クラブ エンペラー ヤンゴン
- GENPASS 編集 八田

- 3月25日
- 読了時間: 7分
更新日:3月25日

ヤンゴンの夜は、どこか静かだ。
パタヤみたいに「ほら来いよ」と腕を引っ張ってもこない。
なのに、気づけばこっちが勝手に前のめりになっている。
理由は簡単だ。
「ヤンゴンはかわいい子が多い」
この噂を聞いた男の脳みそなんて、だいたいそこで半分終わる。
場所
Q5G3+46V, Shwedagon Pagoda Rd, Yangon, ミャンマー (ビルマ)
俺もそうだった。
ホテルを出る頃には、もう頭の中で勝手に期待値が膨らんでいた。
今日はヤンゴンの夜を見に行くんじゃない。
答え合わせに行くのである。
そして俺は、その答えを求めて
クラブ エンペラーへ向かった。
店名がもう強い。エンペラー。皇帝。名前だけで、こっちを王様気分にさせてくる。
まだ何も始まっていないのに、すでに脳内ではマントを羽織っている。
男って本当に安い。
営業時間は19時から23時くらい。
入場料は20,000MMK。
夜の店としては「よし、まずは見てみるか」で払える金額だ。
だが、店のスタッフから悪魔のささやき。
「VIPのほうが優先的に
女の子を紹介できますよ」
出た。男が一番弱い言葉。限定、先行、優先、特別。
女の子に関して、この世の男はだいたいこの4つに弱い。
しかも、店名はエンペラーである。
ここで平場に座るのは、なんか違う。
せっかく皇帝の城に来たのに、庶民席でビール飲んで帰るのは違う。
そう思ってしまった時点で、もう負けだ。
気づけば俺は、
50,000MMKのVIPルームを選んでいた。
あと30分後に自分が判断力を失って崩壊するとも知らずに…
ステージに並ぶのは、もはや“ファッションショー”という名の暴力
店内では、ステージ上で女の子たちが次々とショーアップされていく。
男の期待値を静かに吊り上げる構造がいやらしい。
みんな、ちゃんとかわいい。
雑に「当たり外れ」で処理できる感じじゃない。
日本人好みというか、もう少し正直に言うと、かなり俺好みの子が多い。
その流れで、いよいよ女の子のショーアップ。
10人前後の女の子たち。
そしてこの10人が、もう普通に強い。
「あ、この子いいな」が普通に何人もいる。
正直、その時点で俺はもう一人決めかけていた。
噂通りかわいい子が多くて、ちょっとホッとしていた。
VIPにした価値がある。こんないい子たちを優先的に見られるなんてすばらしい。
「この子にしようかな…」
そう思った、その瞬間だった。
スタッフが、かぶせるように言った。
「まだ100人以上いるけど、
ほんっとーーにいいの?」
……は?
いや、待て待て待て。
今なんて言った?
まだ100人以上?
頭の中で、一回すべてが止まった。
10人見て、十分強い。
さらにまだ強者(つわもの)が、100人以上いるってこと?
ソシャゲの排出一覧か。
オーディションの一次審査か。
就活イベントか。
こっちは女の子を指名しに来ているのに、
突然選択肢の暴力で殴られている。
しかも店側の話では、全部で150人くらいいるらしい。
本当かどうかは正直わからない。
だが、その時の俺にはもうどうでもよかった。
100でも120でも150でも、
優柔不断な男が壊れるには十分な数だからだ。
これは夜遊びじゃない。
“決断力の耐久テスト”だ。
そこから先の俺は、完全におかしくなった。
人間は、選択肢が増えると賢くなるどころか、だいたい壊れる。
「もうちょっと見ればもっと
いい子がいるかもしれない」
この発想が、人生のあらゆる場面で人をダメにしてきた。
恋愛も転職も不動産も夜遊びも、だいたいこれで終わる。
俺も例外じゃなかった。
10人見て、また10人見て、さらにまた見る。
途中からもう、「この子がいい」じゃなくて
「どこで決めるのが正解?」
に変わっていた。
女の子を選びに来たはずなのに、気づけば試されているのは俺の決断力だけである。
エンペラー。
店名だけ聞くとこっちが皇帝になれる場所みたいだが、違う。
あれはたぶん、
男の判断能力を支配する側の名前
欲を出して流しているうちに、
いいなと思った子は全部消えた
そして、ここで当然の報いを受ける。
最初に「この子いいな」と思っていた子たち全員。
みーーーんなVIPじゃない平場の客
――つまり入場料だけ払って入っている通常席の客に指名されて消えていった。
ここが本当に残酷だった。
俺はVIPに座っている。50,000MMK払って、優先的に紹介を受ける側にいる。
なのに、実際に女の子を押さえる速さでは、
平場の客に負けていた
王の席に座っていたつもりが、行動力では庶民以下。
VIPルームにいるのに、やっていることは
ただ迷っているだけの日本人だ。
とはいえ、何もしないわけにはいかない。
このままでは、VIPで座っていただけの男として終わる。
それはあまりにも情けない。
そこで俺は、5軍…いや、
ドラフト育成枠の2人を指名した。
正直に言おう。
その2人は、最初の第一印象では上位指名から外れていた。
だから言いかけた。5軍だなと。
最初の印象で上位評価ではなかった。
だが、じっくり見れば化ける可能性がある。
そんな、男に都合のいい希望だけで編成された指名だった。
ところが始まったのは接客ではなく、逆面接だった
この2人、意外にも片言の日本語が話せて、ここまではいい。むしろありがたい。
だが問題は、その使い方だった。
座って早々、質問が飛んでくる。
何歳?
仕事は?
日本のどこから来た?
どういう子が好き?
なんでそんなに決めるの遅かったの?
……いや、待て。
質問の角度が急に鋭い。
こっちは指名した側のはずなのに、数分後には完全に人間性の審査を受けている。
そしてついに、片方の子が少し笑いながら言った。
「あなた、優柔不断すぎる」
正論である。ぐうの音も出ない。
気づけば本命候補を全部平場に取られた男に対して、これ以上ないくらい正しい評価である。
俺のばかやろぉー!!!
ここからさらに面白くなるのが、ヤンゴンの夜の怖いところだ。
この2人、どうやらプライベートでもかなり仲がいいらしい。
スマホの翻訳アプリを駆使しつつ、プラス片言の日本語で会話成立。
つまり、俺が真ん中にいても、2人だけで会話が回る。
しかも、その会話が普通に面白い。
2人で笑う。
2人でしゃべる。
2人でこっちを見てまた笑う。
たまに気を遣って日本語で俺に話を振る。
俺が答える。
そして3人で盛り上がる。
そのうち1人が話を回し始める。
3人で大爆笑。
なんだこれ。
仲良しコンビの漫談ライブを最前列で鑑賞して、
俺という客をいじり倒されているだけ
たまに日本語で話を振られて返すから、
笑っていいともでタモリに客いじりされているラッキーな客みたいになっている。
もう意味がわからない。
俺はヤンゴンまで何をしに来たんだ。
女の子を指名しに来たはずだろ。
なんで今、こんなにちゃんとしたトークライブを見せられて客いじりされているんだ。
しかも普通に面白いのが腹立つ。
2人とも愛嬌があって、テンポもよくて、
こっちに気を遣うタイミングも絶妙だから、余計に何も言えない。
逆転を狙って指名したはずなのに、気づけば俺は、
ヤンゴンで一番高い漫談の
チケット買った日本人だった

クラブ エンペラー
名前だけ見れば、男を王様にしてくれそうな店だ。
VIPに入った瞬間までは、確かにそうだった。
かわいい子が並び、選択肢は山ほどある。
だがこの店の本質はそこじゃない。
選択肢が多いということは、
同時に決められない男をあぶり出すということだ。
「もっと上があるかもしれない」と欲を出し、その結果、平場の客に先を越される。
慌てて指名した2人には逆面接され、
最後はその2人の漫談を最前列で見ることになる。
俺は、最後に残っていた2人を見て、心の中で一瞬
5軍の子たち
と思ってしまった。
でも違った。本当に5軍だったのは、彼女たちじゃない。
150人を前にして決断できずVIP席で出遅れ、
その挙句、逆面接され、最後は女子会の観客席で笑っていた…
この俺である。
ヤンゴンまで来て、最後に突きつけられたのは、
ミャンマーの夜の奥深さでも、女の子のレベルの高さでもない。
自分の判断力の弱さだ
そして俺はその夜、その現実を、笑いながら受け入れるしかなかった。
だってもう 漫談が面白かったんだから

【ヤンゴン / クラブ エンペラー情報】
場所:Q5G3+46V, Shwedagon Pagoda Rd, Yangon(添付地図参照)
形式:指名連れ出し型
価格:入場料は20,000MMK。連れ出しは女の子との交渉次第。
時間:夜8時くらいから夜11時くらいまで
女性:20代中心。
注意点:いい子と思ったらすぐ決断しましょう。


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