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![今、話したい誰かがいる [最終話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_e9f19f6fa12c44e6974cad045ec808eb~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_e9f19f6fa12c44e6974cad045ec808eb~mv2.webp)
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今、話したい誰かがいる [最終話]
【最終話】 今、話したい誰かがいる 翌朝、目が覚めるとニティヤは窓の前にいた。 カメラを持っていた。 「昨夜、撮っておきたかったので」 と彼女は言った。 朝靄の中に、インド洋が広がっていた。 光はまだ柔らかく、水面が白く光っていた。 「飛行機は何時ですか」 「午後3時です」 「なら、まだ時間がある」 三好はニティヤが撮った方向を見た。 昨夜と同じ海が、そこにあった。 今日でコロンボを出る。 この窓も、この光も、今日で終わりだった。 帰れば次の案件が待っている。 それでもコロンボのことは、しばらく頭から離れない気がした。 午前10時、Wijesekara & Sons Commoditiesへ向かった。 フォート地区のビルの4階。 エレベーターを降りると、 古い木製の受付カウンターと、壁に貼られた農園の地図が目に入った。 スリランカ南部の農園が点在した地図で、 手書きの文字がいくつも書き込まれていた。 長い取引の積み重ねが、その紙に滲んでいた。 受付に来意を告げると、しばらくして年配の男が現れた。 七十近い、薄いグレーのシャツを着た男だった。 長く

GENPASS 編集 三好
9月21日
![今、話したい誰かがいる [第3話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_edc7782df8e141f8b2a14731aec6fa82~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_edc7782df8e141f8b2a14731aec6fa82~mv2.webp)
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今、話したい誰かがいる [第3話]
【第3話】 消えた理由 翌朝、三好はニティヤに電話をかけた。 昨夜Eskobarを出てから、ほとんど眠れなかった。 「コロンボ担当の出張記録です。2004年の分に」と言って、そこで止まった。 言えなかったのは、備考欄の続きだ。 現地にて消息不明。行方不明として処理。 「会えますか」と三好は言った。 「はい」とニティヤは答えた。 正午過ぎ、Galle Face Hotelのテラスで落ち合った。 いつもカメラバッグを持ち歩くニティヤが、今日は手ぶらだった。 インド洋が真正面にある。 波が防波堤を越えるたびに、白い飛沫が風に乗った。 「昨夜の続きです」 と三好は言った。 「記録の話」 ニティヤは黙ってうなずいた。 表情を作っていなかった。 ただ、聞く準備ができている顔だった。 「吉田健一の備考欄に書いてあったのは——現地にて消息不明。2005年5月、行方不明として処理。それ以降、会社の記録は動いていない」 ニティヤはしばらく何も言わなかった。 目が海の方へ動いた。それだけだった。 「処理、というのは」 「以降、会社は探していない。少なくとも、記録にはそ

GENPASS 編集 三好
9月20日
![今、話したい誰かがいる [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.webp)
![今、話したい誰かがいる [第2話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_94b2c7e0c7454477842bb976b273324c~mv2.webp)
今、話したい誰かがいる [第2話]
【第2話】 名前を知っている 朝7時、Galle Face Hotelのロビーに三好はいた。 ニティヤが昨夜言った言葉が、眠れない時間中ずっと引っかかっていた。 「その会社、以前にもコロンボに来ていませんか。たとえば、20年くらい前に」。 引き継ぎ書には取引先の情報しか書いていなかったが、 社内のデータベースには担当者の記録も残っているはずだ。 ノートパソコンを開き、社内データベースにログインした。 コロンボ担当の出張記録を新しい順に遡った。 ニティヤが昨夜「20年くらい前」と言っていた。 2004年から2006年あたりを開いた。 その時期のコロンボ出張記録は、一人だけだった。 吉田健一。 2004年11月〜12月、コロンボ出張。 備考:現地にて消息不明。2005年5月、行方不明として処理。 以降、しばらく担当者の記録に空白があった。 三好は画面を閉じた。 そのままニティヤにメッセージを送った。 「もう少し話を聞かせてもらえないか」 インド洋の朝は早い。 ロビーの木製ファンが回り続けていた。 返信は昼前に届いた。 「Gallery Café、知っ

GENPASS 編集 三好
9月19日
![今、話したい誰かがいる [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.png/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_35,blur_30,enc_avif,quality_auto/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.webp)
![今、話したい誰かがいる [第1話 / 全4話]](https://static.wixstatic.com/media/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.png/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_95,enc_avif,quality_auto/37d521_591255ba05f640098d2929561c056833~mv2.webp)
今、話したい誰かがいる [第1話 / 全4話]
【第1話】 弾痕の街で コロンボに来るのは初めてだった。 成田を出て約10時間。 乗り継ぎのシンガポールで2時間待ち、バンダラナイケ国際空港に降り立ったのは現地時間の夕方だった。 蒸し暑さが体に纏わりついた。 東南アジアとは少し違う。 何か古いものが空気に混じっているような感触がした。 チェックインしたのはGalle Face Hotel。 1864年創業、コロンボ最古のホテルだ。 白いコロニアル建築がインド洋に面して立っていた。 ロビーは高い天井に木製ファンが回り、床はテラゾー張り。 スーツケースを引いて中に入ると、時代が少しだけ止まったような空気があった。 窓の外にインド洋が広がっていた。 水平線まで、何もなかった。 翌朝、商談に向かった。 取引先はフォート地区にある天然ゴム商社、Wijesekara & Sons Commodities。 創業60年の老舗で、スリランカ南部の農園から原料を集めて日本向けに輸出している。 三好の会社とは20年以上の取引がある、と引き継ぎ書にあった。 数量と価格は概ね合意に近い。 細部の詰めは次回でいい。 商談

GENPASS 編集 三好
9月18日
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