廊下の方を指している。
出口の案内だろう。ありがとうございます。
俺、女の子の指差す方向へ歩く。
廊下を進む。突き当たり。ドアがある。
「ここか」
俺、ドアを開ける。
中に、見知らぬ男がいた
ベッドの上に、うつ伏せで寝ている。
背中にタオルがかかっている。どう見ても施術中だった。
男、ゆっくり顔を上げてこっちを見る。
俺を見る。
俺、男を見る。
2秒間の、完全な沈黙。
俺「……あ」
男「……あ」
俺、即座にそっとドアを閉める。
これは、さすがに止めろよぉぉぉぉ!!!!
俺、元の部屋まで全速力で戻る。
その男の顔見た瞬間
それはそれは、般若のようなこの世のものじゃない顔でした。
女の子、廊下に立っていた。 俺の顔を見て、一瞬固まった。 そして小さく口を動かした。
「………………………………………」
聞こえない。相変わらず聞こえない。
でも今回だけは、なんとなくわかった気がした。たぶん…
「そっちじゃないです」
Spa Linh Cherry
そこはいろんな意味で普通のスパではなかった。
声の小さい女の子と、聞こえないくせに空気で答え続けた俺。
そして最後は、見知らぬ男の施術部屋に堂々と入室した。出口だと思ったから。
女の子の声が小さすぎたのか。 俺の耳が悪すぎたのか。
どっちが悪いかは、今でもわからない。
ただひとつ言えるのは…
あの男とは二度と
目を合わせたくない
しばらく、夢でうなされた…。
[関連記事] この記事は、漫画化されています。合わせてお楽しみください。⇒ Spa Linh Cherry ホーチミン 漫画Ver.


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